2013年3月30日土曜日

柏崎刈羽原発敷地内の断層について(続報)


立石雅昭新潟大学名誉教授(地質学)は324日にも、「活断層と原発 柏崎刈羽は豆腐のうえの原発」(クロスパルにいがた)のテーマで講演されました。同氏は他の講演でもしばしば「柏崎刈羽原発は豆腐のうえに建てられている」を副題やキーワードにしておられますが、いうまでもなく「豆腐」は、柏崎刈羽原発の敷地地下には活断層が沢山走っていて「脆弱で揺れやすい地盤」であることをたとえたものです。

◇中越沖地震ではどれほど揺れたのか
 それでは中越沖地震で柏崎刈羽原発にはどれほどの横向きの力がかかったのでしょうか。

   日本原子力技術協会がまとめた「柏崎刈羽原子力発電所の地震後の状況等について(第5報)」http://www.gengikyo.jp/report/afterearthquake_20070801.html 中の「(4) 地震観測データの分析」に、中越沖地震の時に原発施設の各部に加わった加速度が設計値とともに表示されています。(下表)

耐震時に建造物や装置に加わる力の評価は「加速度[ガル]」を用います。
「ガル」は日常生活では殆ど聞きませんが、地球上では引力による加速度が約980ガルなので、たとえば1,000kgの物体に地震時横向きに490ガルの加速度を加わると、横向きに1,000kg×490/980500kgの力が加わるということになります。
設計強度を大幅に上回る横向きの力が加われば、装置の破損・倒壊や配管の破損等が生じます。
        加速度単位:[ガル]

観 測 点

最大加速度値の観測値と設計値

南北方向

東西方向

上下方向

観測値

設計値

観測値

設計値

観測値

1



原子炉建屋

2

599

460

884

463

394

地下5階(最下階)

311

274

680

273

408

タービン建屋

1階(ペデスタル)

1862

274

1459

274

741

2



原子炉建屋

2

517

271

718

271

412

地下5階(最下階)

304

167

606

167

282

タービン建屋

1

431

295

764

259

594

1階(ペデスタル)

642

588

1159

478

650

地下3階(最下階)

387

233

681

232

470

3



原子炉建屋

2

525

314

650

309

518

地下5階(最下階)

308

192

384

193

311

タービン建屋

1階(ペデスタル)

1350

854

2058

834

619

地下3階(最下階)

581

239

549

243

513

4



原子炉建屋

2

606

299

713

293

548

地下5階(最下階)

310

193

492

194

337

タービン建屋

1

411

269

560

267

494

1階(ペデスタル)

614

832

763

838

526

地下3階(最下階)

763

838

442

242

443

5



原子炉建屋

3

472

354

697

350

331

地下4階(最下階)

277

249

442

254

205

タービン建屋

2階(ペデスタル)

1166

995

1157

754

533

6号機

原子炉建屋

3

554

415

545

411

578

地下3階(最下階)

271

263

322

263

488

7



原子炉建屋

3

367

415

435

411

464

地下3階(最下階)

267

263

356

263

355

タービン建屋

2

418

394

506

418

342

2階(ペデスタル)

673

1096

1007

859

362

地下2階(最下階)

318

299

322

312

336
                      注.上下方向の設計値は235ガル

 原発の建物や装置は強度に十分に余裕をみる必要がありますが、上の表で明らかなように実測された値(観測値)は「十分に安全を見た筈の設計値」をさらに大幅に上回っています。したがってこの表から想定をはるかに超えた振動が装置に加わったことが分かります。 
    因みに阪神淡路大震災での水平方向加速度は813ガル(神戸海洋気象台での測定値)でした。 

◇原発では初めて 活断層による揺れの予測が甘かった と
 東電がこの事実を公表したとき、東電自身「原発でこれほどの揺れが観測されたのは、恐らく初めて」と語っています。
また、東大地震研の教授は「周辺地域の活断層評価が十分でなく、未知の活断層による揺れの予測が甘かったと言わざるをえない」と、正確に問題のありかを指摘しています。

 以下に読売新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
柏崎刈羽原発の揺れ、想定の2.5倍…最大2058ガル
読売新聞 2007730
 新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原子力発電所内のほとんどの建物で、設計時の最大想定値を大きく上回る揺れを観測したことが30日、東電が発表した解析結果で分かった。
 3号機のタービン建屋では、最大加速度2058ガルという最大級の揺れを記録していた。原子炉圧力容器など最重要機器の破損は確認されていないが、稼働再開に向け想定の上方修正を迫られるのは必至だ。

 柏崎刈羽原発の建物や敷地内には97代の地震計が設置されている。東電によると、最大680ガルを記録した原子炉本体のある原子炉建屋だけでなく、ほとんどの建物での揺れが、想定を上回った。3号機タービン建屋1階で観測された東西方向の2058ガルは、想定値(834ガル)の約25倍。東電は「原発でこれほどの揺れが観測されたのは、恐らく初めて」という。

 新型の地震計33台では、地震波の波形データも得られた。これに基づき、各原子炉建屋での揺れを詳細に解析したところ、建屋内の機器などほとんどすべての構造物の揺れが、想定を上回ったことも判明した。
 原子炉の圧力容器や、緊急炉心冷却装置などの最重要機器は、設計強度に余裕を持たせてあるため、想定を大きく上回る揺れにも耐えられる構造になっている。また、分析の結果、強い揺れをもたらした地震波が、17号機とも、周期051秒の間に集中しており、原子炉が共振しやすい周期はもっと短いため、原子炉本体の被害が避けられた可能性もある。

 東京大学地震研究所の纐纈一起(こうけつ かずき)教授は、2058ガルの揺れについて「周辺地域の活断層評価が十分でなく、未知の活断層による揺れの予測が甘かったと言わざるをえない」と話している。

◇原発の装置は3600箇所以上が破損しました
 柏崎刈羽原発は地震の直後に変電機が火災を起こしました。隣接の建屋との間で大幅な不当沈下を生じたことが原因でした。
この火災の消火は消防署に依頼したのでTVでも報じられましたが、原発施設全体にも当然ながら多大な破損事故が生じました。

 旧原子力安全・保安院が平成21213日付でまとめた報告書「新潟県中越沖地震を受けた柏崎刈羽原子力発電所に係る原子力安全・保安院の対応(中間報告)」の「第一章 検討の背景」の「2.中越沖地震に見舞われた柏崎刈羽原子力発電所の状況と東京電力の対応」の「(3)地震直後に確認された設備の損傷等についての東京電力の対応」には次のように記述されています。

「地震発生後からこれまでに約3600件以上の不適合が確認され、このうち、安全上重要と認められるものは85件であった」
     「地震により生じた不適合の中には、法令に基づき保安院に報告することが義務づけられている「法令報告対象トラブル」に該当するものが4件あった。
前述の変圧器火災、6号機非管理区域への放射性物質を含む水の漏えいに加え、6号機原子炉建屋にある天井クレーンを駆動させるための伝動用継手部の破損及び全号機での原子炉建屋オペレーションフロア(原子炉建屋上部の燃料交換などを行う場所)への溢水の計4件がこれに該当する。」 

    『不適合』は品質管理上の用語で、この場合は『(大小の)破損事故』と理解すれば良いと思います。
『安全上重要と認められるもの85件』を含めて残念ながら、破損事故の詳細は不明です。