2013年6月30日日曜日

泉田知事は原発新基準を否定 再稼働は困難に +

 
 新潟県の泉田知事は、毎日新聞の単独インタビュー、新規制基準は不十分で柏崎刈羽原発が新基準を満たしたとしても安全を確保したことにはならない」との認識を示しました。

 新規制基準「福島第1原発事故の検証・総括なしに、ハードの基準を作ったもので安全は確保できない」、「原発立地県の意見に耳を傾けずに作られたもので評価に値しない」と述べたうえ、「過酷事故は100万年に1回ということで、万一過酷事故が起きた場合、例えば現場へ犠牲を覚悟で作業員を出す根拠になる法律の整備も行われていないと批判しました
 東電が目指す早期の原発再稼働は勿論認められません
 
 以下に毎日新聞の記事を紹介します。
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柏崎刈羽原発:新潟知事、新基準を否定 再稼働は困難に
毎日新聞 2013年06月29日
 新潟県の泉田裕彦知事は、29日までに毎日新聞の単独インタビューに応じ、原子力規制委員会の新規制基準は不十分で「(同県内に立地する)東京電力柏崎刈羽原発が新基準を満たしたとしても安全を確保したことにはならない」との認識を示した。立地県の知事が原発の安全性に疑問を投げかけたことで、東電が目指す早期の原発再稼働は困難な見通しとなった。

 泉田知事は新規制基準について「福島第1原発事故の検証・総括なしに、(設備面などに特化した)ハードの基準を作っても安全は確保できない。新規制基準は、残念ながら国民の信頼を得られない」と批判。規制委についても「地方自治行政のことを分かっている人間が一人も入っていない」と指摘、緊急時の住民の避難計画などに関し規制委が県の意見を聞かなかったことを問題視し、「こんなデタラメなやり方は初めて」と厳しく批判した。7月8日に施行される新規制基準についても「(原発立地自治体の)県の意見に耳を傾けずに作られた。外部に説明するつもりのない基準など評価に値しない」と切り捨てた。

 また、万が一過酷事故が起きた際、現行法では、事態の悪化を防ごうにも放射線量の高い事故現場へ作業員を出せないことを課題として指摘。「現行制度では法律違反で誰も行かせられないが、放置すればメルトダウン(炉心溶融)が起きる。そういう問題への対応も用意しないと、事故を総括したことにならない」と述べ、政府にも法的な整備を求めた。

 政府は、規制委の新基準を満たした原発は安全性が確保されたとみなし、順次再稼働させる方針を示している。しかし、実際に再稼働させるには地元自治体の了解も必要。泉田知事は、柏崎刈羽原発の再稼働の是非については「福島の事故の検証・総括が先」などと直接的な言及を避けたが、「規制委の新基準では県民の安全を確保できない」との認識を鮮明にしており、仮に規制委の基準を満たしても再稼働を認めない公算が大きい。

 東電が経営再建計画で目指す今年度の黒字化には、柏崎刈羽原発の再稼働が不可欠。再稼働が遅れれば計画は大きく揺らぎ、電気料金の再値上げも一段と現実味を帯びることになりそうだ。【大久保渉、塚本恒】

柏崎刈羽原発:泉田・新潟県知事との一問一答
毎日新聞2013年6月29日
東京電力柏崎刈羽原発の早期再稼働に否定的な考えを示した泉田裕彦新潟県知事とのインタビューでのやり取りは以下の通り。

原子力規制委員会の新規制基準が近く施行され、原発再稼働への動きが本格化する。
知事 現時点では、福島第1原発事故の十分な原因究明や対応策ができていると思えない。事故の検証・総括抜きの基準では国民の信頼を得られないだろう。

新基準のどこが問題か。
知事 規制委に地方自治の専門家が一人も入っていない。事故時に原子炉の圧力を下げるベントをする場合は、放射能を含んだ水蒸気を放出するため住民の避難が必要になるが、規制委は新潟県の意見を一切聞かずに基準を作った。原発の安全管理に関する県の技術委員会も意見を表明したが、まるで耳を傾けてくれない。こんなデタラメなやり方は初めてだ。規制委の田中俊一委員長は、私の質問に「答える義務はない」と発言した。外部に説明するつもりがない基準など評価に値しない。

柏崎刈羽原発は2007年の中越沖地震の時も停止した。
知事 あの時は原発施設から火災が起きる複合災害だった。道路が寸断されて消防車が原発になかなかたどり着かず、一方で途中で救助を求めてくる人にどう対応するのかという問題も出て、結局、消防隊を原発に配備することになった。県と柏崎刈羽原発の間の連絡が不自由になったことも大きな課題になった。当時は、こうした検証・総括をやった上で再稼働を認めた。

東電や政府は、新規制基準を満たすことが安全確保の証明になるとの認識だ。
知事 規制委は100万年に1回の確率で事故は起きると言っている。新基準は(事故を起こさないための)安全基準ではなく、「規制を実行すれば、後は知らない」といっているようなものだ。原発が動かないと電気料金の再値上げにつながるといわれるが、国として考えるべき問題で、立地地域に聞くのは間違っている。

東電が柏崎刈羽の安全審査に向け申請準備を進めている。
知事 柏崎刈羽原発はBWR(沸騰水型)で、新基準を満たすにはフィルター付きベント施設が必要だが、設計すら終わっていないと聞いている。政府による制度の見直しも必要だ。例えば、過酷事故が起き高レベル放射能が出ている現場へ犠牲者を出す覚悟で作業員を出せるのか。現行制度では法律違反で誰も行かせられない。