2013年9月30日月曜日

電力会社によるメディアコントロール


 2008年に大阪毎日テレビが、番組:なぜ、警告を続けるのか?京大原子炉研究所―異端の研究者たち」で京大の熊取6人組を取り上げたところ、翌日関西電力から抗議があり、コマーシャルを中止され系列での再放送を禁じられるなどしました。
 この件について、ラジオ番組:「ラジオ・フォーラム」に出演した京都大学の小出氏が、質問に答えました。

 熊取6人組の番組は、関西ローカル番組で日曜の深夜(12時50分~)に放映されましたが、そうした遠慮がちな放送にも容赦なく圧力をかけてくる電力会社の姿勢に驚かされます。

 「日本のマスコミという世界では原子力の反対派にものを言わせない、ということでずっときたと思います
 小出氏は電力会社によるメディアコントロールについて、そう語っています。
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 電力会社のメディアコントロール ・・・・第38回小出裕章ジャーナル
Web公開 2013年9月28日

聞き手  小出さん、今日も宜しくお願いします。小出さんは2008年「なぜ、警告を続けるのか?京大原子炉研究所―異端の研究者たち」いうドキュメンタリー番組に出演されましたよね。視聴率は1・8%。これ、小出さんが出演されて、番組終了後の経緯を教えて頂けますか?
小 出   私からあまり申し上げることでもないですけれども、私が知り得たことをお伝えしたいと思います。その番組では、それまで原子力に抵抗してきた、私たち熊取六人組を題材に取り上げて下さったのですが、それが放映された翌日になりまして、関西電力がすぐに毎日放送に抗議に来たと。
聞き手  関西電力が毎日放送に抗議に
小 出   とんでもない番組だ。毎日放送は原子力に関して偏向している」という抗議をしたと、私は聞きました。
聞き手  事件の経緯を調べますと、社内で一度試写をして、番組アドバイザーにも了承をもらって、通常の放送手順を踏んで放送したわけで、番組としても推進派の方も出られていましたのでバランスもとれていたと思いますが、小出さんたちを出したことが気に食わなかったのでしょうか?
小 出   もちろん、そうだと私は思います。これまで、日本のマスコミという世界では原子力の反対派にものを言わせない、ということでずっときたと思いますし、私たちに何か焦点を当てるという形、勿論、賛成派の方も出ていたわけですけれども、私たちに焦点を当てる番組はとんでもないというのがマスコミの中の合意だったのだと思います。  
聞き手  小出さんや今中さんを出したこと自体が関電としては問題だということで抗議に来たのだろうと思います。同様に、広瀬隆さんもテレビから干されていますし、佐高信さんも干されぎみだと思うのですが・・・
小 出   佐高さんが干されるのは当然というか、ああいう人に出られたら、体制側の人は困るでしょうね。
聞き手  原発にずっと反対し続けてきた高木仁三郎さんなんかもテレビで見た記憶がないのですが、どうですか。
小 出   私自身はテレビを全く見ないのです。昔、大宅壮一さんという評論家の方がですね、テレビが普及しだした頃に、この道具は一億総白痴化の道具だと、おっしゃったことがありましたけども、私も実にそのとおりだと思いますし、本当にテレビという番組は私から見ると、くだらない情報を一方的に垂れ流す形になってしまっていて、私は見ると不愉快なことばかりですので、もうほとんど何十年もみていないという状況です。
聞き手  この番組の後、関西電力はスポットCMを引き上げたということですよね。
小 出   はい。そう聞きました。
聞き手  こういうことをするアンフェアな社内体質はどう思われますか。
小 出   もちろん、フェアだとは思いませんし、私は一度も電力会社がフェアだなんて思ったことは一度もありませんし、相変わらず、汚い手を使ってくるのだな、と思いました。
聞き手  公共の電気を司るとこですから、普通の企業よりもフェアであるべきですよね。
小 出   あるべきか、あるべきではないかと問われると、もちろん、あるべきだとは私は思いますけれども、電力会社というのは、一番、宣伝とか放送に関してはアンフェアな態度を取り続けてきた会社だと思います。
聞き手:  原子力は五重の壁に守られていて安全ですというCMがありましたが、そのCMを見て小出さんはどう思いましたか。
小 出 :  実に不愉快ですし、そんなことがありようはずがないと私は警告してきました。そして、実際に福島の事故が起きてしまっているわけですから、電力会社が言っていた宣伝が間違えていたわけですし、その間違えた宣伝を流し続けてきたマスコミにも私は責任があると思います。
聞き手:  CO2を出しません。というのは嘘ですよね。
小 出 :  あれも嘘です。
聞き手:  廃炉とか10万年後の保管のことを考えると、普通の火力発電よりも出すと思うのですが。
小 出 :  おっしゃる通りです。私は現在言われている地球温暖化問題の原因がCO2だとは実は思っていないのです。そのことをちゃんと聞いて頂こうと思うと大変時間がかかりますが、仮にCO2が原因だとするならば、原子力が最悪の選択になってしまいます。  
聞き手:  石炭・火力よりも悪いですか。
小 出 :  原子力が遥かに悪いです。原子力を使いますと、核物質生成物を大量に生みだしてしまって、その物質をきちんと管理しようと思うと、
 10万年とか100万年にわたって私たちが作業に取り組まなければいけなくなるのです。
聞き手:  それが一番大きな問題ですよね。
小 出 :  そのために一体どれだけのお金がかかるのか、どれだけの労力がかかるのか。そして、そのためにどれだけのCO2を出してしまうのか。と考えた時に、到底、引き合いません。
聞き手:  空冷とか、水冷とかで冷やす時に、使用済み核燃料棒をね。その循環は石油を炊いてやるのですからね。
小 出 :  空冷をやるのですけれども、自然の冷却ということを期待していて、地面の底に埋めてしまえば、なんとかなるのだろうと。石油も石炭も使わずに、ただ埋めておけば、自然の力で冷やしてくれるだろうと期待をしているのですけれども、そんな期待が成り立つかどうかということを証明してくれる科学がない。
聞き手:  10万年の間に地震は起こりますよね。
小 出 :  もちろん、起こります。何十年、あるいは百年という単位で巨大な地震が次々襲ってくるわけで、10万年、100万年を考えれば、一体、何千回、何万回そういうことに遭遇しなければいけないのか、ということになってしまうわけです。
聞き手:  整理しますと、関西電力は、小出さんや原子力に反対している人を出しただけで圧力をかける。それでテレビ界はその圧力が恐ろしいので、そのCMだけを流していて、そのCMが五重の壁で安全だとかCO2出しませんとか、そういう嘘のCMを流していた。関西電力とメディアがものすごい安全神話を作っていて、この事故があったと。この毎日放送の番組はギャラクシー賞も取ったのですね。そういう意味では、メディアの良心も少し残っている。
小 出 : そうです。
聞き手:  小出さんの就職のことを聞きたいのですが、小出さんは電力中央研究所に就職が内定されていた。ところがそこに就職されなかった。それはなぜなのですか。
小 出 :  内定を取り消されました。なぜか、ということの正確な理由は私は知りません。要するに人事のことですし、先ほどの番組に関しても関西電力がどういう圧力をかけたというのは私は正確な理由は知りませんし、私の内定が取り消されたという正確な理由は私は知りません。
  ただし、私が聞いてきた範囲では、私が当時、女川原子力発電所に反対運動をしていましたので、それが電力中央研究所の知るところになって、私の内定が取り消されたと聞きました。
聞き手:  調査されたということでしょうね。それで、京大原子炉実験所に就職されたということですね。その方がよかったです。
小 出 ここの原子炉実験所は、大変、私の独創性を重んじて下さるとことなので、私としてはこの職場は大変居心地が良かったし、こっちの方がよかった、と言われるとそのとおりだと思います。
聞き手:  私たちにとってよかったです。今日はどうもありがとうございました。
小 出 :  ありがとうございました。  

(原文は「小出さん」となっていますが、ここでは敬称を略しました)


もしも福島原発を「竜巻」や「台風」が襲ったら

 電子版「現代ビジネス」に「緊急警告 もし福島第一原発を竜巻』『台風が襲ったらと題したフライデー10月4日号の記事が掲載されました。

 それによると日本全土が大雨に見舞われた16日の翌朝、福島原発の仮設の地上タンクのいくつかがわずかに傾いていたということです。
 もしも、もっと大きな台風や竜巻が直撃していたら、どんな惨事になったか分かりません。

 別の日には無人クレーンの100mのアームが途中で折れて地上に落下しました。潮風で部材が腐食したためと見られています。
 もしも巨大なアームが竜巻で飛ばされて4号機のタービン建屋を直撃していたら、それこそどんな惨事になったか分かりません。

 まさに福島原発自体が巨大な核爆弾であり、日本はいまそれを懐に抱えている状態と言えます。
 
 以下にその記事を紹介します。
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緊急警告 もし福島第一原発を「竜巻」「台風」が襲ったら
「フライデー」2013年10月4日号より
現代ビジネス-経済の死角 2013年09月28日
 「おい、傾いてないか……」
 台風18号の影響で福島第一原発が1時間に80mmの豪雨にさらされた9月16日の翌朝、汚染水タンクを点検していた40代の作業員は異変に気づき、同僚と顔を見合わせた。
いくつかのタンクが、わずかではあるが傾斜していたのである。
 「すぐに元請け会社の上司に報告しましたが、『そんなはずはない』の一点ばり。まともに取り合ってくれません。再度確認しましたが、やはりタンクは傾いているように見えます。もっと大きな台風や、竜巻が直撃すれば倒壊し、汚染水がまき散らされる可能性さえあった。心底ゾッとしました」

 今回の台風で福島原発の敷地には大量の水が溜まり、東京電力は放射性物質を含む1130tの雨水を、タンク群に設けた漏水防止堰から放出する事態となった。京都大学原子炉実験所の、小出裕章助教が危惧する。

 「福島原発の土壌は、高台から地下水が流れているためもともと脆弱です。しかもタンクの中には、コンクリートの地盤とボルトでつなぎ合わされただけのものもある。再び台風が来て大雨が降り地盤がさらに緩めば、タンクが傾斜してもおかしくない。倒壊する危険性もあるのです。半分のタンクが倒れれば、広島に落ちた原爆の5000倍以上の放射性物質が放出されることになるでしょう」

 福島原発を襲うのは大雨だけではない。埼玉県や群馬県などで9月上旬に発生した、竜巻にも警戒が必要だ。
 「竜巻は積乱雲の活動が活発な9月から10月に、福島のような平地の多い地域で発生します。日本ではF3 (平均風速70~92m/S) までの竜巻しか起きないと言われてきましたが、今年はF4 (平均風速93~116m/S) クラスのものが頻発している。F4だと鉄筋コンクリートの建物でも、基礎が弱ければ根こそぎ飛ばされてしまいます」(気象予報士・森田正光氏)

 福島原発では9月5日にも、作業員の心臓を凍らせるような事故が起きていた。3号機周辺の瓦礫撤去作業をしていた600tの無人クレーンのアーム (約100m) が折れ、落下したのだ。幸い周囲に人はおらず死傷者は出なかったが、「東電からは具体的な説明はなかった」と前出の作業員が振り返る。
 「東電は無人機を、ほとんど点検していません。原因は調査中としていますが、潮風を浴びた部品が錆びてもろくなっているんだと思います」

 同種のクレーンは、他の原子炉建屋近くでも稼働している。巨大竜巻が直撃すれば、こうした重機が飛ばされ凶器となる。米国の原子炉設計者で、エネルギー・アドバイザーのアーニー・ガンダーセン氏はこう指摘する。
 「もっとも危険なのは、使用済みを含め1500本以上の核燃料棒が保管されている4号機です。飛んできた重機などで燃料プールが破損し燃料棒が折れれば、クリプトン85という放射性物質が大量に発生します。クリプトン85はノーブルガスなので、拡散を止めることができない。風の方向によっては、東京まで飛散する可能性があるのです」

 だがこうした天災に対し、東電の対策は心もとない。
 「今回のような台風が起きれば、クレーンにアンカーウェイトという15tの重りをつけ倒れないようにします。タンクなども異常がないか、パトロールして逐次チェックいたします」(広報室)
 東京オリンピックまで、あと7年。フクイチが持つ保証は、どこにもない。
 
 

2013年9月29日日曜日

この冬も電力は十分 原発が動かなくても

 
 電力9社のこの冬の供給余力はすべて3%以上となり、安定供給ができる見通しです。
 この夏も実績において電力供給量が必要量を上回り、問題なく乗り切ることができました。

 原発を稼動させないと電力が不足するという再稼動派の主張にはもはや説得力はありません。
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全地域で電力不足を回避 9社、冬の需給見通し
 東京新聞 2013年9月28日
 沖縄電力を除く電力9社のこの冬の供給余力を示す予備率がいずれも安定供給に最低限必要な3%以上となり、電力不足を回避できる見通しであることが28日、明らかになった。政府は冬の節電期間の数値目標を全地域で見送る方向で検討に入った。この夏と同じく、無理のない範囲で節電への協力を求めるとみられる。

 原発が長期間停止する中、家庭や企業で節電が定着した。電力各社が火力発電所の高稼働率を維持するほか、各社間で相互融通の態勢が確立していることも背景にある。節電目標が見送られれば東日本大震災後、冬では初めてとなる。(共同)
 
 

福島原発は津波ではなく地震で損壊したのでは?

 菅内閣で首相補佐官を務めた馬淵澄夫氏が、福島原発の事故は津波が来襲する前の地震で引き起こされた可能性があることを、集会で明らかにしました。

 福島原発が津波ではなく地震で損壊したという疑いは当初からあり、外国紙はその疑いを伝えましたが、国内メディアは一切報じませんでした。
 発電停止事故に備えて外部から電力を供給するための送電設備もありました。しかしその鉄塔は地震で倒れてしまいバックアップ電源を失ったのが、原子炉を冷却不能にしたそもそもの始まりでした。
 地震時以降の運転データの解析から、海水冷却ポンプが地震の直後に停止し、原子炉内の計器用の細管が破損したことも明らかにされました。
 原子炉建屋の機械室で配管から水が噴出したという運転員の証言を伝えたのは外国紙でした。

 東電や政府が地震による損壊を絶対に認めようとしない理由は、それを認めると原発の耐震性が不足ということになり、再稼動ができなくなるからです。
 
 今回東電が再稼動を申請した柏崎刈羽原発の耐震強度は、地震による横揺れの加速度を従来どおり1209ガルと想定しています。中越沖地震時の実測値として2058ガル、1862ガル、1459ガル等があるにもかかわらずです。
 これは出来上がった装置の耐震性を補強することなど事実上できないからに他なりません。
 
    2013年3月30日「柏崎刈羽原発敷地内の断層について(続報)」
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「原発事故原因、地震か津波か特定されず」民主・馬淵氏
朝日新聞 2013年9月28日
■馬淵澄夫・民主党衆院議員 
 実は今もって、地震で原発に問題が起きたかどうかの確認は取れていないんです。安倍首相が東京電力福島第一原発の5、6号基の廃炉を決定したことによって、原発関係者が胸をなで下ろしているという連絡が、私のところに来ました。なぜか。5号基、6号基の廃炉が決定すれば、IAEA(国際原子力機関)を含めさまざまな調査が行われない。あの福島第一原発の事故は本当に地震によって誘発されたのか。日本政府はすべて津波によるものだと決めています。しかし、まだ事故原因の特定は全くされていないはずです。 

 私は繰り返し、地震による可能性があるのではないかと首相補佐官就任直後から言い続けましたが、黙殺されました。地震によるものだという調査結果が出て基準地震動の見直しを図ったとすれば何が起こるか。日本の原発54基すべて動かなくなる。そのことを避けたいのは原子力関係者の中では根強く残っているのではないか。(都内での集会で)
 
 

原子力被災に「人権」はあるのか?

 原子力学者であり優れた文明評論家でもある武田邦彦教授が、「原子力被災に人権というものはあるのか?」と題するブログを公開しました。

 「国民を被曝から守ることにおいて国は法律に則って正しく対処をしているのか」ということについて、「人権」と「人道」の観点から論じたものです。
 
 以下に紹介します。
(記事中の青字部分をクリックすると音声解説を聞くことができます)
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原子力被災に「人権」というものはあるのか?
武田邦彦 2013年9月28日

 国連組織にでる日本代表の人道人権大使がアフリカの代表に対して「黙れ!(シャラップ)」と二度、叫んで国際的な顰蹙を買い、先日、解任(辞任)された。
 「人道人権」という言葉と、「黙れ!」という言葉はまったく相反する。そういえば福島事故の後、被曝を心配する東京のお母さんに、当時の石原知事が「黙れっ!」と叫んだ。野蛮な知事だった。
 日本の人道人権大使が国際的な顰蹙を買ったのは、個人の資質の問題もあるけれど、やはりその底には日本社会が人道人権のある社会ではないことにあると思う。

 「国あって国民あり」という意識から、「国民あって国あり」という感覚にならないとなかなか人道人権というのは育たないものである。福島事故以来、被曝で苦しむ国民に対して、主としてマスコミや知識人から集中的な「反人道、反人権」の動きがあった。

 次のことは日本国民の人権の範囲内だろうか? それとも個人的なワガママなのだろうか?
1) 福島県および近隣に住む人が「法令の基準となっている一般人1年1ミリシーベルトの被曝を避けるために、政府・自治体は具体的に回避できる手段を提供して欲しい」と求めること、
2) 一般人で通常時の被曝基準1年1ミリシーベルトの被曝を強要される地域、および一般人で非常時の被曝上限1年5ミリシーベルト(日本国内閣府安全委員会決定)を超える地域においては被爆を避けるための具体的措置に関する便宜、費用の弁済をすること、
3) 1年1ミリシーベルト以上の被曝をして将来、疾病にかかったら、その保証を受けるために被曝の証明書を発行すること、
4) 法令で定められた土壌汚染の上限(1平方メートル4万ベクレル)を超える土地に対して、汚染した東電の方に放射性物質の除去を求めること、
5) 一般人の食品安全(上限1キロ40ベクレル)、飲料水安全(上限1リットル10ベクレル)を超えるものに接しないように自治体や関係省庁に求めること、また仮に供給されたもので被曝した場合、補償を受けられること、
6) 瓦礫その他の物品で、1キロ100ベクレルを超えるものについては、法令に基づき、それを取り扱い移動した人について法令に基づき禁固刑を求めること。

 これらのことは日本国の法律および法令の基準となっているものを国民が求めるものであり、もしこのような法令の基準も守ってもらえないということになると、「日本における人権」は存在しないと言っても良いだろう
 そして、ほぼどれ一つ、現実になっていない政府、自治体、専門家、マスメディアは法令を遵守することを求める国民に対して、実に冷たい態度で臨んでいる

 次に「人道」であるが、次の事は日本のような人道人権を尊重すると世界に呼び掛けているところで起こって良いことだろうか?
1) 事故直後、公共給水が汚染され、赤ちゃんにミルクを解く水を失ったお母さんに対して水を供給しなかった、
2) 子どもの健康を心配する(誰が何を心配するかは本人の自由であり、被爆が危険であるということは繰り返し政府やマスコミが伝えていた)親が、日本国原子力安全委員会が決めた「事故時の上限5ミリシーベルト」に対して、外国のNPOであるICRPが決めた20ミリシーベルトに対して不安に思うことを無視したこと、
3) 放射性を帯びた瓦礫や福島で汚染された製品が全国に移動することに不安を感じる人に「黙れっ!」と強圧的に出たこと。

 事故後、多くの方からメールをいただいたが、たびたび、「決して名前を出さないでください」という注意があった。現代の日本社会は正しく法令を守ろうとする人には人権はなく、将来、疾病が予想されるものを「大丈夫」と言い、実害のあるものを「風評被害」と言う人を「正しい」とする実に陰湿な社会のように思う

 このようなことは結局、国の発展を阻害するということが心の底から判っていないと、人道人権を論じることはできず、人の希望が多様であることにも気がつかないだろう
(平成25年9月22日 執筆
 
 

2013年9月28日土曜日

福島汚染水処理対策委が潜在リスクをリストアップ

 政府の組織した(東電福島)汚染水処理対策委員会が、27日、今後起こり得る事故のリスク(潜在リスク)と予防策・追加対策をまとめました。

 これまではトラブルが発生するたびに応急的に対処するということの繰り返しであったので、まだ表面化していない潜在リスクを予めリストアップして、国内外から解決のための技術を募ろうとするものです。
 今回まとめたリスクと予防・追加策多くは国内外からの「技術公募」を前提としているので、実現性については未知数ですが、起こり得る可能性を予知しておくことはものごとの基本です。

 現時点で把握できていないリスクも判明すれば盛り込むことにして、取り組むべき対策の優先順位や工程などを議論し年内には仕上げる予定ということです。
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福島汚染水:潜在リスク 原子炉建屋からの漏れなど列挙
毎日新聞 2013年09月27日
 東京電力福島第1原発の汚染水問題で、政府の汚染水処理対策委員会(委員長・大西有三京都大名誉教授)は27日、今後起こりうる事故のリスクと予防・追加策をまとめた。現在までに表面化していない「潜在リスク」としては、溶けた核燃料が残ったままの原子炉建屋からの汚染水漏れなどを挙げている。国内外からの解決のための技術を募った上で、年内にも対策案の全容をまとめる。

 汚染水をめぐっては、今春以降に地下貯水槽や貯蔵タンクからの漏れ、海洋流出などのトラブルが相次いで発生した。今回の方針は、こうした問題が起きるたびに対処するという後手に回ってきた対応を反省し、まとめられた。

 潜在リスクでは、原子炉建屋からの汚染水漏れのほかに、汚染水の移送配管からの漏れ▽放射性セシウム除去装置からの漏れ▽セシウム除去後に生じる放射性廃棄物の存在▽地震や竜巻などの自然災害による汚染水保管設備の破損−−などを列挙。対策として、1〜4号機の建屋から生じる汚染水を浄化装置に直接移送する▽壊れた建屋に地下水が流れ込み汚染水が1日400トン増加しているため、建屋外壁の貫通部を止水する▽防潮堤を新設する−−などを挙げている。

 一方、すでに問題となっている汚染水の海洋流出や貯蔵タンクの漏れについては、現状の対策が失敗した場合に備え、港湾内の海水に含まれる放射性物質の除去技術の開発や、貯蔵タンクから微少な漏れを察知するために設置エリアの地表の除染、設置を計画中の地中の土を凍らせて建屋周りに壁を造る凍土遮水壁以外の「追加的な遮水壁」の検討方針も明らかにした。

 今回まとめたリスクと予防・追加策は「実現性は考慮していない」(対策委)とし、多くは国内外からの「技術公募」を前提としていて、実現性は未知数だ。このため、対策委は、取り組むべき対策の優先順位や工程などを議論した上で年内にも改めて整理するほか、現時点で把握できていないリスクも、判明すれば盛り込む方針だ。【鳥井真平】
 
 

東電、柏崎刈羽原発の安全審査を申請

 東電は27日、柏崎刈羽原発 6、7号機 再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査(安全審査)を原子力規制委員会に申請しました
 沸騰水型原子炉では初めての申請となります。

 これまで申請された原発は全て加圧水型原子炉と呼ばれるもので、原子炉で発生した熱水を蒸気発生器に通し、そこで二次側に発生した放射能を含まない蒸気でタービンを廻して発電するタイプです。
 それに対して柏崎刈羽原発は沸騰水型原子炉と呼ばれ、福島第1原発と同様に濃厚な放射能を含む蒸気で直接タービンを廻して発電するために、熱効率は高いのですが万一タービン室などで蒸気が漏れると建屋内が放射能で汚染されることになります。

 申請書は6600ページにも及ぶそうですが、事故後に明らかになった東電の体たらくを見るにつけても、この膨大さは何かこけおどしに聞こえるだけです。安全は書類上だけのことではないのか、果たして事故の再発防止を保障できる中身になっているのかと、信頼感も持てなければ安心感も生まれません。
 申請書類などは出来合いの書類を添付資料として合冊すればいくらでも厚くすることができます。どこをどのように安全側に改善したのか、どこを強度的に補強したのか、どのようにして事故の再発を防止しようとしているのかが肝心で、そこが薄弱であれば話になりません。
 チャチなフィルターを地下に増設することを、深層(多重)防護策だなどと言い立てるようでは勿論ダメです。

 申請に対しては原子力規制委は「最優先」で10月から早速審査に入るということです。他の物件を差し置いてということなので、正に国策である東電原発の再稼動に向けて全体が動き出したという感じです。

 東電は6、7号機以外について安全審査の準備進めており、準備がい次第 申請手続きに入るということです
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柏崎刈羽の安全審査申請=東電、早期再稼働目指す-6・7号機、沸騰水型初・規制委
時事通信 2013年9月27日
 2011年3月の福島第1原発事故後、東電が原発再稼働に向けた申請を行ったのは初めて。
 記者会見した東電の姉川尚史常務は「福島事故を受け、深層(多重)防護を深めた。重大事故対策では反省を一つ一つ盛り込んだ」と述べた。
 7月に始まった安全審査では、既に北海道、関西、四国、九州の4電力が6原発12基を申請している。いずれも「加圧水型」の原子炉で、福島第1原発や柏崎刈羽原発のような「沸騰水型」の審査は初となる。

6・7号機以外も申請準備=柏崎刈羽原発の安全審査-東電
時事通信 2013年9月27日
 東京電力の広瀬直己社長は27日午前、経済産業省に茂木敏充経産相を訪ね、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働の前提となる安全審査を原子力規制委員会に申請したことを報告した。広瀬社長は会談後、記者団に対し、同原発の6、7号機以外の扱いについて「当然(安全審査の)準備は進めており、整ったら手続きをしていかないといけない」と述べ、今後申請を目指す方針を明らかにした。
 茂木経産相は会談で、「審査に適切に対応すると同時に、より安全性を高める努力を続けてほしい」と広瀬社長に要請。さらに「今後も立地自治体の理解を得つつ進めてほしい」と述べ、再稼働に向けて新潟県などとの意思疎通に努めるよう求めた。


「再稼働の資格ない」 東電、批判の中審査申請
東京新聞 2013年9月27日
 「再稼働の資格はない」。原発反対派ら批判の声が上がる中、東京電力が二十七日午前、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働審査を原子力規制委員会に申請した。書類を提出した東電の姉川尚史(たかふみ)常務は「(申請を通じ)事故から得た知見を社会、世界と共有するのはわれわれの義務だ」と強調した。

 東京・六本木の規制委があるビル前の路上では、朝から反対派が「東電は申請するな」「再稼働審査どころじゃない」と横断幕を掲げた。拡声器で「安全第一なら、(規制委は)申請を受け付けるべきではない」と訴えた。
 千葉市美浜区の小川正治(よしはる)さん(68)は「福島の事故処理はいいかげんなのに、再稼働には大金を投じている。認めるわけにいかない」と語った。
 一方、規制委では姉川常務が申請書類を提出。「福島第一原発の事故の反省から始まり、対策を取りまとめた。それがどの程度(の水準)にあるか確認していただく」「事故当事者なので教訓は思い知っている。その知見を共有する」と語った。
 東電の建前では、今回の申請は「安全性のチェックのためで、再稼働は別の話」。姉川常務も「再稼働」の言葉は使わなかった。