2013年8月26日月曜日

緑の党が福島汚染水問題で緊急声明


 緑の党はまだ国会に議席を持っていませんが、脱原発を最重要政策のひとつに掲げています。23日、同党運営委員会は「いのちの海を放射能で汚さないで ~再稼働や輸出ではなく、汚染水対策に全力投入を」とする緊急声明を出しました。

 主要と思われる点を以下に掲げますが、地下水位上昇による原発敷地の液状化問題、凍土遮水壁は事前に実効性の検証を要すること、当事者能力のない東電は解体しあらゆる関連分野の人と知見を集約した組織で廃炉と汚染水対策を進めること、タンカーに汚染水を移送する方法を検討すること、規制委は他の作業はやめて全てのエネルギーを汚染水対策を含む事故収束に振り向けること、国会の閉会中審査を実施し汚染水流出を防止するために積極的な議論を行うこと、などの鋭い指摘と提案を行っています。

 【声明の主要点】
福島原発の放射能汚染水の流出問題に対する東電の対応は泥縄式であり、放射能汚染に真剣に向き合おうとしていないこと。
・遮水壁等の一連の処置により汚染水の地下水位上昇し、もし大きな地震が襲えば、汚染水液状化が起こり、建屋の傾斜あるいは倒壊に至るおそれがあること。
汚染水問題はいのちと原発の共存などあり得ないことを示していること。
・多額の費用を投じる「凍土遮水壁」は、その実効性を事前にしっかりと検証すること。
・そもそも福島原発は地下水脈の上に建設され、事故前、1日850トンもの地下水を汲み上げていたもので、立地の適正を欠いていたこと
・当事者能力をもたない東電を解体し、新たな廃炉機関と汚染水対策に特化した部門を作ること。そこに、国内外のあらゆる関連分野の人と知見を集約し、権限を与え、事故対処にあたらせること。
・大型タンカーが接岸可能なバースを作り、タンカーに汚染水を移送し、柏崎刈羽原発の廃液処理施設で処理等の民間から出されている具体案を真剣に検討し、実行に移すこと。
規制委員会は他の作業を中止して、更田豊志委員をはじめとするすべての人員とエネルギーを汚染水対策を含む事故収束に振り向けること。
・緊急事態であるにも関わらず、国会は10月まで開かれない。閉会中審査を実施し、汚染水流出を防止するために積極的な議論を行うこと。
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【緊急声明】 いのちの海を放射能で汚さないで!
   ~再稼働や輸出ではなく、汚染水対策に全力投入を
2013年8月23日  
緑の党運営委員会
 東京電力福島第一原発の放射能汚染水の流出問題が緊迫しています。少なくとも1日300トン、25メートルプール1杯分以上の放射性物質まみれの水が、太平洋を日々汚染しています。さらに、8月19日にはタンクからの約300トンに及ぶ過去最悪の高濃度汚染水漏れが発覚し、原子力規制委員会は、レベル3の「重大な異常事象」にあたるとの見解を示しました。

 東電は、昨年末から今年5月にかけて汚染水モニタリングを怠ったばかりか、参院選が終わるまで、海洋への流出を隠ぺいしました。4月には「福島第一信頼度向上緊急対策本部」を設置し、潜在的リスクの抽出を実施したものの、トレンチ内に滞留する高濃度汚染水については取り上げすらしませんでした。東電の対応は泥縄式であり、放射能汚染に真剣に向き合おうとしていません。

 この期間、規制委員会も東電を放置して、再稼働に向けた新規制基準づくりに熱中していました。規制委員会は現在、汚染水対応を含む福島事故対策には従来と変わらぬ約40人しか割かない一方で、再稼働に向けた新基準の適合性審査には約80人体制の増員すら図り、週3回のハイペースで審査会合を続けています。

 汚染水の地下水位は上昇するばかりであり、建屋への大規模な浸水も懸念されます。もし大きな地震が襲えば、汚染水液状化が起こり、建屋の傾斜あるいは倒壊に至る恐れすらあります。作業者が立ち入れなくなり、収束作業が不可能になる最悪の事態が訪れかねません。そして、取り返しのつかない史上最悪の放射能海洋汚染へと拡大する恐れもあります。こうした状況で、原発の再稼働や輸出などあり得ません。

 東電の延命を最優先してきた経産省や、ここに至るまで事態を放置してきた安倍首相の責任は重大です。汚染水問題は、いのちと原発の共存などあり得ないことを改めて教えています。私たちは、切迫する事態を踏まえて、政府をはじめ関係当事者に以下を要求します。

<応急対策について>
・政府の原子力災害対策本部が検討している400億円を投じての「凍土遮水壁」は、今年度中に実現可能性調査が行われ、完成は2年後とされている。効果の薄い税金の垂れ流しは許されない。その実効性を事前にしっかりと検証すること。
・経産省資源エネルギー庁の下に置かれた汚染水処理対策委員会は、ゼネコンによる秘密コンペの場になっている。会議と議事録を全面公開すること。
・安易な国費=税金投入をやめて、東電以外の原子炉メーカー等の当事者企業にも経費を分担させること。
・地上の放射線量が上昇するなど、現場は「放射能の戦場」とも言うべき状態である。汚染水対策のためにも、敷地の全面的な除染等により、作業環境の悪化を早急に食い止めること。
・タンクにためている汚染水の海洋放出をしないこと。田中俊一規制委員長は8月21日、「トータルとしていろんなことを考えないといけない」と述べ、放出の可能性を示唆した。発言を撤回し、放射性廃棄物の海洋投棄を禁じるロンドン条約の精神を遵守すること。

<情報公開と規制強化について>
・東電は8月21日、2011年5月以降、ストロンチウム90が10兆ベクレル、セシウム137が20兆ベクレル流出したとの試算を発表した。プルトニウム等も含む、より正確な流出データを公表するとともに、漁業者をはじめとする住民や海外への情報公開と協議の場を拡充すること。
・福島第一原発は地下水脈の上に建設され、事故前、1日850トンもの地下水を汲み上げていた。建設計画自体の妥当性が疑われる。他原発についても地下水を調査し、遮水対策などを実施させること。適合性審査を中止し、原発の新規制基準に汚染水流出対策を組み入れること。
・各地の原発で、年間数百億から百兆ベクレルの放出が容認されていたトリチウム汚染水の海洋流出の規制を強化すること。また、六ヶ所再処理工場における大気・海洋へのトリチウムなどの放射性物質の垂れ流しも規制すること。

<事故対処体制の組み替えについて>
・無責任体質、隠ぺい体質を改めることなく、汚染水問題解決の意志も能力もない東電に、もはや対応は不可能である。東電を解体し、新たな廃炉機関と汚染水対策に特化した部門を作ること。そこに、国内外のあらゆる関連分野の人と知見を集約し、権限を与え、事故対処にあたらせること。
・汚染経路を特定するための染料マーカーの導入。汚染水を大量に備蓄できる地下貯水タンクの設置。大型タンカーが接岸可能なバースを作り、タンカーに汚染水を移送し、柏崎刈羽原発の廃液処理施設で処理等の民間から出されている具体案を真剣に検討し、実行に移すこと。
・事故はますます悪化しており、「福島事故を繰り返さない」ことが前提の再稼働審査は到底できる状況にはない。規制委員会は適合性審査や核燃料施設の新規制基準づくりを中止して、更田豊志委員をはじめとするすべての人員とエネルギーを汚染水対策を含む事故収束に振り向けること。一丸となって新チームを設置し、現場近くに事務所を設けること。
・緊急事態であるにも関わらず、国会は10月まで開かれない。閉会中審査を実施し、汚染水流出を防止するために積極的な議論を行うこと。