2013年10月4日金曜日

原子炉建屋地下室への地下水流入を止めるのが根本

 福島原発で2日夜に高濃度の汚染水が外洋に漏れ出した問題について、NHKは3日、比較的詳しい記事を載せました。原因を知れば一体これが大企業のすることかと思えるばかりの初歩的なミスなのですが、こういうことを繰り返し起こしているのは何故でしょうか。
 「今後は、汚染水問題については国が前面に立ってやる」と首相は大見得を切りましたが、先の国会審議のなかでも国は文字通り姿を見せませんでした。
 いまなお汚水の処理において幼稚なミスを繰り返していることについて、前面に立った筈の国は一体どう釈明するのでしょうか。それとも地中凍土壁に国税を400億円あまり投入することを以って、「前面」に立ったつもりでいるのでしょうか?

 諸悪の根源は、地震により破損した建屋地下室(格納容器のリプレニッシング・チャンバーが敷設されている)に地下水が日量400トンも流入し続けていることにあります。これは当初から分かっていた筈なのに、収束のロードマップにはうたわれていません。逆に「循環水による原子炉冷却」という虚偽の構想がうたわれていました。

 もしも地下室への流入を防止することができれば日量400トンの汚水の発生がなくなるので、超特急で仮設タンクを作り それが水漏れを起こしてその対策に追われるという「賽の河原の石積み」の作業からは解放されます。

 外国向けに格好のいいことを言うのは止めにして、いまこそ政府が先頭に立って地下水流入防止策についての国内外の知恵を求めるべきです。それが汚染水を完全にコントロールするという「公約」を果たすのに最も有効な道です。
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汚染水漏れ 事前の検討不十分 
NHK NEWS WEB 2013年10月3日
東京電力福島第一原子力発電所で、2日夜、山側にあるタンクから新たに高濃度の汚染水が漏れた問題は、傾斜がある場所のタンクに水を入れ過ぎたのが原因でしたが、どの程度の水が入るかの事前の検討が不十分だったことが分かりました。
福島第一原発では、汚染水への対応が複雑になるなかミスが相次いでいて、早急な再発防止と管理の徹底が求められています。

福島第一原発では、2日夜、山側の汚染水をためるタンクから水が漏れ、その下のせきの水からベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質が1リットル当たり20万ベクレルという高い濃度で検出されました。
汚染水はタンクの天板と側面の板の隙間から漏れ、およそ430リットルがせきの外に出て、海につながる排水溝から原発の港の外の海に流出したとみられます。
問題のタンクは、山側から海側に向けて傾斜している場所に5つ並んで設置されたタンクのうち、最も低くなっている海側のタンクでした。
5つのタンクは連結されていて、2日のように大雨で周辺のせきにたまった雨水を1つのタンクに入れると、5つとも水位が連動して上がるようになっています。
しかし、5つのタンクのうち、水位計が付いているのは山側のタンクだけで問題のタンクにはなく、事前に行った検討では、山側のタンクの水位計で満杯の98%に当たる天板から50センチの水位にとどめれば、最も低い海側のタンクでも水は上部に達しないと評価されたということです。
水の移送は、この評価に基づいて2日の午前8時半から断続的に午後0時半すぎまで行われましたが、移送を止めたときにはすでに汚染水は漏れ始めていた可能性があり、東京電力は事前の検討が不十分だったとしています。
東京電力が3日朝、調べたところ、汚染水が流出したとみられる排水溝の海の出口付近の放射性物質の濃度は検出限界値未満でした。
福島第一原発では、ことし8月、別のタンクから汚染水が漏れ一部が海に流出したおそれが明らかになり、1日には、東京電力と協力会社との間の連絡のミスでタンクから汚染水が漏れるトラブルがありました。
増え続ける汚染水をためるタンクの増設を急ぎながら、雨水などの複雑な移送作業も行わなければならないなか、ミスやトラブルが相次いでいて、早急な再発防止と管理の徹底が求められています。

タンク運用深刻化のおそれ
福島第一原発では、増え続ける汚染水に対応するため汚染水をためるタンクの増設を急いできましたが、余裕のない状況が続いています。
今後、計画されている汚染水対策を進めると、保管する水の量がさらに増える可能性があり、タンクの運用はいっそう深刻になるおそれがあります。
福島第一原発では、高濃度の汚染水がたまっている建屋に山側から1日400トンの地下水が流れ込み、汚染水が増え続けています。
この汚染水をためるタンクは現在、敷地内におよそ40万トン分ありますが、すでに86パーセントに当たるおよそ35万トン分が埋まり、余裕のない状況が続いています。
対応をより複雑にしているのが雨への対応です。
東京電力は、タンクを囲むせきの水位が雨で高まった場合、タンクなどにいったん保管し、放射性物質が一定の濃度を下回った場合にのみ放出する対応をとっています。
先月の台風に伴う大雨の際は、せきからくみ上げた1400トンがタンクに移されました。
大雨のたびに一定量の水を保管する必要が出ると見込まれ、余裕のある別のせきに移したり、すでに汚染水をためているタンクにぎりぎりまで移送するなどの措置を取っていて、これに対応するため4000トン分のタンクの運用を今月中旬から始める計画です。
今後の汚染水対策もタンクの運用に影響しそうです。
来年9月ごろからの開始を計画している建屋周辺に設置する井戸から地下水をくみ上げる対策などでもくみ上げた地下水の保管が必要となる可能性があります。
これまでに東京電力が示している計画では、タンクの容量を今月をめどにおよそ44万トン、平成28年度中におよそ2倍の80万トンまで順次、増やすとしています。
しかし、タンクを設置できる土地は限られているうえ、対策が増えるほど、保管する必要がある水の量も増える可能性があり、タンクの運用はいっそう深刻になるとみられています。
タンクの信頼性も依然、課題のままです。
現在、300基余りある板のつなぎ目をボルトで締めるタイプのタンクをより信頼性の高い溶接型に置き換える計画ですが、短期間ですべてを置き換えるのは難しく、増え続ける汚染水への対応とタンクの信頼性向上の両立は容易ではありません。

20万ベクレルは
水漏れが見つかったタンクの下にある、せきの汚染水からはベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質が1リットル当たり20万ベクレルという高い濃度で検出されました。
この汚染水には、主に放射性物質のストロンチウム90が含まれていて、20万ベクレルをストロンチウム90の海への排出基準と比較すると、およそ6700倍に当たります。
水漏れが見つかったタンクから海までの距離はおよそ300メートルあり、東京電力によりますと、今回汚染水が流出したとみられる排水溝の海の出口付近で、3日午前7時に測定した結果、ベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質は検出限界値未満だったということです。
今回漏れた汚染水は放射線の一種のガンマ線を出す放射性セシウムをほとんど取り除いていて、含まれているのは、ベータ線を出す放射性物質が中心です。
ベータ線は、ガンマ線や中性子線と異なり鉛などがなくても被ばくを防ぐことが可能で、紙は通過するものの、アルミニウムやプラスチックの板で遮ることができます。

ベクレルは放射線を出す能力の単位
シーベルトが放射線が人体に与える影響、つまり、被ばくの程度を表す単位であるのに対して、ベクレルは、放射線を出す能力を示す単位です。
ベクレルは、放射性物質を含む水や食べ物を飲んだり食べたりすることによる被ばくを防ぐために、安全基準の単位としても使われていて、食料品に含まれる放射性セシウムの基準は、野菜や米などの一般食品は、1キログラム当たり100ベクレル、粉ミルクなどの乳児用食品と牛乳は、50ベクレル、飲料水は10ベクレルとなっています。
また、海へ排出する場合の基準は、国が放射性物質ごとに定めていて、いずれも1リットル当たりで、ストロンチウム90が30ベクレル、ヨウ素131が40ベクレル、セシウム137が90ベクレル、トリチウムが6万ベクレルなどとなっています。
 

福島第1原発の新たな汚染水漏出、東電と連携し対策=官房長官
ロイター通信 2013年10月3日
[東京3日 ロイター] 菅義偉官房長官は3日午前の会見で、東京電力 福島第1原子力発電所のタンクから新たな汚染水が漏出し、その一部が海に流出した可能性があることについて、東電の対応を確認するとともに、汚染水問題解決に向けてしっかり対策を講じていきたいと語った。

 菅官房長官は、汚染水問題の抜本的な改革は政府が責任をもって対応し、個々の問題は東電が対応するとしたうえで、今回のような漏れもあってはならないことだと指摘。「実際に漏れているのだから対応策が十分だったとは思わない」と語った。そのうえで「政府と東電が連携し、一切こういうことがないよう、これからもしっかり取り組んでいきたい。最善の努力をしていく」とした。
 安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会などで汚染水問題はコントロールできていると発言したこととの関連については「全体としてはコントロールできていると思っている」と答えた。 (石田仁志)