2013年9月3日火曜日

大飯原発活断層でない 規制委専門家が一致

 原子力規制委は大飯原発「F-6」断層が活断層かどうかを巡って、これまで専門家4人とともに調査を続けてきましたが、2日、6回目の評価会議で、「断層は最近動いた跡は見つからず、将来も動く可能性のある活断層ではない」という見解で一致しました。
 専門家が「活断層ではない」という見解で一致したのは大飯原発が初めてです。

 これで大飯原発は稼動申請に対する安全審査に入ることになりますが、地下に活断層がなければ原発は安全というようなものでは勿論なく、最低の条件をクリアしたということに過ぎません
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大飯原発「活断層ではない」で一致
NHK NEWS WEB 2013年9月2日
国内で唯一運転している福井県の大飯原子力発電所の断層を専門家が評価する原子力規制委員会の会議が開かれ、「活断層ではない」という見解で一致しました。
規制委員会が断層の調査をした原発のうち「活断層ではない」という見解で一致したのは、大飯原発が初めてです。

大飯原発では、敷地内を南北に走る「F-6」という断層が活断層かどうかを巡って、原子力規制委員会が専門家4人とともに調査を続けています。
2日、6回目の評価会議が開かれ、関西電力は「F-6断層やほかの断層は古い時代に動いたもので、活断層ではない」と説明しました。
専門家からは「断層がどう続くのかを確認できているのか」といった指摘が出たものの、「断層は最近動いた跡は見つからず、将来も動く可能性のある活断層ではない」という見解で一致しました。
規制委員会の島崎邦彦委員は「一定の方向性が出せたので、次回は報告書の案を議論したい」と述べ、近く報告書をまとめる考えを示しました。
規制委員会は、4か所の原発で断層を調査し、福井県の敦賀原発について2号機の真下を走る断層を活断層だと判断していますが、専門家が「活断層ではない」という見解で一致したのは大飯原発が初めてです。
大飯原発の2基について関西電力は、停止後の運転再開を目指し安全審査の申請をしていて、規制委員会は「活断層ではない」と判断した場合、審査に入ることになります。

大飯原発の断層調査巡る経緯
原子力規制委員会は専門家と共に、去年2度、大飯原発で現地調査を行いましたが、専門家の間で、F-6断層が「活断層」か「地滑り」かで意見が分かれたため、関西電力に3号機近くに新たな溝を掘るよう指示していました。
F-6断層は、真上に原子炉を冷やす海水を取り込む重要な配管があると指摘され、活断層だと判断されると、3号機と4号機は停止を求められる可能性があります。
このため関西電力は、3号機の南側に長さおよそ70メートル深さおよそ40メートルの溝を掘ったうえで調査をし、ことし7月、「活断層ではない」という見解を改めて示していました。
原子力規制委員会は、大飯原発を含む全国6つの原発で、敷地内を走る断層が活断層かどうかを専門家と共に調査することになっていて、これまでに4つで調査を行っています。
このうち福井県にある日本原子力発電の敦賀原発について、規制委員会はことし5月、「2号機の真下を走る断層は活断層だ」という判断をし、2号機は運転できず廃炉になる可能性が出てきました。
これに対し日本原子力発電は「活断層ではない」という追加調査の結果を提出し、規制委員会は現在、対応を検討しています。
また、規制委員会は専門家と共に、青森県にある東通原発についてはことし2月、「敷地内の断層の多くが活断層の可能性が高い」とする報告書の案を示し、3日から2度目の調査に入るほか、福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」については、ことし7月に現地調査を行いました。
残る福井県の美浜原発と石川県の志賀原発については、調査の予定は決まっていません。

おおい町長「一歩前進と安堵」
大飯原子力発電所の断層が「活断層ではない」という見解で一致したことついて、地元福井県おおい町の時岡忍町長は「専門家の議論をずっと注視してきたが、『活断層ではない』という見解を聞いて正直に安堵(あんど)している。運転再開に向けて一歩前進したと受け止めている」と述べました。
時岡町長は、大飯原発3号機が定期検査で停止することについて「福島第一原発の事故のあと全国で初めて運転を再開させ、去年の夏と冬の電力を供給できたことは地元としての責任を果たせたと思う。規制委員会は安全性を確認できしだい、大飯原発の運転再開を認めてほしい」と述べました。

関西電力「引き続き真摯に」
福井県の大飯原発の断層について、原子力規制委員会の会議で「活断層ではない」という見解で一致したことについて、関西電力は「敷地内の断層が活断層ではないということをこれまで十分に説明してきた。新しい規制基準に基づく適合性の審査も含め、引き続き真摯(しんし)に対応していきたい」とコメントしています。


大飯原発:再稼働なお不透明 地下構造の調査甘く
毎日新聞 2013年9月2日
 関西電力大飯原発(福井県)の重要施設を横切る断層「F−6破砕帯」が活断層との疑いが指摘されて1年余り。原子力規制委員会の有識者調査団は「シロ」判定の見解で一致した。保留されていた3、4号機の再稼働に向けた審査が再開する見通しとなった一方で、関電が目指す今冬の再稼働が実現できるかは不透明な状況が続く。

 「最大のトゲだった活断層問題をやっとクリアできる見通しがついた。後は、一日も早く規制基準による安全審査をスタートさせてほしい」。2日に規制委の調査団が「シロ判定」で一致したことを受け、関西電力幹部は語った。

 しかし大飯3、4号機の安全審査が再開しても、規制基準による新たな地震・津波対策を要求されるのは確実だ。また、審査に合格しても、再稼働のためには周辺自治体の同意を得る必要がある。
 規制基準は、地震・津波対策強化の一環として、敷地内の「未知の地下構造」をあぶり出すための調査を初めて義務付けた。東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)では中越沖地震(2007年)の際、中部電力浜岡原発(静岡県)では駿河湾地震(09年)で、地下の独特な構造によって、想定外の揺れが観測されたためだ。

 大飯3、4号機は国内で唯一稼働していた原発のため、規制委は4月から、施設の安全性を確認する法定外の「事前確認」を実施した。6月に「安全上重要な問題はない」として9月までの稼働を認めた。しかし、事前確認の内容をまとめた報告書では関電の地下構造の分析について「詳細に把握できているとは言い難い」とし、調査不足を指摘。今後の安全審査で、こうした不備を再び指摘される可能性がある。
 関電の「想定不足」は、大飯3、4号機とともに再稼働申請された高浜原発3、4号機(福井県)の安全審査の経過でも露呈している。関電は、津波の最大の高さを想定する「基準津波」について当初「2.6メートル」としていたが、規制委から福井県の津波想定に基づいて再計算するように求められ、「3.99メートル」に上方修正した。

 関電のこうした姿勢を、規制委の田中俊一委員長は「いいかげんな申請でも何とかしのげると思っている。規制委はそんな甘ちゃんじゃない」と問題視してきた。規制委事務局の原子力規制庁の小林勝・安全規制管理官も2日の記者会見で、「今回は、敷地内にある断層の活動性を審査したが、今後の安全審査は別だ」と強調した
 さらに、審査合格後は周辺自治体の同意が得られるかどうかも再稼働のカギになる。大飯3、4号機が昨年7月に稼働した際、政府の安全確認から地元自治体の同意を得るまでに約2カ月かかった。政府は「規制委が安全と判断した原発の再稼働は、自治体の理解が得られるよう最大限努力する」としているが、政府の誰が、どの場面で地元説明に乗り出すかは白紙のままだ。【岡田英、吉田卓矢、中西拓司】

◇3号機停止作業…定期検査 関電、冬の受給懸念
 規制委の有識者調査団が大飯3、4号機の活断層について「シロ認定」をした2日、関電は3号機について機器を保守点検する定期検査を実施するため、原子炉を停止する作業に入った。午後6時19分には原子炉の出力が不均一となって警報が点灯したものの間もなく正常な状態に戻った。4号機も15日に定期検査で停止する予定だ。定期検査期間は約3カ月。約1年2カ月ぶりに国内に50基ある原発は稼働ゼロになる。

 シロ認定を受け再稼働へ一歩前進した大飯3、4号機だが、規制委の安全審査は半年程度かかるとされる。このため、暖房で電力使用が増える今冬には間に合わない公算が大きい。原発ゼロの状態で冬を迎えれば、関電は、大飯2基の計236万キロワットに加え、夜間にくみ上げた水を昼間に放流して発電する「揚水発電」分の200万キロワット程度の出力が失われるとしており、電力需給が厳しくなる可能性が高まる。
 さらに、高浜原発3、4号機(福井県、出力計174万キロワット)も再稼働を申請しているが、津波を防ぐための新しい防潮堤建設を求められているなど審査の長期化は確実だ。

 原発停止に伴う火力発電用の燃料費増大で、関電は2013年3月期まで2期連続の巨額赤字を計上している。仮に大飯、高浜両原発が年度内に再稼働できなければ、「黒字化は非常に厳しい」(八木誠社長)ため、3期連続の赤字は避けられそうにない。【鈴木一也、松野和生】