2013年10月10日木曜日

産経もあきれる福島現場のミス

 読売新聞とともに原発の再稼動を社是としている産経新聞が、9日、「ミス連発でついに被曝」と題する記事を載せました。
 事故は、福島原発で淡水化装置の配管の接続部を作業員が誤って外したために、現場にいた作業員11人のうち6人が、高濃度の汚染水を浴びたというものです。
 
 汚染のレベルは、ストロンチウム90などベータ線を含む放射性物質が1リットル当たり3400万ベクレル、セシウム137などガンマ線を含む放射性物質が同1万3000ベクレルと高いもので、漏水した量も7トンと膨大ですが、幸いに淡水化装置周りの堰内に留まっているということです。

 こうした単純なミスが繰り返し起きていることについて、同記事は、「下請け作業員は被曝恐怖を抱えながら、危険で過酷な環境に長い間さらされ賃金も低く危険手当われていない。これでは士気が低下するのもやむを得ないし、それは東電の社員にも及んでいる。その結果単純ミス日々拡散しているようにみえる」と伝えています。
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ミス連発でついに被曝 恐怖抱える作業員
産経新聞 2013年10月9日
 相次ぐ単純なミスが、ついに作業員の被曝(ひばく)という事態を招いた。9日、東京電力福島第1原発の淡水化装置で起きた汚染水漏れ。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「ばかげたようなミス」と表現した上で、原因に現場の士気の低下があることを指摘。規制委は東電に対応強化を求めた報告書の提出を義務付けており、内容次第では柏崎刈羽原発(新潟県)の安全審査にも影響することを示唆している。

 田中委員長は9日午後の定例会見で、「士気の低下は、ケアレス(注意不足)ミスにつながる。作業環境がいい場合は、ばかげたようなミスが少なくなる。東電は下請けに任せっぱなしになっているのではないか。積極的に関わらなくてはいけない」と強調した。

 福島第1原発では約1000人の東電の社員のほか、「協力企業」といわれる下請けの作業員が毎日約2000人働く。その大半が全国からの出稼ぎで、原発作業の初心者。日給は平均1万5000円ほどといわれ、バスで約40分間かかる対応拠点「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)のプレハブ施設などで寝泊まりする。

 原発作業員から相談を受け付けている全国労働者安全衛生センター連絡会議(東京)の担当者は「被曝するかもという恐怖を抱えながら、危険で過酷な環境に長い間さらされている。賃金も年々ダウンしているだけでなく危険手当の不払いも起きており、現場で士気が低下するのもやむを得ない」と理解を示す。
 現場の士気低下は、下請け作業員だけでなく東電の社員にも及んでいる。結果、単純ミスは日々拡散しているようにみえる。

 9月27日には、汚染水処理の“切り札”とされる多核種除去装置(ALPS)にゴム製のシートを置き忘れて運転が停止。今月1日には地上タンク周辺の堰(せき)にたまった雨水をポンプで移送中、間違ったタンクにつなげて約5トンがあふれるミスがあった。
 翌2日にも、傾斜地に設置された地上タンクに容量を超えて雨水を移送し、約430リットルの汚染水が漏れ、一部が外海に流れ出た。

 こうした事態を受け、田中委員長は7日の参院経済産業委員会の閉会中審査で「福島の状況は国民が納得できる程度の落ち着きがない。柏崎刈羽原発をどうするかは慎重に検討する」と発言。11日までに提出される東電のミス撲滅の報告書が判断材料になるとみられる。(原子力取材班)

【用語解説】淡水化装置
 福島第1原発の1~4号機建屋にたまる汚染水には、東日本大震災の津波と事故直後の炉心への海水注入による塩分が含まれている。塩分は機器の腐食を進めるため、汚染水を再利用して1~3号機の溶融燃料を冷却する循環注水ルート上に、淡水化装置を設置して塩分を除去している。水以外の不純物を通さない逆浸透膜を用いた方式と、蒸発濃縮方式の2種類が稼働している。