2013年9月12日木曜日

原発事故 誠実な捜査を尽くしたのか

 福島原発事故で、検察当局は政府・東京電力幹部らを全員不起訴としました
 
 原発事故については事故調も人災であると結論づけました。それなのにあれだけの甚大な被害が出て今もなお拡大する方向にあるなかで、関係者の誰一人の責任を問うこともなく終わりました。
 本当に人災の側面はなかったのでしょうか。
 本当に誠実な捜査を尽くしたのでしょうか。そういえる自信があるのでしょうか。

 告発した住民グループの代表は「検察は強制捜査もせず、任意で提出された資料や学者の意見だけで判断した。これでは不起訴になるのは当然で、名ばかり捜査としか言いようがない」と批判しました。
 検察はすべての証拠を調べることもしないで不起訴を決めました。
 これでは死者は浮かばれないし被災者たちの心も晴れません。

 以下に東京新聞の社説を紹介します。
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社説) 原発事故不起訴 誠実な捜査尽くしたか
東京新聞 2013年9月11日
 福島第一原発の事故で、検察当局は東京電力幹部らを全員、不起訴とした。巨大地震は想定外と判断した結果だろう。だが、本当に人災の側面はなかったか。誠実な捜査が尽くされたか問われよう。
 子どもからお年寄りまで、約一万四千人もの原発事故の被災者らが、告訴・告発した前代未聞の事案である。相手は当時の東電幹部や原子力安全委員会、政府関係者ら計四十二人である。
 住民の避難を遅らせ、多数の住民を被ばくさせたり、病院から避難した入院患者らを死亡させた。だから、業務上過失致死傷罪などの罪に当たると訴えていた。
 だが、検察当局は東日本大震災に伴う原発事故は、当時の知見では予見することができず、同時に個人の刑事責任を問うことはできないとの結論に至った。東電関係者ばかりでなく、地震や津波の専門家などからも聞き取りを積み重ねた判断だった。

 確かに刑事立件には高いハードルがあると、当初から言われていた。(1)事故を予見できたか(2)原発事故による被害といえるか(3)責任を特定の個人に負わせられるか-。それらを立証する必要があるからだ。今回の不起訴判断を踏まえたうえで、指摘したいのは、検察当局が誠実で精緻な捜査を尽くしたかどうかだ。
 国会事故調査委員会は「事故は人災だ」と明言した。二〇〇八年に東電自身が津波の高さを最大で一五・七メートルと試算していたのがポイントだ。にもかかわらず、福島第一原発の想定津波の高さは、わずか六メートルにすぎない。
 大震災前に予測されていた地震はマグニチュード(M)8・3規模で、そのレベルでも一〇メートルを超える津波が来ることは、容易に想定できたのではないか。しかし、東電は何の対策もとらなかった。これを見逃していいのか。
 結果的に原発をのみこんだ津波は一五・五メートルで、建屋は水につかり、全電源が失われた。電源喪失の対策も、いくつも手があったはずだ。外部電源の耐震性を強化したり、非常用ディーゼル発電機とバッテリーを分散して、高い場所に設置するなどの防護措置だ。これも東電は放置していた。

 検察当局の「予見可能性がない」とする立場には疑問が残る。そもそも、検察は東電を強制捜査していない。すべての証拠を収集し、関係資料を押収すべきでなかったか。「天災」の予断を持っていたなら、被災者の怒りを買う。