2013年4月11日木曜日

大飯原発は新基準案に不適合

 
 原子力規制委員会が10示した原発の新しい規制基準案意見を公募した後7月に施行されます。新しい基準は従来よりも大幅に強化されたのでマスメディアは原発の再開の目処が立たないなどと報じていますが、問題はそれで果たして十分なのかであり武田邦彦教授などは安全基準の体をなしていないとまで酷評しています
         2月4日付「武田教授が『緊急論述』を発表」(「湯沢平和の輪HP)
 新基準はテロに備えた第二制御室など「バックアップ施設」の設置に市民団体強い反対を押し切って5年の猶予期間を設けました。5年間は事故が起きないというわけです。問題の活断層についても地表に「ずれ」が現れていなければ運転を認めるなど“抜け穴”もあるということです。
 これに限らず規制委の発足当初「科学的な判断だけをする」と言い切った委員長の田中氏は、その後大きなブレを見せています。10日の記者会見で、大飯原発に関して1月には「新基準を満たしていない場合は、運転を止めてもらうと発言したことを記者から問われると、「どう言ったか覚えていない」と答えました。

 活断層の疑いのあるのを強引に押し切って再稼動した大飯原発は7月で「基準不適合」になるのは明らかです。主な項目だけでも、活断層の疑いがある地下構造の解明をはじめ炉周りの重要配管の多重化、外部電源2回線の設置、冷却水ポンプの保護などが未処置であり、それに加えて原子炉建屋に隣接する会議室を原発事故時の「対策センター」にするという構想も現実性に欠けています。

 この大飯原発についても田中氏は「総合的に判断する」と述べるだけで運転の停止は明言しましせんでした。これでは政権におもねるといわれても仕方がありません。
 
 「科学的な判断だけをする」と言い切った初心に帰って欲しいものです。
 
 以下に東京新聞としんぶん赤旗の記事を紹介します。
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大飯新基準案に不適合 防潮堤や作業拠点
東京新聞 2013年4月11日 朝刊
 
 七月に施行される原発の新しい規制基準案を、原子力規制委員会が十日示した。想定できる最大級の津波を防ぐ防潮堤や、地震や放射能に耐える作業拠点の整備など数多くの設備が要求されるが、唯一稼働中の関西電力大飯原発(福井県おおい町)は、新基準の施行段階ではその多くを満たしていない。規制委はどう判断するのか。 (大村歩)
 
 大飯原発は九月に定期検査に入るが、七月に基準不適合となるのは明らかで、運転停止となって当然。だが、規制委の田中俊一委員長は「総合的に判断する」と述べ、九月まで運転を認める可能性を示す。
 新基準がすぐに適合を求める基準は、防潮堤や作業拠点の整備のほか、原発内の熱を海に逃がす海水ポンプの防護、独立した二つの外部電源回線の確保など多岐にわたる。
 大飯原発ではどうなのか、主な項目を見ていくと、七月時点では基準を満たしていない部分が多い。
 
 作業拠点が完成するのは二〇一五年度中で、関電はそれまでは、代わりの施設として3、4号機の中央制御室の横にある会議室をあてるとしている。
 しかし、中央制御室は原子炉に近い。新基準は、作業員の被ばく線量を最小限に抑えて、食料や飲料水も十分に備蓄するよう求めているが、「会議室」に専用施設の代わりが務まるかは疑問がある。
 関電は既存の防潮堤を数メートルかさ上げして新基準に対応する考えだが、想定すべき最大級の津波の規模を検討するのはこれからだ
 テロや過酷事故の際に通常の制御室とは別に、独立して原子炉を制御・冷却できる「第二制御室」の要求については、五年以内に整備すればよいと猶予期間が設けられた。
 だが、ほかにも七月には到底、適合が間に合わなさそうな項目がいくつもある。
 田中氏は「大飯は対策が進んでいる」「(津波よりも)原発の敷地が高い」など予断を持った発言を繰り返す。
 
 十日の記者会見では、一月に「基準を満たしていない場合は、運転を止めてもらう」と発言したことを問われ「どう言ったか覚えていない」とはぐらかし、どんな重大な不適合があれば運転停止を命じるのか問われても「精査してみないと分からない」と述べるにとどまった。
 規制委が自ら決めた新基準。初めて判断を迫られる大飯原発で、例外扱いがまかり通れば、規制委への信頼が大きくゆらぐのは間違いない。
 

活断層あってもOK 重要施設5年義務づけず 規制委案 再稼働ありきの新基準
しんぶん赤旗 2013年4月11日
 
 原子力規制委員会は10日、原発の「新規制基準」案をまとめました。東京電力福島第1原発事故のような過酷事故や想定を超える地震や津波、火山、テロ攻撃などへの対策を盛り込んでいます。
 しかし、福島第1原発事故の原因究明は進んでおらず、教訓がくみつくされないまま、再稼働に向けた政府や財界などの意向を背景にスケジュール優先で拙速につくられたもので、問題だらけの内容です。
 
 新基準案は、過酷事故に対して複数の電源車や消防車の配備などで対応。大量の放射性物質が放出されるのを防ぐためにフィルター付きベント(排気)設備の設置を求めています。原子炉格納容器が壊れ放射性物質が放出された場合の対策には、専門家から「効果は検証されてない」とされる放水砲を配備するとしています。
 航空機テロ攻撃などで原発の中央制御室が使えなくなった場合に備える「第2制御室」などは「予備」に位置づけ、新基準施行時点での設置を義務づけず、5年間の猶予をつけ、“再稼働先にありき”を示しています。また、稼働中の大飯原発に適用しないことを決めました。
 
 地震・津波対策では、原子炉建屋などの直下に活断層があっても地表に「ずれ」が現れていなければ認めるなど“抜け穴”があります。
 規制委は、7月の「新規制基準」策定を義務づけられています。このため、新基準の検討段階で専門家から、さまざまな意見や疑問が出ましたが、置き去りにしたまま骨子の案文がまとめられました。骨子の段階で実施した短期間の意見公募には「原因究明を踏まえて基準を検討すべきだ」などの意見が寄せられましたが、取り入れられませんでした。
 
 新基準案は11日から1カ月にわたって一般から意見を募集。法律で定められた7月18日までに施行する予定です。
 ほかに、運転開始から40年を経過した原発について審査で最長20年延長できる運転延長許可制度や、新規制基準に関係する火山評価ガイド案なども意見公募の対象になっています。