2013年9月18日水曜日

各国は汚染水漏れの放置責任を追及-IAEA説明会

 16日ウィーンでの国際原子力機関(IAEA)年次総会で、山本一太科学技術担当相は、福島原発の汚染水漏れについて「今後は政府が責任を持って抜本解決に向け取り組む」決意を表明し、「国際社会への正しい情報発信を強化する」と約束しました。
 
 そして何故か山本氏も安倍首相と同じように、福島の状況について、汚染水の影響は原発港湾内の範囲にとどまっており、日本では事故後、水や食品に世界最高水準の厳しい基準を採用いているなどと説明しました。
 以前に書いたことの繰り返しになりますが、1kg当たり99ベクレルの食材でも平然と食卓に出されるというのがいまの日本の基準です。放射性廃棄物(1kgあたり100ベクレル以上)と同等のものが食べ物とされる日本の基準が、世界一厳しいなどといえる筈がありません。

 その一方同刻に日本政府が主催した福島原発汚染水漏れ問題に関する説明会で100人以上集まった各国の専門家から今後の対策よりもむしろ汚染水漏れの深刻化を招いた放置責任規制当局のあり方などを問う厳しい指摘が相次ぎました
 そして日本政府側が「第一義的な責任は東京電力にあり、政府官庁はサポーターの立場」、「東電には資金もアイデアもなく、2年間も良くない状況が続いてしまった」などと苦し紛れの責任転嫁をすると、会場から失笑が漏れたということです
 
  以下に年次総会と16日夕の日本政府の説明会の記事を紹介します。         ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
政府の責任で対処=山本科技相、汚染水問題で決意-IAEA総会
時事通信 2013年9月17日
【ウィーン時事】国際原子力機関(IAEA)の年次総会が16日、ウィーンの本部で5日間の日程で始まった。日本を代表して出席した山本一太科学技術担当相は、国際的に懸念が広がる東京電力福島第1原発の汚染水漏れについて「抜本解決に向け、政府が責任を持って取り組む」と決意を表明した。また「国際社会への正しい情報発信を強化する」と約束した。

 山本氏は演説で「汚染水対策は最も緊急性が高い課題」との認識を表明。政府が決定した総額470億円の国費を投入する汚染水対策の基本方針を紹介した。
 また、汚染水の影響は福島第1原発の港湾内の0.3平方キロの範囲にとどまっており「湾外と海水の放射線量は飲料水に関する世界保健機関(WHO)の指針を下回っている」と強調。「日本では事故後、水や食品に世界最高水準の厳しい基準を採用しており、安全性は確保されている」と理解を求めた。
 山本氏は「廃炉や汚染水への取り組みは世界にも例のない作業の連続。IAEAをはじめとする世界の技術や英知を結集し、解決に取り組む体制の整備が重要」と協力を訴えた。

福島汚染水:各国から厳しい指摘 IAEA説明会
毎日新聞 2013年9月17日
【ウィーン樋口直樹】 国際原子力機関(IAEA)総会の関連行事として16日夕、ウィーンで開催された日本政府主催の福島第1原発汚染水漏れ問題に関する説明会で、各国の専門家から抜本対策の遅れや規制当局のあり方などを問う厳しい指摘が相次いだ。第一義的な責任は東京電力にあると繰り返す日本側の説明からは「政府が責任をもって取り組む」(山本一太科学技術担当相)との意気込みが伝わらず、責任の所在のあいまいさを印象付けた。

 説明会には、原子力政策を推進する経済産業省と、同省から独立した原子力規制委員会、廃炉に関する研究開発を行う国際廃炉研究開発機構などの担当者が出席。汚染水漏れの現状と、凍土壁の設置や浄化装置の増設などによる政府主導の解決策について、会場を埋めた100人以上の専門家らに説明した。

 だが、会場からの質問は今後の対策よりもむしろ、汚染水漏れの深刻化を招いた責任を問うものだった。スロベニアの規制当局者は「汚染水問題は原発事故直後から予想できた。なぜ2年以上もたった今まで持続的な解決策を見いだせなかったのか」と、厳しい口調で切り出した。
 これに対し、廃炉機構の担当者は、汚染水の漏えい部分の発見と修理に手間取っている▽原子炉建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げて海に放出する計画が漁業関係者らの反対で困難になっている−−と説明。
 経産省の担当者が「法的な責任は東京電力にあり、我々はサポーターの立場。東電には資金もアイデアもなく、2年間も良くない状況が続いてしまった」と釈明すると、会場から「責任転嫁ではないか」との失笑が漏れた。

 一方、原子力規制委員会のあり方にも疑問の声が上がった。2007年に調査団を率いて訪日した仏原発安全当局者は「規制委員会の技術顧問が、問題解決を図るため東京電力にアドバイスするのは、原子力安全の責任分担をあいまいにするものだ」として強い懸念を表明。規制委員会側は「規制当局は電力事業者と一線を画すべきだが、福島第1原発事故に限り、問題の拡大を防ぐために行っている」と説明した