2013年7月24日水曜日

汚染水流出に漁業者から怒りが噴出 

 
 東電が23日、福島原発の汚染地下水が海に流出したことを報告した説明会で、「前から知っていたのではないか」「発表と実態が懸け離れている」「汚染水の海洋流出は漁協操業の壁になる。今の状態なら99%やらない方がいい」「福島県産のタコは半値でも売れない」と出席した漁業者から怒りの声が噴出ました。
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汚染水海洋流出に漁業者怒り噴出 いわきで東電が説明会
河北新報 2013年7月24日
 福島第1原発の井戸水から高濃度放射性物質が検出された問題で、東京電力は23日、汚染水が海に流れ出たことを漁業者に報告する説明会をいわき市で開いた。海洋流出を否定し続けた姿勢を一転させ、流出を認めた。漁業者から「不誠実で信用できない」と批判や怒りが噴き出た。
 「前から知っていたのではないか」「発表と実態が懸け離れている」。説明会で事情説明する東電の新妻常正常務に、出席した漁業者が怒りをあらわにした。
 原発事故で福島県沖は休漁が続く。福島県いわき市漁協は9月、試験操業を始める予定だった。矢吹正一組合長は「汚染水の海洋流出は操業の壁になる。今の状態なら99%やらない方がいい」と述べ、見直す考えを示唆した。
 東電は原子力規制委員会から10日に汚染水の海洋流出を疑う指摘を受けたにもかかわらず、流出を認めなかった。社内の情報共有が不十分だったせいで事実誤認だったことが分かり、22日に流出を認めた。
 県漁連の野崎哲会長は「これまでの説明と違い、ショックだ。原発事故収束宣言の撤回を国に要請するかどうかを検討する」と危機感を示した。
 福島県相馬市の相馬双葉漁協は先行的に試験操業を実施している。「汚染水の海洋流出の可能性」が報じられた今月中旬から風評被害を受け、1キロ約1000円だった県外出荷の煮ダコが一部で半値近くに値崩れした。中京圏の流通業界の反応が厳しく、「福島県産のタコは半値でも売れない」と言われている。
 相馬原釜魚市場買受人協同組合(相馬市)の佐藤喜成組合長は「消費者の不安が広がれば、販売が立ちゆかなくなる。国と東電は対策に全力を挙げてほしい」と注文する。
 県は23日、緊急幹部会議を開いた。佐藤雄平知事は「原発事故から2年4カ月、東電に何度も汚染水対策の徹底を申し入れたが、周知されずがっかりしている」と表情を曇らせた。
 内堀雅雄副知事は「最悪を予測して先手先手で対応するのが原子力事故の基本なのに、実行されていない」と批判した。
 

社説 汚染水流出 東電に当事者能力なし
北海道新聞 2013年724
 福島第1原発敷地内の井戸から高濃度の放射性物質が相次ぎ検出された問題で、東京電力は汚染された地下水が海に流出していることを初めて認めた。 
 東電はこれまで海への流出の可能性を否定してきた。 
 しかし、原子力規制委員会に促される形で調べた結果、周辺海域の潮位に連動して井戸の水位も変化することが分かり、海水と地下水の行き来があると判断したという。 
 許し難い怠慢である。流出量は不明なのに、汚染は原発の港湾内にとどまるという説明からは、危機感がうかがえない。 
 地下を通じた汚染水の垂れ流しは、事故直後から現在も続いていると考える方が自然だろう。東電は根拠のない楽観的な見通しを語る前に、汚染の実態を調査し、汚染源と流出経路の特定を急ぐべきだ。 
 一連の経緯を見ると、東電という企業の底知れぬ隠蔽(いんぺい)体質を疑わざるを得ない。 
 井戸水の検査数値の異常を5月末に把握していたにもかかわらず、2週間以上も公表しなかった。 
 東電は今年1月から水位などの計測を実施していた。ところが、これらのデータは社内で共有されていなかったというのである。 
 水位のデータを18日に経産省などに伝えていたのに、発表が参院選後の22日にずれ込んだのも不可解だ。 
 意図的に隠したのでなければ、そもそも事故処理の当事者能力を欠くとみなされても仕方あるまい。 
 東電は汚染水の海への拡散を防ぐため、遮水壁の建設や、地中の土を固める地盤改良に取り組んでいる。 
 こうした対策を急ぐのは当然だが、福島第1原発では、原子炉建屋の地下に毎日400トンの地下水が流れ込み、汚染水が増え続けている。 
 敷地内に貯水タンクを増設してしのいでいるのが実態で、早晩行き詰まる恐れがある。 
 苦肉の策として、東電は建屋に入る前の地下水をくみ上げ海に放出する計画を立てた。漁業者の同意を求めているが、現状では東電の主張に理解が得られるはずがない。 
 止まらぬ海洋汚染は、操業自粛を余儀なくされている漁業者を苦しめるばかりでなく、日本の国際的な信用も失墜させる。 
 その場しのぎの対応を繰り返す東電にまかせ、汚染水を放置したままでは廃炉作業にも支障をきたす。 
 政府は廃炉の工程表づくりにかかわった以上、積極的に事故処理に関与し、汚染水問題の抜本的解決を図る責任がある。 
 政府が前面に出るべきは、福島の事故収束であって、断じて原発の再稼働や輸出ではない。