2017年10月24日火曜日

24- 脱原発=原発ゼロ に何の問題もない 三菱総研理事長

 日本原発ゼロでやっていけるのかについて、いまさら「やれるか」「やれないか」という議論をするなんてナンセンス、「できるに決まっている」、元東大総長で三菱総研理事長である小宮山宏氏がそう明言しています。

 コスト的に見ても、原発は作るとき」と核燃料を「使い終わった後」の始末に非常にお金がかかるので、発電時のコストは一見低く見えても決して安いものではありません。
 いま世界では原発を新設するよりも再生可能エネルギーの発電所を新設する方が安く、実際に2016年に世界で実行された発電所投資額の70%が再生可能エネルギーに向けられ25%が火力発電所で、原発の投資額は5%に過ぎません
 しかし日本は送電線の余裕がないという虚偽の理由で再生可能エネルギーの普及を遅らせた結果、再生可能エネルギーの分野では後進国となっています。すべては原子力ムラの利権確保のためです。

 2050年には人口は今より2割以上減少し技術革新で省エネルギー化むのでエネルギー消費量は今の半分以下になります。そうなれば再生可能エネルギーで十分供給できるので、現在化石資源の輸入に使っている25兆円すべて内需に振り向けられるようになります。

 経済的メリットが何もないだけでなく、サイバーテロやミサイル攻撃の恐れに慄きながら原発に拘る必要は皆無です。
 元東大総長によるに実に明快な脱原発論です。
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日本も原子力発電ゼロは「達成できる」
今や再生可能エネルギー「後進国」
 小宮山 の一刀両断 2017年10月21日
 三菱総合研究所理事長 プレジデントオンライン
 経団連など日本の経済界は「原発ゼロは不可能」としている。だが、三菱総研理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏は「できるに決まっている」と断言する。小宮山氏は「脱原発は世界の潮流。米国や中国も再生可能エネルギーに舵を切った。このままでは日本は乗り遅れる」と警鐘を鳴らす――。
 
再生可能エネルギーのコストが原発を逆転
 実際のところ、311(東日本大震災)の東京電力福島第一原発事故の後、何年間も、日本は原発ゼロの状態でやってきました。いまさら「やれるか」「やれないか」という議論をするなんてムダ。全く話になりません
 
 もう少し、前段の流れから説明しましょう。エネルギー源は、石油や石炭などの化石資源から「非炭素資源」に変えていかないと、地球温暖化の問題は解決できません。私は、21世紀中に変えざるをえないと考えています。
 
 では、ここで言う「非炭素資源」とは何か。選択肢は大きく2つ、原子力か、再生可能エネルギーです。ここまでは、議論の余地はありません。
 選択には、「どちらが安いか」という、コストを考える必要があります。私は1999年に『地球持続の技術』(岩波書店)という本を出していますが、この本をまとめていた1990年代は、まだ原子力発電による電力コストの方が相当安いとされていました。当時は、ようやく太陽電池が家庭の屋根に載り始めたころで、風力発電の発電規模もかなり小さかった。再生可能エネルギーで、大量のエネルギーをまかなえる状態ではありませんでした。
 
 しかし私は、技術の進歩を考えると、いずれどこかのタイミングで、再生可能エネルギーの供給規模やコストが、原子力と逆転すると考えていました。
 実際は、私が当時予測していたよりも圧倒的に速いスピードで逆転しました。再生可能エネルギーのコストが安くなる一方で、原発についてはリスクの大きさがコストに加わるようになった。今や原発を新設するよりも、再生可能エネルギーの発電所を新設する方が安いのです。
 
 実際に、2016年に世界で実行された発電所投資額の70%が、再生可能エネルギーに向けられています。ちなみに投資額の25%が火力発電所で、原発の投資額は5%に過ぎません
 再生可能エネルギーには大きく5種類、水力、風力、太陽光、バイオマス、地熱があります。このうち、その土地で一番安いものを選べばいいのです。日照時間は短くても風が強いというところは風力、水が豊富なところは水力、森林が豊富なところはバイオマス、アイスランドのように火山が多いところは地熱発電を使えばいい。世界では、その国や地域に合った再生可能エネルギーを選択し、どんどん開発を進めています。それがこの、投資額の70%という数字に表れています。
 
原発を「作ってしまった」日本の難しさ
 世界でこうした流れが進んでいる一方で、日本の再生可能エネルギーの取り組みはまだまだです。日本の難しさは、これまですでに30兆円も原発に投資し、設備を作ってしまったことにあります。
 
 原発は、「作るとき」と「使い終わった後」に非常にお金がかかりますでも、使っている間はとてもコストが低い。これだけ原発を作ってしまったわけですから、使い終わった後のことを考えず、使い続けていれば費用は安くすみます。つまり、今の日本は、「使い終わった後をどうするか」という問題を先送りにしているのです。
 
 ただ、日本は東日本大震災で深刻な原発事故を起こしました。世界の国々は、「日本ですら事故を起こしたのだから、うちの国も起こすかもしれない」と、原発の稼働や新設を止めた。欧州では、新設や稼働はもちろん、将来にわたって原発は使わないと決めた国も出てきています。中国やベトナム、トルコなども、新設計画はありますが実際は進めていない。それが世界の潮流になっている。それなのに、事故を起こした当の日本が、なぜまだ原発を推進しようとしているのか
 さらに、政府は「今後もベース電源は原発で」と言っているようですが、今、「ベース電源」という考え方をしている国は、日本くらいじゃないでしょうか。
 
 確かに風力や太陽光は、気候などによって発電量が変わりますが、水力やバイオマス、地熱は安定電源です。さらに、風力や太陽光でも、水力と組み合わせることによって、電源としての不安定さを解消できます。
 水力発電では、余剰の電気があるときに、タービンを逆回転して下流の水を上の貯水池に上げておき、必要なときに水を落として発電する「揚水発電」ができます。いわば電気を蓄えておく蓄電池の役割を果たします。これは非常に効率がよくて、「貯めた」電気の85%くらいは後で使うことができます。
 
 揚水発電はもともと、原発の電気が需要の少ない夜に余るため、それを活用するために開発されたものです。でも、太陽光や風力など、供給が不安定な電力の余剰電力を貯めておくのにも使えます。九州電力では今年のゴールデンウィークに、需要の70%以上を太陽光で発電しパンク寸前になりましたが、揚水発電がフル稼働して問題を解決しました。
 
再生可能エネルギー「後進国」日本
 水力発電は、さらに大きな可能性を秘めています。現在主流の、大型のダム開発を伴うような水力発電所は、すでに作れるところには作ってしまっており、新設は難しくなっています。しかし、出力規模1万kW以下の小水力発電のポテンシャルは高く、全国で約1000万kWと試算されていて、原発10基分に相当します。このすべてを開発するのは難しいかもしれませんが、原発3基分くらいなら十分可能です。
 こうした小規模の水力発電は、ダムを使いません。水力発電は、要は、上から下に流れる水の力(位置エネルギー)を使えばいいので、ダムが造りにくいようなところであっても、小さなためを作って管路で落とし、下でタービンを回せさえすれば可能です。
 
 例えば、和歌山県の有田川町では、県営ダムの放流水を使った町営二川小水力発電所を運営しています。ダムは通常、下流の生態系を維持するために、常に一定量の放水を行う「維持放流」をしています。この放流水にタービンを入れ、最大200kW、年間120万kWhの電力を作っているのです。日本では、ほとんどのダムで維持放流をしていますから、開発の可能性は非常に大きいといえます。
 
 今後の電力システムは、従来のように大きな発電所で集中的に発電して電気を配る、というやり方ではなくなるでしょう。揚水発電のほか、電気自動車やプラグインハイブリッド車などに搭載された電池も、太陽光や風力発電の余剰を貯める蓄電装置として使えます。こうした多様な蓄電機能と、発電パターンの異なる複数の再生可能エネルギーを組み合わせて、電力を供給する技術が求められます。
 
 残念ながら日本は、こうした再生可能エネルギーの分野では後進国となってしまっています。ドイツでは、電力供給の30%以上が再生可能エネルギー、中国でも昨年は28%に達していますし、アメリカももうすぐ20%になります。日本は2015年現在で、わずか4.7%です。
 
2050年以降エネルギーコストはゼロにできる
 こうした現実を見ると、エネルギー問題について悲観的になるかもしれませんが、その必要はありません。
 まずは2050年の日本を描きましょう。人口は今より2割以上減少していますし、技術革新で省エネルギー化も進み、エネルギー消費量は今の半分以下になります。今よりずっと楽になります。それくらいの量は、再生可能エネルギーで十分供給できます。
 
 5つの再生可能エネルギーをどんどん開発する。それがもっとも負担を伴わない方法なのです。次世代に対して、2050年以降はタダになるエネルギーを残すことができます。その上、現在化石資源の輸入に使っている25兆円が、すべて内需に振り向けられるようになります。都市よりも地方に落ちるお金となり、地方再生の中核となるビジネスになりえます。
 
 現在日本では、原発に反対している人の方が多いのに、原発を稼働させ、原発事故が起きたときの避難演習をしたりしている。ほかにも、サイバーテロに襲われたらどうするか、北朝鮮が原発周辺に爆弾を落としたらどうするか、と、リスクや不安要素は本当にたくさんあります。こうした不安を抱えて「イヤな思いを持ち続けるコスト」を、将来も抱え続けるのは本当にいいことなのか。しっかりと考えるべきでしょう
 
 小宮山
 三菱総合研究所理事長。1944年生まれ。67年東京大学工学部化学工学科卒業。72年同大学大学院工学系研究科博士課程修了。88年工学部教授、2000年工学部長などを経て、05年4月第28代総長に就任。09年4月から現職。専門は化学システム工学、CVD反応工学、地球環境工学など。サステナビリティ問題の世界的権威。10年8月にはサステナブルで希望ある未来社会を築くため、「プラチナ構想ネットワーク」を設立し会長に就任。 

2017年10月23日月曜日

富岡駅前にホテル開業 復興のシンボルに

 富岡町内でかつて、衣料品店、雑貨店、居酒屋、自動車販売店などを経営していた8人が、3年前「ホテル経営なら成り立つ」と決意し、この度、富岡駅から徒歩1分のところにビジネスホテル「富岡ホテル」オープンしました。
「フクシマ、最前線」キャッチコピーです
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常磐線 富岡駅前に開業のホテル 復興のシンボルに
   「やっぱり、ここが自分のホーム」
河北新報 2017年10月22日
 竜田(福島県楢葉町)-富岡(同県富岡町)間の運行が21日に再開されたJR常磐線。6年7カ月ぶりの乗客の笑顔に、富岡駅前にホテルを開業した渡辺吏(つかさ)さん(58)は、東京電力福島第1原発事故からの復興への決意を新たにした。

 駅から徒歩1分。ビジネスホテル「富岡ホテル」は今月17日にオープンした。「フクシマ、最前線」のキャッチコピーを掲げる。
「駅に電車が走る当たり前の景色がやっと戻ってきた」と渡辺さん。復興を目指す地域で、ホテルが現状を伝える拠点の一つになることを期待して「全国の多くの人に、列車で富岡に来てほしい」と望む。
 東日本大震災時、富岡駅前で父から受け継いだ食料品店を営んでいた。店舗兼自宅は津波被害を受け、町は原発事故で全域避難となった。

 避難先の福島県大玉村に仮設店舗を設けて事業を再開。仲間と「いつか富岡で何かやりたいね」と語り合った。帰町者が少ないことも考え、「ホテル経営なら成り立つ」と決意した。3年前だった。
 集まった賛同者は8人。町内でかつて、衣料品店、雑貨店、居酒屋、自動車販売店などを経営していた。異業種からの転身に、そろって他県のホテルにも出掛け、接客マナーや清掃に至るまで研修を重ねた。
 8人は「商店の精神」を大切にする。利用客一人一人と顔を合わせて会話する。誰もが気軽に立ち寄れる温かさが目標だ。

 地域のみんなが大切にしてきた「夜の森の桜並木」、津波で消失した「ろうそく岩」…。客室やレストランには古里の記憶を伝える風景画を飾っている。
 駅前は家々が消え、震災前の風景から一変した。それでも渡辺さんは「やっぱり、ここが自分のホーム」と揺るがない。
 「後戻りはできない。駅前のシンボルとなり、周辺のにぎわいや復興へとつなげていきたい」。地域の将来を担う覚悟が、ホテル創業者の顔ににじみ出た。(郡山支局・岩崎かおり)

23- 常磐線 竜田-富岡間開通 鉄路復活の喜びかみしめる

 JR常磐線竜田(福島県楢葉町)-富岡(同県富岡町)間の運行が21日にようやく再開され、住民が歓迎しました。
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<常磐線 竜田-富岡間開通
避難町民や帰還住民 鉄路復活の喜びかみしめる
「町に帰る人も増えるのでは」
河北新報 2017年10月22日
 JR常磐線竜田(福島県楢葉町)-富岡(同県富岡町)間の運行が再開された21日、出発式があった富岡駅は鉄路復活を祝福する人でにぎわった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で町外に避難する町民や帰還した住民も訪れ、復興へ向けて踏み出した一歩に喜びをかみしめた。

 駅前では町商工会女性部のメンバーがすいとんを振る舞った。ふたば未来学園高(同県広野町)の生徒は、休業した町内の菓子店の銘菓を再現して提供した。
 今春、一部を除いて避難指示が解除された富岡町への帰還率は22%にとどまる。商工会女性部長の三瓶幸子さん(68)は「帰還者の多くは高齢で車を運転できない人もいる。買い物や通院の足として鉄道の再開は喜ばれる」と歓迎した。

 避難先のいわき市から6月、町内の自宅に戻った猪狩十時子(よつこ)さん(78)は「暮らしに公共交通機関は欠かせない。町に帰る人も増えるのではないか」と期待した。
 富岡町からいわき市に避難するふたば未来学園高3年井出大雅さん(17)は、ボランティア活動のため列車で到着した。「町内ではイベントが増え、交通手段が便利になれば若い人も来ると思う。にぎわいが少しでも戻ればいい」と語った。

2017年10月22日日曜日

進む再稼働 住民を切り捨て隠蔽した事故被害

 週刊女性PRIMEが、410か月に渡る安倍政権下で推し進められてきた再稼働の実態と、それに抵抗する人びとの声を被災地からレポートしました。
 レポートは、'15年に出された復興政策指針「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」には、政権の姿勢が如実に表れているとして次のように要約しています。

 自主避難者への政策はひとつもなく、営業損害に対する賠償事実上の打ち切り、避難者の帰還政策が打ち出された。
 '17年3月には自主避難者への借上住宅供与の打ち切りを敢行、いまだ放射線量が下がりきらない居住制限区域の避難指示を一気に解除し慰謝料も次々と打ち切っている。
 地域の除染は1度終われば「除染完了」とされ、局所的に放射線量が高いホットスポットが見つかっても「1日じゅう、そこに居続けるわけではない」として例外を除き再除染しない方針だ。

 冷酷無残というしかありません。
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 「安倍政権の原発政策
進む再稼働、住民を切り捨て隠蔽した事故被害
吉田千亜 週刊女性PRIME 2017年10月20日
 世界的な「脱原発」の動きに逆行しているとも言える、安倍政権の原発政策。4年10か月に渡る安倍政権下で推し進められてきた再稼働の実態と、それに抵抗する人びとの声を被災地からレポートします。
◇   ◇   ◇
 10月10日、くしくも衆議院選挙の公示日に、福島地裁で『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟(生業訴訟)の判決が出た。福島第一原発事故によって被害を受けた福島県、また隣接する宮城県、茨城県、栃木県の住民およそ3800人が起こした注目の裁判。判決は国や東京電力の責任を全面的に認める内容だ。勝訴を受けて、弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士は「国難突破判決だ」と言い切る。これまでの自民党の、そして安倍政権の原発政策に疑義を呈するものだ。
 公示日のこの日、安倍首相は福島市佐原の小さな空き地で第一声をあげた。同日、同じ市内にある福島地裁で、原発事故をめぐって国と東電の責任を問う判決が出るにもかかわらず、演説の中で被害者に対して言及することなく、復興をアピールし、衆院選の争点に掲げる少子化問題や北朝鮮の脅威の話題に終始した。

 4つのプレートが重なり、2000以上の活断層がある日本。狭い国土に事故当時、54基もの原発が立ち並んでいた。そこで進められてきた安倍政権の原発政策、原発事故対応とは、どのようなものだったのか。…
 '12年12月に発足した第2次安倍政権は、スタート早々から前・野田政権が掲げた「原発ゼロ目標」を見直す発言が相次いだ。'14年4月には、新たなエネルギー基本計画(第4次計画)を閣議決定、原子力発電を「重要なベースロード電源」と定めた。原発による電力供給率は'12年当時、約2%。だが新計画を受けて、「長期エネルギー需給見通し」には、2030年までに20~22%を目標と明記されている。そのためには約30~40基の原発が必要となり、原発寿命を40年から60年へ延長するほか、新設やリプレース(建て替え)が欠かせない。ドイツやスイスをはじめとする世界的な「脱原発」の動きに逆行している。

 安倍政権下で再稼働された原発は表のとおり。
 今月4日には、新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発6・7号機について、原子力規制委員会が事実上の「再稼働合格」を出した。福島事故を起こした東京電力の原発では、事故後、初めてのことである。立地する新潟県の米山隆一知事は9月に福島原発の事故検証委員会を立ち上げたばかり。米山知事は「福島事故の検証に3、4年かかる」と明言し、検証中には再稼働に同意しない考えだ。
 その新潟県には、今なお2800人以上の避難者がいる。福島県郡山市から新潟市に避難し、柏崎刈羽原発差し止め訴訟の原告でもある高島詠子さん(48)は、こう訴える。
2度と子どもたちを危険な目にあわせないため、何としても原発を止めたいと原告になったが、審査合格と聞いて、悔しさと不安と、行き場のない怒りが湧いた。…
原発自体が怖い存在なのに、稼働までしたら何のために避難したのか

 再稼働を進める一方で、安倍政権は原発輸出にもいそしんできた。'14年にトルコ、アラブ首長国連邦、'17年にはインドと原子力協定を締結。事故収束が見通せず、いまだ被害に苦しむ人々がいる中での原発輸出には疑問の声が多い。

■自主避難者への政策はひとつも描かれず
 事故対応に目を転じてもさまざまな問題が浮き彫りになる。'13年のIOC総会で、東京招致をアピールするために語った安倍首相の「アンダーコントロール」発言は、原発事故被害者からあきれと怒りを買った。いまなお溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の全体像は不明であり、原子炉建屋に流れ込む大量の地下水によって汚染水は増え続ける一方。遮水効果がはっきりしない凍土壁も、専門家からは「コストがかかるだけ。ほかの方法を」という声が上がっている。

 原発に詳しい科学ジャーナリストの倉澤治雄さんは、
「事故の原因究明は行われず、東電の刑事責任追及もなされていません。また、低線量被ばくの問題も未解明で、避難計画の策定も不十分です。こうした中で、国民の3分の2が脱原発を望んでいます。'15年に、ドイツのメルケル首相が来日し、安倍首相との会談で“ドイツは原子力から撤退する。日本も同じ道を歩んでほしい”と訴えましたが、安倍首相は“安全審査を終えた原発は再稼働する”とかわしてしまいました」
 民主的に脱原発を進めたドイツの対応とは対照的に、日本の原発政策は、問題の先送りばかりが目につく。

1979年に事故を起こしたスリーマイル島原発は廃炉に最長でも140年以上かかると見込まれています。福島の廃炉に30~40年という見通しは甘い。何より、原発から出る高レベル放射性廃棄物はレベルが下がるまで10万年を要する大仕事です。将来世代にまで解決不能な負担を負わせる原発をいつまで続けるのか、いまこそ深く考えるときです」(倉澤さん)

 原発事故による被害者への対応はどうだったか。
 '15年に出された復興政策の指針、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂版には、政権の姿勢が如実に表れている。自主避難者への政策はひとつも描かれず、営業損害に対する賠償の事実上の打ち切り、強制避難者の帰還政策が打ち出された。'17年3月には、自主避難者への借上住宅供与の打ち切りを敢行、いまだ放射線量が下がりきらない居住制限区域の避難指示を一気に解除した。これに連動し、慰謝料も次々と打ち切っている。
 また、住民にとって被ばく低減に必要な除染は1度終われば「除染完了」とされ、局所的に放射線量が高いホットスポットが見つかっても、「1日じゅう、そこに居続けるわけではない」として例外を除き再除染しない方針だ。除染によって出た汚染土は、完成のめどのつかない中間貯蔵施設予定地に前倒しで運び込まれている。
 安倍政権は、「被災地に寄り添う」と言いながら被ばく影響への不安や郷里への思いを抱えた被害者をふみにじり、無視してきた。

■声を上げ意思を示すことで変えられる
 そんな中、国と東電の責任追及と被害の救済を求めた裁判が全国各地で提訴、今年6月には前橋地裁、9月には千葉地裁で判決が出た。そして前述のとおり、今月10日には福島地裁で生業訴訟の判決が出た。
 10日の判決直前、応援に駆けつけた群馬県の原発避難者訴訟・原告、丹治杉江さん(60)は、「公示日に判決が出るのは運命的。勝たなければ日本の正義は終わると思う。本当に苦しい状況にある被害者は、ここ(裁判)には来られないんです。裁判に来られない人、これから生まれる人に少しでも負のリスクをなくしたい」と思いを語っていた。

 生業訴訟の判決では、国は'02年の段階で原発敷地の高さを超える津波を予見できており、その対策を命じていれば事故を防げたとして、原発事故における国の過失を認めた。
 原告らは、「自分たちだけの闘いではない」としきりに訴える。福島県民200万人の被害、さらには福島県を超えて被害を認めさせることを目指している。実際、今回の判決では福島県外の被害が認められ、救済の範囲が広がった。また原告らは、この判決で終わりにせず、これをテコに被害者救済について政策への反映を求める方針だ。
 判決後、原告団長の中島孝さん(61)はこう話した。
「われわれが目指すのはやさしい社会です。痛みがある人に心を寄せる。でも、今の政治状況はそうなっていない。そのことが今回の生業訴訟の判決に表れていると思うんです。
 衆院選の公示日にこの判決が出たのは“原発事故は終わっていない”と強いメッセージを発したと思う。事故は終わっていないんです」
 前出・馬奈木弁護士は判決の意義を次のように語る。
今回の判決は、原発を運転し、津波の発生が予見できたのなら、事故が起きないよう万全の体制をとらなければならないことを認めた判決です。この当然のことを、国や東電は放置してきた。国や企業のありようを問う意味でも重要です。
 また、この判決のもうひとつの意義は、被害者が被害者のままで終わらず、自ら声を上げることによって尊厳と権利を勝ち得るのだというところ。原発に限らず、社会に存在する多くの課題は、私たちひとりひとりが声を上げれば変えられる。そのメッセージがたくさんの人に伝わればと思います。大事なことは自らの意思を示すことです」

 取材・文/吉田千亜 フリーライター、編集者。
福島第一原発事故で引き起こされたさまざまな問題や原発被害者を精力的に取材している。近著に『ルポ 母子避難』(岩波書店)

浜岡原発に新冷却装置検討

 最近、原子力規制委は沸騰水型原発に対し、格納容器の下部にためられている水を格納容器の外に引き出し冷却装置で冷やし、再びポンプで格納容器内に戻すことで、事故時に格納容器内の温度を抑え圧力の上昇を抑制する仕組みの導入を義務付る方向です。
 中部電力は、審査中の浜岡原発4号機に、これを導入することを検討していると明らかにしました。
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浜岡原発に新冷却装置検討 中部電力、規制委の義務化受け
静岡新聞 2017年10月21日
 中部電力は20日、原子力規制委員会の適合性審査を受けている浜岡原発(御前崎市佐倉)4号機の重大事故対策で、原子炉格納容器の破損を防ぐ新たな冷却装置の導入を検討していることを明らかにした。原子力規制委が事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型の原発に対し、設置を義務付けたことを受けた。

 沸騰水型は加圧水型の原発に比べ、格納容器が小さく、事故で冷却機能が失われると内部の温度や圧力が上がりやすい。中電は格納容器の破損対策として「フィルター付きベント(排気)」を設置した。ベントは外部に排気する際、放射性物質を大幅に抑えるが、完全には遮断できない。新冷却装置によって内部の圧力を下げ、ベントを使う事態に至るのを防ぐ狙い。

 格納容器の下部にためられている水を格納容器の外に引き出し冷却装置で冷やし、再び格納容器内に戻す仕組み。設備の規模や費用、整備時期などは今後詰める。同日の市議会全員協議会で報告した。
 新冷却装置は、東電が浜岡原発より審査が進む柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)に導入を決め、規制委が有効性を認めた。規制委は意見公募を経て年内に新規制基準を改正し、新装置の設置を正式に義務付ける。

浜岡原発に導入する新冷却装置のイメージ図
浜岡原発に導入する新冷却装置のイメージ図

22- 原子力規制委が高浜原発を調査

 原子力規制委は20日、福井県高浜町にある高浜原発12号機を視察し、新たに設置されるテロ対策施設の建設予定他の地質調査を行いました。
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原子力規制委が高浜原発を調査
毎日放送ニュース 2017年10月21日
 原子力規制委員会は20日、福井県高浜町にある高浜原発1,2号機を視察し、新たに設置されるテロ対策施設の建設予定他の地質調査を行いました。
 関西電力の高浜原発1、2号機は、運転開始から40年を超えていますが去年、全国で初めて最長20年間の運転延長が認められました。
 新たな規制基準ではテロ攻撃などを受けた際に、原子炉の遠隔制御などを可能にする施設の設置が義務付けられていて原子力規制委員会は20日、施設建設のための地質調査を行いました。現在は再稼働に向けた安全対策工事が行われていて1号機は2019年8月、2号機は20年3月に終了する予定です。

2017年10月21日土曜日

柏崎刈羽原発実質合格は 安倍政権と規制委の茶番

 柏崎刈羽原発67号機稼働について、原子力規制が9月に入る辺りからそれまでの東電に対する厳しい姿勢を一転させて、再稼働にお墨付きを与えたことに対しては、これまでもメディアなどから様々に不審の念が表明されました
 ビジネスジャーナルが、見え透いた政治決着経緯が経緯だけに、あまりにもひどい茶番だとする記事を載せました
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東電、原発再稼働へ王手…安倍政権と規制委の「茶番」、東電社長は片肘ついて質疑応答
ビジネスジャーナル 2017年10月20日
 2011年3月の福島第1原発事故を起こした東京電力ホールディングスが柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)を再び運転することについて、原子力規制委員会が厳しい姿勢を一転させ、お墨付きを与えた。10月4日に再稼働の前提となる安全対策が新規制基準に適合していると認める審査書案を了承。同事故後、東電の原発の新規制基準への適合が認められるのはこれが初めてで、柏崎刈羽原発6、7号機は審査合格に向け大きく前進した。見え透いた政治決着とはいえ、業界関係者ならずとも「経緯が経緯だけに、あまりにもひどい茶番」との声が聞こえてくる。

 規制委は独立性と透明性を掲げて12年9月に発足。事故対策を強化した原発の新規制基準を策定し、公開の場で原発を審査する。柏崎刈羽原発の再稼働をめぐっては、規制委員会は通常の技術審査に加え、事業者の「適格性」を見極めるという異例の対応を取った。原発事故を起こした東電は「他の会社とは違う」という、田中俊一前委員長の東電に対する問題意識からだ。

「まるで公開処刑だった」7月の意見聴取
「口先だけ」「主体性がまったく見えない」――6月末に東電の新体制が発足して日も浅い7月10日の意見聴取で、規制委の田中委員長(当時)は東電経営陣にこう詰め寄った。委員会を傍聴した記者は「東電の小早川智明社長は顔面蒼白。公開処刑のようだった」とふり返る。

 7月下旬には、記者会見の席上で東電の川村隆会長の言動に対して、「私の名前を使って言うのは、はらわたが煮えくり返る」と怒りをあらわにした。川村会長は一部メディアのインタビューで、福島原発事故の汚染水の海洋放出に言及。もちろん、漁連を中心に猛反発を食らい、その後、東電が「田中委員長らの見解と同様という趣旨で放出を決めたわけでない」と火消しに走ったところ、田中委員長の逆鱗に触れたというわけだ。
 ところが8月に入り、東電に厳しい姿勢を示していた田中委員長が一転軟化する。遡ること7月10日に規制委は東電を「公開処刑」した場で、「廃炉に主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に、柏崎刈羽原発の運転をする資格はない」と指摘。東電側に文書での回答を求めていた。

わずか1カ月後に適格性容認へ傾く茶番劇
 東電側が8月25日に提出した文書には「廃炉をやり遂げる」などと決意が書かれていたが、廃炉作業に関して具体的な「覚悟」と「実績」は見当たらずじまい。やる気だけで押し通す東電に田中委員長の怒りの鉄槌が下されるかと思いきや、8月30日に開かれた2回目の意見聴取では田中委員長を筆頭に規制委側は理解を示し、「適格性」容認に突き進んだ。
 もちろん、委員のなかからは反対意見はあった。例えば9月6日の会合では「(東電の文書は)決意表明。それだけで適格性ありとしていいのか、不安を感じる」などの声もあったが、田中委員長は「適格性を否定する状況ではない」と語った。

 東電に対する姿勢を豹変させたのは、田中委員長の任期の可能性が高い。9月22日に5年の任期が切れるため、「何かしらの結論を出したかったんだろう」との見方が支配的で、本人も否定しない。駆け込み的なゴーサインに対し、反原発派を中心に失望をあらわす関係者もいるが、「これは実は脚本通り」(前出の記者)との指摘が大半を占める。
 安倍政権は規制委の厳格な審査をもって原発再稼働への理解を得たいため、規制委は電力会社に一見厳しく接しながら、最後は軟化する姿勢を取り、政権から高い評価を得ていた。政権内には一時、田中委員長の再任を求める動きも出ていたが、本人は高齢を理由に固辞した。

田中委員長の任期切れが東電の救い?
 もちろん、東電に「口先だけ」でない「覚悟」があり、「適格性」を満たしていれば問題ないが、8月30日の委員会ではいまだに変わらぬ東電の姿を見せつける格好となった。小早川社長が委員の質問に、片肘をついて体を斜めにして質問に答える様子がインターネットで中継され、ニコニコ動画では「態度が悪い」と批判のコメントが殺到。委員からも「端的に言って、やはり謙虚ではない。(略)特に現場から離れている、現場を見ていない人たちのなかで、やはりその尊大さは企業の風土として残っているような気がします」と苦言を呈された。

 実際、東電は10月4日に審査書案が了承される前に、一部マスコミ向けに柏崎刈羽原発の視察会を10月中旬に開催すると案内済み。安全対策などを公開する予定というが、地元の反対は根強い状況下においても再稼働に向けて突っ走る姿勢は、やはり尊大極まりないと受け止められて当然といえるだろう。結局、東電は何も変わってはいないということだ。 (文=編集部)