2013年8月18日日曜日

汚染水 流出防止対策は国の責任

 16日の記事「福島汚染水流出の可能性は当初から分かっていた」のとおり、東電と政府は事故発生の直後から敷地内の地下水が「スースー」と海に向けて流れる地層になっていることを承知していました。そのうえで東電は工費1000億円が惜しいがために山側遮水壁を施工しないことにし、政府もそれを黙認しました。その結果この2年あまりで莫大な量の放射性物質を海に流し続けました。

 そして井戸水や海水の分析によって、もはや言い逃れが出来ない事態になると、7月22日、参院選の投票が済むのを待って東電が汚染水の海洋流出を認めました。
 その後8月に入ると安倍首相が汚染水の流出対策は政府が前面に立って行うと述べ、茂木経産相に「スピード感を持った東電の指導」を指示し、同相は直ちに汚染水問題を検討する有識者会議を発足させました。

 東電が海洋流出を認めたとき、実はもっと以前に判明していたのに発表を参院選後まで引き延ばしたことを、東京新聞などが明らかにしました。そのときは数日間遅らせたというものでしたが、事実は2年余りも遅らせていたのであって、数日間の遅れを責められても東電も(政府も)痛くも痒くもなかったのでした。
 政・官・業(電力)の結託による欺瞞・隠蔽体質は半端ではありません。そして本来そうしたことを追及しなくてはならない筈の国内マスメディアは、数十年来機能不全のままです。これでは救いようがありません。

 東電が汚染水の海洋流出を認めた後の政府側の対応は比較的迅速なものに見えたのですが、海洋流出が当初から分かっていたのであれば話はまったく別です。
 政・官・業トリオがどこまで国民をコケにしてきたのかという話であり、世界中を欺いて莫大な量の放射能をばら撒き続けてきたのかという問題です。

 河北新報(東北地方紙)が17日付で、「福島原発汚染水/拡散防止策は国の責任だ」とする社説を掲げました。
 いまさら東電の無能や無責任をあげつらってみても始まりません。そんな東電に全てを任せたふりをしてきたことを含めて、この汚染水流出の問題はあらゆる意味で政府の責任です。それを償う意味でも政府は今度こそ責任を全うすべきです。
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福島原発汚染水/拡散防止策は国の責任だ
河北新報 2013年08月17日
 福島第1原発の放射性汚染水対策で国がようやく動きだした。汚染水の海への流出が明らかになり、重い腰を上げた形だ。
 汚染水問題に対して国はこれまで危機意識がなさすぎた。国が関与しても流出防止は極めて難しいことに変わりはないが、東京電力の手に負えない状況も明らか。国が前面に出て対策を講じていくしか道はない。
 その場しのぎでなく根本的な解決策を探るためには、原子力プラントや汚染除去の技術者はもちろん、地質や地下水の専門家らも幅広く結集して当たらなけれならない。
 国は早く「司令塔」の役割を担う組織を立ち上げて放射性物質の拡散状況などを調べ、長期的な対策をまとめるべきだ。
 国策として原子力利用を推進し、その揚げ句に過酷な福島第1原発事故が起きた。土壌や海洋の汚染を防ぐ最終的な責任は間違いなく国にある。
 国によると、福島第1原発1~4号機とその周辺には、1日に約千トンの地下水が入り込んでいるという。そのうちの約400トンが原子炉建屋地下などに流入し、溶け落ちた核燃料の冷却水と混じり合っているが、取りあえず回収されている。
 残り600トンのうち300トンは汚染されずにそのまま海に出ているが、300トンは「トレンチ」と呼ばれる地下道に入ってから海に流出している。トレンチ内には、原発事故当初から高濃度の放射性物質が含まれた汚染水がたまっている。
 結局、毎日700トンの汚染水が発生し、うち300トンは海に流出、400トンは回収して保管していることになる。
 地下水の流入防止策として地盤を凍らせる「凍土遮水壁」が検討されており、国はその費用を2014年度予算に計上する方向だという。予算化されれば汚染水対策への初の国費投入になるが、それだけで済む状況ではない。
 まず、原発敷地内の地下水の経路や水位を徹底的に調べるべきだ。東日本大震災の揺れによって地下の状況が変化していることも考えられるだろう。
 同時に設備の損傷が地下水流入をもたらしていないかどうか、詳しく調査しなければならない。いずれも東電の資料や説明をうのみにせず、しかるべき専門家にあらためてきちんと確認してもらう必要がある。
 根本的な対策は、そうしたデータを集めてから検討した方がいい。応急処置はもちろんその都度進めるべきだが、恒久的な対策は効果を慎重に評価してから決定するのが望ましい。
 汚染水の保管も重大な問題だ。海洋投棄ができなければ、いずれ原発敷地外や県外への移送も検討せざるを得ない。その場合、国の役割が欠かせない。

 福島第1原発事故の後始末は並大抵のことではないにもかかわらず、国の危機意識は乏しかった。「廃炉対策の推進」は訴えても、掛け声にすぎなかった。もはや破綻の瀬戸際にあると深刻に受け止め、具体策をまとめて国民に説明すべきだ。