2013年9月9日月曜日

首相の回答は間違いだらけ IOC委員の質問に

 安倍首相は、IOC総会のプレゼンテーションで福島原発は「コントロール下にある」と発言しました。
 そしてIOC委員からその根拠を問われると、「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」、「日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準だ」と答えました。

 しかし原発の汚染水が仕切りのない原発の港湾内に留まっている筈はなく、潮の満ち干や海流により「港湾内の海水の44%が日で湾外と入れ替わると東京海洋大の神田教授推定しています
 そもそも水には濃度が均一になるように混じり合おうとする性質があります。首相の発言はそうした常識にも合致しません。

 また東電と国は事故直後の段階で、発電所地下には阿武隈山地からの地下水が流れていて、沿岸から10キロの沖合(近海漁業エリア)で海に湧き出ていることも認識していました。首相にはそういう認識もなかったようです。

 それから主食の米をはじめ、肉類、魚、野菜類などの食品の安全基準100ベクレル/kgは、本来であれば低レベル放射性廃棄物に相当するレベルであり、とても世界一安全な基準などと呼べるものではありません。しかも検査の結果100ベクレル以下であると、原則としてその数値を公表しないので、国民は何ベクレルの食品であるかを知らないままに安全だとして食べさせられているのが実情です。

 どうも悪意を持ってウソをついたということではないようなのですが、一国の首相がここまで認識がずれているのは大変な問題で、話になりません。
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首相強弁「汚染水問題ない」 IOC委員質問に回答 実際は外洋漏えいも
東京新聞 2013年9月8日 朝刊
 二〇二〇年夏季五輪の開催都市を決めるIOC総会で、安倍晋三首相は東京電力福島第一原発の汚染水漏えい問題について、「まったく問題はない。汚染水の影響は、港湾内で完全にブロックされている」と強調した。 

 安倍首相はプレゼンテーションで「東京は世界で最も安全な都市の一つ」とアピール。福島第一原発事故について「状況はコントロールされている。東京にダメージを与えることは許さない」とした。この発言に対し、IOC委員が質疑応答で、東京に影響がない根拠を尋ねた。
 首相は「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と断言。近海のモニタリングの結果、「数値は最大でも世界保健機関(WHO)の水質ガイドラインの五百分の一。日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準だ」とアピールした。
 だが、福島第一原発では毎日汚染水を含む大量の地下水が漏えいしている。先月には地上タンクから約三百トンの処理水が漏出。外洋につながる排水溝に沿って、処理水と同じ特徴を示す高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む水が確認され、外洋に漏れた可能性が極めて高い。港湾内の水についても、東電は、外洋と完全にブロックされた状態ではなく、水が行き来していると説明している。
 首相は「日本のどの地域でもこの基準(食品や水の安全基準)の百分の一であり、健康問題については、これまでも今も将来もまったく問題ないことを約束する」とし「抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」と強調した。

 プレゼンテーションを終えた安倍首相は、報道陣に「汚染水については完全にブロックされていると伝わったと思う。(汚染水問題は)数日前から私の口からはっきり伝えようと思った」と話した。
 
 
汚染水めぐる首相発言に批判の声 福島の漁業者ら「あきれた」
東京新聞 2013年9月8日
 「状況はコントロールされている」。安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京電力福島第1原発事故の汚染水漏れについて、こう明言した。しかし、福島の漁業関係者や識者らからは「あきれた」「違和感がある」と批判や疑問の声が上がった。「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」とも安倍首相は説明した。だが、政府は1日300トンの汚染水が海に染み出していると試算。地上タンクからの漏えいでは、排水溝を通じて外洋(港湾外)に流れ出た可能性が高いとみられる。 (共同)


福島第一湾内 汚染水流出継続か 東京海洋大教授が試算
東京新聞 2013年3月24日
 東京電力福島第一原発の港湾内で海水の放射性セシウムの濃度が下がりにくい状態が続いていることに関し、汚染水の海への流出が止まったとされる二〇一一年六月からの約一年四カ月間に、計約一七兆ベクレルの放射性セシウムを含む汚染水が海に流れ込んだ恐れがあるとの試算を、東京海洋大の神田穣太(じょうた)教授がまとめた。
 東電は、一一年四月に一週間で意図的に海に放出した汚染水に含まれる放射性物質の総量を、約一五〇〇億ベクレルと推計しているが、その百倍以上に当たる。
 神田教授は「現在も地下水や配管を通じて流出が続いている可能性がある。すぐに調査すべきだ」と指摘。これに対し東電は「一一年六月以降、大規模な汚染水の流出はない」とした上で「放射性物質を拡散させない対策をしているため、港湾内の濃度が下がらないのでは」と反論している。
 神田教授によると、港湾内の放射性セシウム137の濃度は、一一年六月~一二年三月にかけて下がったが、一二年四月以降は下落傾向が鈍くなった。
 東電が発表した一一年四月のデータを基に、港湾内の海水の44%が一日で湾外と入れ替わると推定一一年六月一日~一二年九月三十日の放射性セシウム濃度になるには、計約一七兆一〇〇〇億ベクレルが新たに流出したことになるとした。一日当たり八一億~九三二億ベクレルとなる。