2013年7月20日土曜日

福島第一作業員の甲状腺被曝は公表の10倍、半数が未受診

 東電福島第1原発の作業員のうち約2000人が、100ミリ以上の甲状腺被曝をしていたことが分かりました。甲状腺に100ミリ以上の被曝をするとがんのリスクが明らかに高まるとされています。
 内部被曝のほとんどは事故直後の甲状腺被曝なのですが、国と東電はこれまで全身線量(ホールボディーカウンター)の管理しか求めてきませんでした。外部からの指摘を受けて昨年12月にようやく甲状腺被曝線量を初めて公表しWHOに報告したのですが、そのデータの提供を受けた国連科学委員会が信頼性を疑問視したためもあって再調査した結果、12月公表の10倍以上の100ミリ超甲状腺被曝者が存在することが明らかになりました。まだ受信していない作業員が(全体の)半数いるので、高線量被爆者数はもっと増加します。

 国連科学委員会は、先に福島県民健康管理調査の問題がクローズアップされたときに政府寄りのコメントを出した機関なのですが、当初の調査結果はそこからさえも疑問視されるほどに不審なものであったわけです。
      2013年6月1日「国連科学委が『福島』の発がんの危険性を否定」
 原子力規制庁が原発事故の際に服用して甲状腺被曝を防ぐ安定ヨウ素剤の服用対象者を、これまでの「40歳未満」から全年齢に広げることにしたニュースと併せて紹介します。
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甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診
朝日新聞 2013年7月20日
 東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝(ひばく)をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。 【大岩ゆり】

 作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。 
 東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。 
 東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。 

 実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。 

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の経験などから、甲状腺に100ミリ以上の被曝をすると、がんのリスクが高まると考えられている。従来は、40歳以上はがんが増えにくいとされていたが、最近は40歳以上でもリスクが増えるとの報告も出ている。 
 東電広報部は「甲状腺被曝線量が100ミリを超えていた作業員全員に対し、東電の負担で生涯、年1回の甲状腺の超音波検査を行う。検査対象者にはすでに通知した」としている。検査を受けた作業員の割合は確認中というが、関係者によると、甲状腺検査を受けた作業員は半数程度にとどまっている。 
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 〈甲状腺被曝(ひばく)〉 主に吸入などで体内に入った放射性ヨウ素による内部被曝。100ミリシーベルト以上被曝するとがんが増えるとされるが、チェルノブイリ原発事故では50ミリシーベルト以上でがんが増えたとの報告もあり、予防目的で甲状腺被曝の防護剤を飲む国際基準は50ミリシーベルトだ。 
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▽作業員の健康相談窓口 (略)

原子力規制庁:ヨウ素剤対象全年齢に 「高齢でもリスク」
毎日新聞 2013年7月19日
 原子力規制庁は19日、原発事故の際に服用して甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤について、住民への配布や服用対象を定めた手引をまとめた。国はこれまで「40歳未満」を服用対象としてきたが、新たな科学データを踏まえて40歳以上にも拡大。この結果、全年齢に広がり、人口は原発から半径30キロ圏内だけで推計480万人に膨らむ。

 対象自治体は地元住民への事前説明会を開いたうえで、近くヨウ素剤の事前配布を始める。しかし、ヨウ素剤を供給できる製薬会社は国内に1社だけで、ヨウ素剤が速やかに住民に行き渡るかどうかが今後の課題になる。

 手引は国の原子力災害対策指針に基づく。地方自治体の担当者向けと、医療関係者向けの2種類。旧内閣府原子力安全委員会は2002年、広島、長崎の被爆者を調べた疫学調査を受けて「40歳以上は放射性ヨウ素による甲状腺がんの発生確率は増えず、ヨウ素剤服用の必要はない」との方針を示していた。
 一方、規制庁は「最近の研究によっては、甲状腺がんのリスクは年齢とともに減ることは確認されるものの、高齢者でもそのリスクが残る懸念がある」と判断。服用する場合は甲状腺機能低下などの副作用があることを理解してもらったうえで、40歳以上にも拡大することにした。【中西拓司】