2013年10月13日日曜日

九州電力川内原発で総合防災訓練 

 かつてある東大教授は、原発が重大事故を起す確率は1億年に1回だと公言していましたが、日本では稼動後40年足らずのうちに3基もが過酷事故を起しました。
 原発の過酷事故は今後も世界中で少なくとも20年に1回は起きるだろうと言われています。従って原発からの避難訓練を行うことには、極めて実践的な意味があります。

 11日と12日、福島原発の事故後初めてとなる原子力防災訓練が、鹿児島県の川内原発とその地元で行われました。この訓練には省庁や自治体など約130の関係機関と住民およそ3300人が参加し、複数の自治体をまたぐ広域避難訓練や、自衛隊ヘリなどを使って離島の住民を移送する訓練などが行われました。

 今回は従来の訓練内容を大幅に改め、詳細なシナリオを事前に知らせないで行うという現実的な訓練にした結果、救急車の到着が40分ほど遅れたり、住民たちが避難用のマイクロバスに乗りこんだものの、先導のパトカーが来なくて20分ほど待たされるなどの混乱もありました。

 2日目の12日は、官邸と原子力規制委も参加して、原子炉の冷却機能が失われたという想定で、事態が悪化していく経過に合わせた訓練が行われ、夕方、炉心の冷却機能が回復したとして、2日間の訓練日程を終えました。
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原子力総合防災訓練:川内原発で始まる 高齢者、保育園児も避難
毎日新聞 鹿児島地方版 2013年10月12日
 福島第1原発事故後初めてとなった政府主催の原子力総合防災訓練。11日は川内原発(薩摩川内市)から放射性物質は漏れ出していないものの、全電源喪失という深刻な事態が発生したとの想定で進められた。原発内では運転員が状況確認に追われ、原発周辺では要援護者が職員の引率で避難訓練に臨んだ。【山崎太郎、宝満志郎、土田暁彦】

 川内原発の中央制御室では午前10時に警報が鳴り、地震発生を報告する声や、原子炉が自動停止しているか確認を求める声が飛び交い、運転員らが慌ただしく動き回った。
 その後、屋内危険物貯蔵庫でガソリンが燃えたという想定で、消火訓練をした。先月末に完成したばかりの代替緊急時対策所には現地の災害対策本部が置かれ、福岡市の本店などと連絡を取り合った。

 原発から5キロ圏のPAZ(予防防護措置区域)にあり、グループホームやデイサービスセンターを運営する「わかまつ園」(薩摩川内市高江町)は、利用者と利用者の代役の職員ら計15人が、約6キロ離れた病院まで移動する訓練に臨んだ。
 午後1時に施設を出発するはずだったが、ストレッチャー付きの介護用搬送車両1台の到着が遅れた。原因は市の手配ミスで、他の搬送車両は1時半ごろ先に施設を出発。遅れた車両が施設に着いたのは同45分だった。
 水引保育園(同市水引町)では園児18人を保育士がバスで約9キロ先の市総合体育館まで避難させた。湯田建二園長(62)は「訓練自体はスムーズにできた。乳児もいるため、これが本当の災害なら2、3日分のミルクも運ばないといけないだろう」と話していた


川内原発:事故時の要援護者対策 施設の避難計画進まず
 登録者リスト作成も課題 
毎日新聞 鹿児島地方版 2013年10月11日
◇PAZ、高齢独居者、幼児ら1100人超
 国の原子力総合防災訓練が11、12の両日、薩摩川内市の九州電力川内原発を対象に行われる。この中で原発から5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)で、高齢者ら災害時要援護者の避難訓練も予定されているが、福祉施設などの避難計画、要援護者の登録など、まだ整わず、課題は多い。【宝満志郎】

 東日本大震災での福島第1原発事故では原発周辺の病院で、避難中や避難先で十分な治療を受けられなかったため、患者に多くの犠牲が出たとされる。こうした教訓から、国の新たな原子力災害対策指針では要援護者の十分な配慮が盛り込まれた。PAZ、5〜30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の病院や社会福祉施設の管理者が避難場所・経路・誘導方法に関する計画を作成する。
 (鹿児島)県によると、川内原発から半径30キロ内には4月1日現在で社会福祉施設・医療機関が計240あり、定員やベッド数は1万400。しかし、まだ、避難計画を策定した施設の情報はないという。

 川内原発から約5キロに位置し、今回の訓練にも参加する高齢者福祉施設「わかまつ園」の浜田時久園長は「避難計画を作るといってもノウハウも情報もない。県や市が示してくれないと具体的には動けない」と話す。薩摩川内市の原子力防災計画(地域防災計画原子力災害対策編)で、計画づくりに県や市も連携することが定められたが、市の新盛和久・防災安全課長は「移送先と移送手段が問題。広域避難については県がたたき台を作ってもらいたい」と話す。

 一方、在宅の要援護者の避難はどうなるのか。市には災害時に介助などを希望する要援護者を登録し、個別の支援計画を作る制度がある。

 市がPAZ5キロ圏に指定した4地区4859人(7月)で、要援護者にあたる65歳以上の独居者らは572人だが、登録者は280人と半数に満たない。うち介助者らが決まっているのは176人にとどまる。市は8月、4地区それぞれで要援護者の避難を支援する連絡協議会を設立した。市、地区のコミュニティ協議会、民生委員らが加わり、要援護者の登録リスト・個別支援計画作りを進めていく。
 しかし、要援護者自身が希望し個人情報を提供することが前提。峰山地区での設立会合で、市側は「申し出てこない要援護者の支援が一番の課題」と訴えた。

 一方、逃げられない要援護者らを屋内避難させる設備もPAZ5キロ圏内に、今年度中に整備される予定。気密性などを高め放射線防護機能を持たせるもので、廃校になった小学校の体育館2カ所、民間施設1カ所。しかし、収容人数は計約180人。
 乳幼児らも入れると、4地区の要援護者は1100人を超える。新盛課長は「要援護者のデータは統計上のもの。本当に支援が必要な人がどれだけいるか」と実態の把握を進めていくという。