2013年8月10日土曜日

IAEA、グリーンピースが福島の汚染水問題を注視

 IAEA国際原子力機関は9日、東電福島原発から放射能汚染水が海に流出している問題について、状況を注視しており、要請があれば支援する用意があると表明しました。
 IAEAの調査団4月に福島原発の廃炉作業検証来日しその後政府に報告書を提出しましたが、4月22日の記者会見で、「汚染水の問題が直面する最大の課題。東電は包括的な戦略を見直すべきであるまた不具合が発生した場合、迅速に問題を突き止める能力と対応する能力を備えることが大切である」と、東電を手厳しく批判しました。
 原発推進機関としては異例とも思われることでした。

 これまで来日した外国機関などは必ず東電の事故対応能力を疑問視する発言をしてきましたが、日本のマスメディアは一切そういう批判をすることはなく、また政府も放置したままで遂に今日の惨状に至りました。

 以下にロイター通信の記事と、Alternaに掲載された国際環境NGOグリーンピースの声明を紹介します。
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IAEA、福島第1原発の汚染水問題を注視
ロイター通信 2013年8月10日
[ウィーン 9日 ロイター] 国際原子力機関(IAEA)は9日、東京電力福島第1原子力発電所から放射能汚染水が海に流出している問題について、状況を注視しており、要請があれば支援する用意があると表明した。

IAEAの広報責任者Serge Gas氏は声明で「日本の当局者は既存の流出および今後の流出への対策方針を説明している」と述べた。
その上で、IAEAは液体廃棄物の処理方法について日本の当局に既に勧告しており、IAEA調査団が4月にまとめた報告書で、東電に対し蓄積した水の処理方法を見直すよう求めた点に言及。汚染水流出を速やかに検出し、影響を最小限に抑える十分な措置を講じることが最も重要とした調査結果に触れ、「IAEAは引き続き、要請があれば支援を提供する用意ができている」と表明した。

NGO、放射能汚染水の流出阻止で声明
Alterna  2013年8月9日
国際環境NGOグリーンピースは、一日に300トンもの放射能汚染水が海へ流出しているとの発表、汚染水対策に国費が投入される政府方針の提示など、東京電力福島第一原発からの放射能汚染水の問題が非常に深刻な事態となっていることを受け、下記の声明を発表しました。

(声明)
グリーンピース・ジャパン 気候変動/エネルギー担当 高田久代
 東電福島第一原発からの放射能汚染水は非常に深刻な事態だ。事故当事者である東京電力は、これ以上の汚染水流出阻止に全力を傾け、徹底的に情報を公開すべきだ。政府は汚染水対策に税金を投入する前に、現場の状況をすべて掌握し、原子力産業から利益を得てきた企業に負担を求め、諸外国に支援を要請するなどあらゆる努力を行うべきだ。放射能汚染水の海洋流出は、福島周辺にとどまらず広大な海洋環境を汚染しており、将来の漁業にも大きな影響が心配される。失われた自然環境や、自然とともにあった地域の人々の暮らしや経済を、事故前のように戻すことは難しい。地震・津波・原発事故の帰結に苦しむ被害者に、放射能汚染水によって一層の困難をもたらすことがあってはならない

グリーンピース・インターナショナル        
 エネルギー担当、放射線防護アドバイザー
リアナ・トゥール
 海は地球全体で一つにつながっており、放射能汚染水の海洋流出は日本だけの問題ではない。放射能汚染水を流出させ、海を汚染し続けることは、海の汚染を防ぐためにつくられた国際ルールの精神に反する行為である。その一つであるロンドン条約の対象海域は、湾や入り江などの内水を除く全ての海域であり、現在大量の放射性物質が流出している海域も含まれる。事故から二年半を経た今でも、日本の市民は原子力産業界の失敗のツケを支払い続けている。どの国においても、原子力産業界が福島原発事故のような大災害に対処することは不可能だ。日本政府が全力をあげるべきなのは、電力会社の経営のため国内の原発を再稼働させたり、海外へ原発を無責任に売り込むことではない。汚染水を始めとする福島事故の一刻も早い収束と自国の被害者の速やかな救済である
以上

また、8月8日に、グリーンピースらNGO10団体は、「東電福島第一原発の汚染水対策をめぐる緊急集会と政府交渉」を共催、グリーンピースは海産物への放射能拡散状況および国際条約について説明、政府への質問を行いました(資源エネルギー庁から1人、原子力規制庁から3人、外務省から3人の出席)。政府交渉の冒頭では、賛同214団体による共同署名活動により、48時間で集められた6404筆の署名を原子力規制庁に提出しました。
 
福島原発に対する東電の対応から、東電に事故を収拾する能力がないことは明らかですが、更に、今回の政府交渉では、資源エネルギー庁と原子力規制庁のどちらが汚染水問題の責任を負うか定まっていないことが市民の目の前で明らかになるなど、政府の取組も疑問の湧くものでした。また、資源エネルギー庁の汚染水処理対策委員会が非公開で行われていることに対し市民が公開を求め、資源エネルギー庁担当者は今後の運営を検討すると応じました。