2013年11月28日木曜日

泉田知事も仮名で登場する『原発ホワイトアウト』

 現役の官僚が匿名で書いた暴露小説『原発ホワイトアウト』が話題になっています。
 ビジネスジャーナル電子版27日号に小説の一部を紹介する記事が載りました。
 
 政治家や原子力規制委を手玉に取っている官僚の傲慢・狡猾さや、総括原価方式の下で得られる莫大な電力会社の利潤、裏の献金システムとなって結局政権を牛耳っているという現実(電力と政治家の癒着)も簡単に紹介されています。
 そして、明らかに泉田知事と分かる人物が登場し、再稼動反対を貫くその知事を失脚させるために特捜部が動きだし、小説ではそれが成功するというストーリーだということです。
 
 これについてはかつて、プルサーマル(プルトニウム混合燃料)の導入に強硬に反対した福島県の佐藤栄佐久知事(任期:1988~2006 5期)が、特捜部の国策捜査によって収賄金額ゼロ(=判決)の収賄罪で失脚させられた例があるので、これは極めてあり得ることです。国民は検察とそれに協力するマスメディアによる世論操作には、決してだまされないように注意する必要があります。
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原発再稼動、事故再来…
現役官僚が描く原発利権のリアルな構図と衝撃シナリオ
ビジネスジャーナル 2013年11月27日
 小泉純一郎元首相の発言で、原発問題が再びクローズアップされている。
 そんな中、原発問題をめぐる1冊の小説が話題を呼んでいる。福島原発事故後の日本を舞台に、政治家、官僚、電力会社、経済団体など、原発再稼動に蠢く魑魅魍魎を描いた『原発ホワイトアウト』(若杉冽/講談社)だ。
 この作品が注目されているのは、小説と銘打ちながらも、作者が匿名の“現役官僚”で、その内容は現実の原発事故後の“事実”に即しており、登場人物もモデルが特定できるなど、一種の暴露小説となっているからだ。そんなショッキングな話題性もあり、発売1カ月で6万5000部と売り上げを伸ばしているという。
 霞が関では、官僚たちが作者は誰なのかと、犯人探しに躍起になっているといわれるが、それだけ霞が関にとって都合の悪い現実が書かれているということなのだろう。ではどこが現実とリンクするのか、モデルは誰なのか、それらを検証する形で本書の“リアリティ”に迫ってみたい。
 
 福島原発事故から数年が経過した日本。物語は、政権を奪還した保守党(※自民党がモデル)、官僚、そして電力会社が三つ巴で原発再稼動に向けて動き出すことから始まる。三者の目的は、自らの原発利権を再び手中にすることだ。そのために、さまざまな工作を張り巡らしていく。
 そんな展開の中で政治家、官僚、電力会社それぞれの“本音”も随所に描かれている。
 
●傲慢な官僚の本音
 例えば、エリート官僚である資源エネルギー庁次長は、こううそぶく。
「(再稼動について)質問側の政治部記者も、回答する幹事長も、両方素人だ」
「素人の政治家や記者には、小売り自由化や発送電分離の制度設計の細部の書きぶりによって、電力会社の独占力がどれほど維持されるのかなど、わかりはしないのだ」
 エリート官僚が政治家を懐柔して、プライドをくすぐりながら、いかに自分たちの言いなりにさせるのかという手法や、「国民や政治家、新聞記者を欺くなど簡単だ」という、傲慢な官僚の本音が語られていく。
 また、原発を規制する役割を担う原子力規制委員会を意のままに操る手法も、詳細に描かれている。
「専門審査会とは別にワーキング・グループを置いちゃえばいいだろ。思想信条をよくチェックしてよ。目くらましで外国人とか女性学者とか入れちゃってよ」
「活断層じゃねぇ、って意見を一致させちゃえば」
「大衆は、きれいごとには賛同しても、カネはこれっぽっちも出さない。原発を再稼動させないと電力料金がどんどん上がる。という構図を示し、大衆に理解させれば、徐々に、アンチ原子力の熱は冷めていく」
 国民の安全など一顧だにしない恐ろしい発言ばかりだが、これが官僚たちの本音なのだろう。
 
●政治家と電力会社の癒着
 一方、政治家も政治家だ。
 「経済産業省の連中だって、今まで散々電力産業にたかって、おいしい目を見ていたのである。口では自由化だ、システム改革だと言いながらも、下半身は現世利益に関心がないわけではない」
 日本電力連盟(※電事連がモデル)理事の目を通しては、電力会社と政治家との癒着や政治献金の闇も描かれる。
 「政党交付金が表の法律上のシステムとすれば、総括原価方式の下で生み出される電力料金のレント、すなわち超過利潤は、裏の集金・献金システムとして、日本の政治に組み込まれる」
 「日本電力連盟が預かっている、年に400億円の、わずか0・01パーセントの額で、数年後に民自党(※民主党がモデル)に追い風が吹いても、日本電力連盟に逆らうことはない」
 抜け道だらけの政治献金システム、電力利権に群がる与野党の政治家、その双方をコントロールできるとうそぶく官僚構造、さらに骨抜きにされていく発送電分離構想──。作品では原子力規制委員会と電力会社の癒着も描かれているが、これもまた現実社会で起こったことと一致する。
 
●卑劣な裏工作の数々
 さらに日本電力連盟による、巧妙なマスコミ対策、世論誘導……。こんな卑劣なことが現実とはにわかには信じ難いかもしれない。が、これは小説という形式をとりながらの、現実に即した“内部告発”だ。
 例えば、小説には再稼動に強固に反対する新潟県知事も登場する。この新潟県知事のモデルもまた、現実の泉田裕彦知事その人だろう。小説では新潟県知事が、検察をも関与する裏工作によってスキャンダルをでっち上げられるが、実際の泉田知事もスキャンダル探しのために身辺を探られていることを明かしていた。
 小説の新潟県知事はついには失脚させられてしまい、新潟原発が再稼動され、福島事故の再来という恐るべき結末が待ち受けているのだ。
 原発事故から2年半。東京五輪開催も決定し、多くの日本人は原発事故などなかったかのような日常生活を送っている。本書は再稼動を他人事のように捕らえている日本に警告を与えるものだ。もう一度、東日本大震災を、福島第一原発事故を思い出せ、と。原発事故の再来は、日本の破滅でもあるのだから。  (文=編集部)