2013年6月3日月曜日

原発ADRが住民の被ばく不安に対し賠償50万円を提示

 福島原発事故で、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が、仲介にあたり被ばくに伴う精神的損害を認め1人50万円(妊婦と18歳以下の子どもは100万円)を支払うことを東電と住民に示したことが分かりました。センターが被ばくの不安への賠償を認めたのは初めてです。東電と住民は、今後この方針を基に協議を進めます。
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福島第1原発:飯舘村住民の被ばく不安に賠償50万円
毎日新聞 2013年06月02日
◇妊婦、18歳以下は倍 原発ADR提示
 東京電力福島第1原発事故の被害で、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が、福島県飯舘村長泥(ながどろ)地区の住民の仲介手続きに対し、被ばくに伴う精神的損害を認める方針を東電と住民に示したことが分かった。住民側弁護団が2日、明らかにした。弁護団によると、センターが被ばくの不安への賠償を認めたのは初めて。東電と住民は、この方針を基に協議を進める。賠償を求める他の周辺住民の動きにも影響を与えるとみられる。【蓬田正志】

 申し立てていたのは、飯舘村南部に位置する長泥地区の約180人。福島市で記者会見した弁護団によると、賠償の対象は、高い空間放射線量が確認された2011年3月15日以降、同地区に2日間以上滞在した住民で、被ばくの恐怖や不安に対する損害として1人50万円(妊婦と18歳以下の子どもは100万円)の支払いを提案した。「被ばく防護をせずに原発事故前と同じ生活を続けさせた」などを理由に、避難に伴って既に支払っている精神的損害(1人当たり月10万円)と別に位置づけた。この方針は先月下旬に提示されたという。
 県災害対策本部によると、原発から北西に約40キロ離れた同村役場では、事故直後の11年3月15日から空間放射線量が毎時40マイクロシーベルト台に急上昇。しかし、村が避難区域に指定されたのは約1カ月後の4月22日だった。長泥地区の線量は特に高く、昨年7月の区域再編でも、年間積算線量が50ミリシーベルト(毎時9・5マイクロシーベルト相当)を超える帰還困難区域となった。
 住民側は、センターに被ばくに伴う精神的損害として500万円を求めていた。弁護団の小林克信弁護士は「金額は小さいが、国や東電が黙殺していた被ばくに対する責任が認められた。社会的に重要」と評価した。東電福島広報部は「個別の案件には回答できない。適切に対応していきたい」とコメントした。
 同県浪江町も、町民1万人余の被ばくの不安にも賠償を認めるよう、センターに申し立てている。
◇ADR(裁判外紛争解決手続き)
 原発事故の賠償は、原子力損害賠償紛争解決センターが仲介する。東京電力が提示した条件では納得できない、など被災者と東電の紛争を円滑、迅速、公正に解決するのが目的。弁護士が仲介委員を務め、面談や書面で双方の意見を聞いて和解案を提示する。集団申し立ては、個人の事情が異なるため、今回のように具体的な和解案を提示する前に、全体的な方針を示すことがある。