2013年10月28日月曜日

原賠法:利益は原子力村が得て、リスクは国民が負う +

 朝日新聞が情報公開で得た文書によると、国(=環境省)が行った除染費用計404億円の支払いを東電に求めたものの、67億円しか支払われておらず、74億円については支払いが困難と拒否されました。

 国はそのことを公表せず、東電の支払い拒否を黙認しているということですが、そうなれば国民の税金で賄うしかありません。困った話ですが、原子力損害賠償法(原賠法)が電力会社に損害賠償金として僅か1200億円の準備しか義務付けていない以上、賠償金の大部分がそうなることは最初から分かっていました。
 東電が支払いできない分を仮に負債と扱うにしても、それらは結局電力料金の引き上げによって返済されます。いずれにしても一旦事故が起きれば損害はすべて国民の肩に掛かってくる構造になっていて、そこに原子力発電のもつ矛盾が端的に示されています。

 原賠法は「利益は電力会社に、損害は国民に」を定めたものなので、電力会社が1200億円を上回る分は国=
国民の負担と考えているとしても仕方がありません。しかし被災者たちへの賠償をケチり、銀行への返済と利払いを優先させる考え方は許されませんし、それを黙認している政府も同じです。
 
+ 東京新聞の記事「東電 除染費負担を全面拒否 『賠償と二重払い』主張」を追加
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東電、除染費用支払い拒否 74億円、国は黙認
朝日新聞 2013年10月27日
 【関根慎一、多田敏男】東京電力が除染事業の大半の項目について費用の支払いに応じない考えを2月時点で国に明確に伝えていたことが、朝日新聞が環境省への情報公開請求で得た文書でわかった。国はこれを公表せず、支払い拒否を黙認している。

 国が除染費用を立て替えた後、東電に請求するのが「放射性物質汚染対処特別措置法」の規定だ。環境省は現在までに計404億円を請求したが、東電が支払ったのは67億円。国や東電は「内容の確認に時間がかかっている」とし、手続き上の問題と説明してきた。

 ところが、東電は2月21日付で環境省に送った文書で、昨年11月の第1回請求分の大半について「支払いが困難であるとの結論に至った」と拒否。環境省が説明を求めると、2月27日付の回答文書で、第2回請求分をあわせた149億円(118項目)のうち、74億円(95項目)について個別に支払わない理由を列挙した。さらに、賠償交渉を仲介する「原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)」に委ねることを検討するよう提案した。
 
東電 除染費負担を全面拒否 「賠償と二重払い」主張
東京新聞 2013年10月28日
 東京電力が、数兆円に上ると想定される福島第一原発事故による放射能汚染の除染費用を全面的に返済しない方針を政府に伝えていることが分かった。費用は政府が復興予算から立て替え払いし、東電が後に返済することが法律で定められている。しかし、東電は「家や土地に対する損害賠償に加え、除染費用まで払えない」などと主張。このまま返済が滞れば、復興予算に穴があく事態もあり得る。

 東電は政府が四回にわたって請求した除染費用四百三億円のうち六十七億円しか払っていない。残る支払いが遅れている理由を「書類を精査しているため」と説明してきた。
 しかし、複数の政府関係者によると、東電は既に返済が遅れている分だけでなく、数兆円と想定される将来の負担についても返済を拒否する方針を政府側に伝えた。東電取締役は、政府・与党の関係者に対し、土地や建物の価値が減った分の賠償は進めており、ここに除染費用も含まれているため「二重払いになる」などと強調しているという。
 これに対する政府・与党内の考え方はばらばらだ。
 経済産業省資源エネルギー庁は、東電に理解を示し、除染費用を国が負担するよう財務省などと協議を始めており、与党内でも国費負担論が出ている。
 一方、除染を担当する環境省では、東電に延滞金を科すことも検討している。同省幹部は「汚染水対策が大変だから、などの理由も挙げ、東電は全く払おうとしない。ゼロ回答だ」と憤る。
 返済拒否の理由について東電に確認を求めたが、担当者は「(除染の)請求内容を個別に確認させていただいて適切に判断したい」とコメントした。
 事故後に施行された除染特別措置法では、東電が除染費用を負担することが明記されている。実質的に国有化されている東電が、巨額の除染費用を支払うのは難しいため、電力各社が負担金を出し合い、そこから東電が資金を受け取り、国に返済する仕組みが既にできている。