2013年10月31日木曜日

規制委:4号機プールからの核燃料取り出し計画を認可

 30日、原子力規制委は福島原発4号機の燃料プールからの燃料取り出しの計画を認可しました。規制委はこの日、燃料の落下防止や落下した場合の対応、燃料棒を約100m離れた建物内の共用プールに移した後の貯蔵などに関する東電の計画を適切と判断しまし
 抜き出し作業は大変なリスクを伴うので、事前準備に万全を尽くすこととして認可が保留されていたものです。
 取り出し作業は11月8日に開始されると見られています

 4号機は東日本大震災のときたまたま定期点検中で、原子炉内の核燃料棒は全部抜きと取られていましたが、1~3号機と排気管が繋がっていたために水素爆発を起し、建屋の屋根や最上階の壁の一部が吹き飛び、燃料プールに天井クレーンやがれきが落ち込むなどしました。

 度重なる余震で最上階の燃料プールに万一ひび割れ等が生じて、燃料棒が空気中に露出されると大変危険なことになるので、取り出しは当初から急がれていましたが、建屋を外側から囲って補強する架構がようやく完成し、天井クレーン(遠隔操作型)が新設され、さらにプール内のがれきや落下構造物の撤去が完了したので、核燃料棒の取り出し作業が可能になったものです。

 取り出し作業は、燃料棒を1個ずつクレーンで引き上げ、プールの余裕水深内で水没させたままで搬出用容器に収納し、所定数収納すると水封したまま密閉してプール上に吊り上げ、建屋外の搬出用トレーラーに吊り下ろすもので、それを1533本の燃料棒について繰り返すものです。
 作業は水中カメラで監視しながら行い、燃料棒が変形していたり一部破損していた場合の対応も当然織り込み済みと思われます。

  (関連記事)
  2013年10月23日「福島原発4号機の燃料プールは人類生存にかかわる問題 と」
  2012年9月16日「なぜ早く燃料棒を取り出さないのか! 福島原発 4号機危機問題 続報」
          http://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2012/09/4.html 
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規制委:核燃料取り出し計画を認可
毎日新聞 2013年10月30日
 原子力規制委員会は30日、東京電力福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し計画を認可した。規制委は「リスクを伴う作業で、事前準備に万全を尽くすことが必要だ」としている。東電は11月半ばにも燃料取り出しを始める。

 東電は水中カメラを使った燃料の健全性の確認方法や、破損していた場合の作業員の被ばく低減策などを示し、規制委は「災害の防止上、十分なもの」として計画を認可した。更田豊志委員は「予想しないこともあると思うので、十分な監視を行うべきだ」と述べた。

 4号機の使用済み核燃料プールには核燃料1533本が保管されている。4号機は水素爆発したため原子炉建屋上部は大破しており、東電は廃炉に向けてがれきの撤去や、建屋カバーや燃料取り出しのためのクレーンの設置を進めてきた。

 規制委は廃炉に向けた計画を8月に認可したが、4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しについては、保管燃料が正常な状態か確認する方法や、燃料が破損していた場合の対処方法などの手順が決まっていなかった。【鳥井真平】


2013年10月30日水曜日

元作業員が原発汚染水タンク作業のずさん管理を告発

 29日のしんぶん赤旗に福島原発の元作業員の実名告発記事が載りました。
 汚染水タンクからの度重なる水漏れ事故の根底には東電のコスト削減策があり、それに無理な工程の短縮が重なって生じています。
 支払われる工事費が削減されれば業者としては工事1件ごとの関与人員を減らすしかありません。そこに無理な工期の短縮が要求されるので、結局本来の作業手順から逸脱したごまかしの作業を行うしかなく、それが結局漏水につながっているということです。

 以下にロイター通信の、「福島第一原発作業員の現状『違法雇用』と『過酷労働』」と題する問題提起の記事とともに紹介します。
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原発汚染水タンクずさん管理 元作業員 今度は実名で告発
 人減らしのなか工期優先 悪化する作業環境
しんぶん赤旗 2013年10月29日
 放射能汚染水の漏出、海洋への流出が繰り返される東京電力福島第1原発。本紙1日付1面で「汚染水タンク、ガムテープでふた」と匿名で告発した元作業員が、今回は実名で証言しました。

沖縄県在住 上地剛立さん
 証言したのは昨年7月から年末まで、沖縄県から福島第1原発の収束作業についた元作業員の上地剛立(うえち・よしたつ)さん、48歳です。大成建設が元請けの2次下請け作業についていました。半年間の原発作業のなかで、汚染水漏れの原因が「東電のコスト削減」にあることを実感しています。

さび止め厚塗り
 東電が「コスト削減」策として競争入札を強化するなかで、目立ったのが人員削減でした。「人減らしのなかで工期が優先され、作業環境が悪化した」
 昨年10月のことです。タンクの底板のボルト・ナットのさび止め剤を塗る作業でした。この作業は、ボルトなどの油分を確実にふき取る(脱脂)ことが重要です。油分があると、さび止め剤をはじいてしまい「ピンポール(気泡)」ができます。ここがさびれば腐食の原因になり、汚染水の漏出につながる、といいます。
 現場ではこのピンポールをごまかすためにさび止めの厚塗りが指示されました。上地さんは「厚塗りは乾燥に時間がかかり、生乾きで水分が付着するとさび止めが溶け落ちて結局、腐食につながる」と指摘します。
 こんな経験もしました。「冬の雪の日だった。さび止めのほとんどが雪で流された。汚染水漏出の一因となったのではないか」

 人員削減と工期優先は作業員の健康被害をもたらしています。

ひどい耳鳴りに
 上地さんがタンク内で底板のコンクリート角の削り作業(ケレン清掃)をしているときでした。「ガーン、ガーン、ガーン」。突然、タンク上部で始まった、柄が1メートルほどある工事用の大型ハンマーで打ちつける上蓋の組み付け作業。
 「打音は沖縄で聞かされる米軍のジェット戦闘機の爆音よりも長く続き、拷問を受けたような衝撃音に襲われた。耳から脳まで響くすさまじい音で気が狂いそうになった。全面マスクでの作業中で、耳をガードできず、それ以来、ひどい耳鳴りに悩まされている」
 耳鼻科に受診した結果、高音部分が聞こえない「感音性難聴」と診断されました。
 上地さんはいま、元請けの大成建設に労災申請をしています。
 診断書をにぎる手に力をこめて言います。「安倍首相は汚染水漏れについて『状況はコントロールされている』『ブロックされている』といったが、コントロールされているのは原発事故の実態を隠すこと、ブロックしているのは廃炉と再稼働反対を求める国民の声だ」 (山本眞直)


福島第一原発作業員の現状「違法雇用」と「過酷労働」 
ロイター  2013年10月27日
高濃度の放射線にさらされている東京電力福島第1原子力発電所の廃炉・除染現場で、作業員を蝕むもうひとつの「汚染」が進行している。不透明な雇用契約や給料の中抜きが横行し、時には暴力団も介在する劣悪な労働環境の存在だ。
東電や大手建設会社を頂点とする雇用ピラミッドの底辺で、下請け作業員に対する不当な取り扱いは後を絶たず、除染や廃炉作業への悪影響も懸念されている。

「原発ジプシー」。 福島第1原発をはじめとする国内の原発が操業を開始した1970年代から、原発で働く末端労働者は、こんな呼び名がつくほど不当で不安定な雇用状態に置かれてきた。電力会社の正社員ではなく、保全業務の受託会社に一時的に雇用される彼らの多くは日雇い労働者で、原発を転々としながら、生計を立てる。賃金の未払いや労働災害のトラブルも多く、原発労働者に対する待遇改善の必要性はこれまでも声高に叫ばれてきた。
しかし、福島第1の廃炉および除染現場では、こうした数十年に及ぶ原発労働者への不当行為が改善されるどころか、より大規模に繰り返されている可能性があることが、80人余りの作業員、雇用主、行政・企業関係者にロイターが行った取材で浮かび上がってきた。

福島第1では、800程度の企業が廃炉作業などに従事し、除染作業にはさらに何百もの企業が加わるという、過去に例のない大掛かりな事故処理が続いている。現場の下請け作業員は慢性的に不足しており、あっせん業者が生活困窮者をかき集めて人員を補充、さらに給与をピンハネするケースも少なくない。下請け企業の多くは原発作業に携わった経験がなく、一部は反社会的勢力にも絡んでいるのが実態だ。

<不透明な雇用記録>
 (本項は省略

<慢性的な人手不足と緩い法規制>
こうした労働トラブルが続発する背景には、福島第1原発の廃炉や除染作業で現場労働者が不足し、なりふり構わない人員調達が行われているという実態がある。
作業現場では、雇用の発注者である東電の下に鹿島や大林組といった元請け、さらに7層を越す下請けが連なり、複雑な業務委託ピラミッドが出来上がっている。その末端には会社登記すらない零細企業も存在する。
同原発では現在、約8300人を超す作業員が登録されているが、東電では廃炉事業を急ぐため、2015年までに少なくとも1万2000人を動員する計画を立てている。汚染水対策として緊急性が高まっている凍土遮水壁の建設要員を含めると、その数はさらに膨れ上がる見通しだ。
「これだけの人員を導入して、果たして東電が彼らの安全を守れるのか、考える必要があるだろう」と日本原子力研究開発機構安全センターの中山真一副センター長は東電の現場管理能力に疑問を投げかける。
緊急度が増している除染や廃棄物処理を推進する法的措置として、2011年8月30日に議員立法による「放射性物質汚染対処特措法」が公布され、昨年1月1日から施行されている。しかし、厚生労働省によると、この法律は、除染作業などを行う業者の登録や審査を義務付けておらず、誰でも一夜にして下請け業者になることが可能だ。
多くの零細企業は、原発を扱った経験がないにもかかわらず契約獲得を狙って群がるように応札し、さらに小規模な業者に作業員をかき集めるよう依頼している、と複数の業者や作業員は証言する。

今年上半期に福島労働局が除染作業を行っている388業者を立ち入り調査したところ、68%にあたる264事業者で法令違反が見つかり、是正勧告した。違反率は昨年4月から12月まで行った前回調査の44.6%から大きく増加した。違反の内容は割増賃金の不払い、労働条件の不明示から作業の安全管理ミスまで多岐に及んでいた。
  (中 略

<避けられない下請け依存、届かない監視の目>
末端作業員への搾取がなくならない福島第1原発の実態について、雇用ピラミッドの頂点に立つ東電はどう考えているのか。

同原発の廃炉や地域の除染に必要な時間と作業量があまりにも大きく、自社だけでは人員も専門技術も不十分で、下請けに任せるしかない、というのが同社の現状だ。 同社は下請け作業や雇用の実態まで十分に監視できていないと認める一方、下請け業者は、作業員の酷使や組織的犯罪への関わりを防ぐ措置を実施していると強調する。
あっせん業者による給料の横取りを防ぐために、雇い主と管理企業が異なるような雇用形態は禁止されているが、東電が昨年行った調査では、福島第1の作業員の約半数がそうした状況に置かれていた。同社は元請け会社に労働規制の順守を求める一方、作業員の疑問に答えるため、弁護士が対応する窓口も設立した。さらに、厚生労働省による労働規制の説明会を下請け業者向けに開いたほか、6月には、新しい作業員に対し、不法な雇用慣行を避けるための研修を受けるよう義務付けている。
待遇改善が進まない背景には、東電自体が金融機関と合意した総合特別事業計画の下で厳しいコストカットを要求されているという現実がある。同社はすでに2011年の震災後に社員の賃金を20%削減した。業務委託のコストも厳しく絞りこまれており、結果的に下請け労働者の賃金が人手不足にもかかわらず、低く抑え込まれているという現実を生んでいる。ロイターがインタビューした福島第1の現場作業員の日当は平均で1万円前後で、一般の建設労働者の平均賃金よりはるかに低い。

賃金や雇用契約の改善のみならず、現場での作業の安全性が確保されなければ、廃炉や除染事業そのものが立ち行かなくなる懸念もある。今年10月、作業員が淡水化装置の配管の接続部を外した際に、作業員計6名が高濃度の汚染水を浴びる事故が起きた。8月には作業員12名が、原子炉からがれきを取り除いていた際に被ばくした。
こうした事故の続発を受け、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、不注意な過ちを防ぐには適切な監督が重要だ、と指摘。現時点で東電は下請け業者に作業を任せ過ぎている可能性があると述べている。

福島労働局によると、通常の業務委託は2次か3次の下請けぐらいまでだが、福島原発の廃炉や除染事業については、膨大な作業量を早急に処理すべきという社会的な要請が強く、下請け企業を大幅に増やして対応せざるを得ない。雇用者が下請け企業や作業員をしっかりと選別できないという現状の解決が最優先課題という。
「下請け構造が悪いとはいえない。労働者が全然足りない状況にあるということが大きな問題だ」と同局の担当者は指摘する。「廃炉や除染事業にヤクザの関与を望む人は誰一人いないはずだ」。(文中、敬称略)
(Antoni Slodkowski、斉藤真理;編集 北松克朗、石黒里絵、田頭淳子)


2013年10月29日火曜日

規制委員長が東電社長と面談

 福島原発の問題で原子力規制委員長が東電社長を呼び、面談しました。会談は冒頭のみ公開されました。
 田中委員長は「福島第一の現状は極めて憂慮すべき事態」と述べ、人心刷新するため、大胆かつ長期的な計画を立ててほしいと指示しました。
 池田氏規制庁長官柏崎刈羽原発の審査については議論がなかったとし、審査を始めるかどうかは、「現在の福島第一の状況を見ながら進める」と述べました。
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規制委員長、東電社長と面談 福島第一、作業環境改善を指示
東京新聞 2013年10月28日
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は二十八日午前、東京電力の広瀬直己(なおみ)社長を規制委に呼んで面談した。福島第一原発では作業環境の悪化や士気低下が指摘されており、技術面、安全管理面で東電に十分な能力があるのか、委員長自ら東電トップから事情を聴いた。

 面談は冒頭のみ報道陣に公開され、後は非公開。同席した規制委事務局の池田克彦長官や広瀬氏によると、田中氏は「福島第一の現状は極めて憂慮すべき事態」と述べ、東電トップとして現状認識や、現場の士気をどう高めていくのか認識をただした。

 広瀬氏は「新たな作業が増え、慣れない仕事が多くなった。作業員の確保も困難になっている」と説明。「専門家を含めて東電全体で人を回して、作業員を確保したい。敷地内の放射線量を下げ、全面マスクをしなくてもいい場所を増やす。そのための必要なコストは思い切って出したい」と、作業環境の改善を約束した。

 これに対し、田中氏は「思い切ったことをしないと、人心の刷新にならない。ドラスチック(大胆)かつ長期的な計画を立ててほしい」と指示した。
 また、池田氏は面談では、再稼働審査の申請が出されている柏崎刈羽原発(新潟県)の審査そのものについての議論はなかったと強調。今後、審査を始めるかどうかは、「現在の福島第一の状況を見ながら進める」と述べるにとどめた。
 
 

2013年10月28日月曜日

原賠法:利益は原子力村が得て、リスクは国民が負う +

 朝日新聞が情報公開で得た文書によると、国(=環境省)が行った除染費用計404億円の支払いを東電に求めたものの、67億円しか支払われておらず、74億円については支払いが困難と拒否されました。

 国はそのことを公表せず、東電の支払い拒否を黙認しているということですが、そうなれば国民の税金で賄うしかありません。困った話ですが、原子力損害賠償法(原賠法)が電力会社に損害賠償金として僅か1200億円の準備しか義務付けていない以上、賠償金の大部分がそうなることは最初から分かっていました。
 東電が支払いできない分を仮に負債と扱うにしても、それらは結局電力料金の引き上げによって返済されます。いずれにしても一旦事故が起きれば損害はすべて国民の肩に掛かってくる構造になっていて、そこに原子力発電のもつ矛盾が端的に示されています。

 原賠法は「利益は電力会社に、損害は国民に」を定めたものなので、電力会社が1200億円を上回る分は国=
国民の負担と考えているとしても仕方がありません。しかし被災者たちへの賠償をケチり、銀行への返済と利払いを優先させる考え方は許されませんし、それを黙認している政府も同じです。
 
+ 東京新聞の記事「東電 除染費負担を全面拒否 『賠償と二重払い』主張」を追加
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東電、除染費用支払い拒否 74億円、国は黙認
朝日新聞 2013年10月27日
 【関根慎一、多田敏男】東京電力が除染事業の大半の項目について費用の支払いに応じない考えを2月時点で国に明確に伝えていたことが、朝日新聞が環境省への情報公開請求で得た文書でわかった。国はこれを公表せず、支払い拒否を黙認している。

 国が除染費用を立て替えた後、東電に請求するのが「放射性物質汚染対処特別措置法」の規定だ。環境省は現在までに計404億円を請求したが、東電が支払ったのは67億円。国や東電は「内容の確認に時間がかかっている」とし、手続き上の問題と説明してきた。

 ところが、東電は2月21日付で環境省に送った文書で、昨年11月の第1回請求分の大半について「支払いが困難であるとの結論に至った」と拒否。環境省が説明を求めると、2月27日付の回答文書で、第2回請求分をあわせた149億円(118項目)のうち、74億円(95項目)について個別に支払わない理由を列挙した。さらに、賠償交渉を仲介する「原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)」に委ねることを検討するよう提案した。
 
東電 除染費負担を全面拒否 「賠償と二重払い」主張
東京新聞 2013年10月28日
 東京電力が、数兆円に上ると想定される福島第一原発事故による放射能汚染の除染費用を全面的に返済しない方針を政府に伝えていることが分かった。費用は政府が復興予算から立て替え払いし、東電が後に返済することが法律で定められている。しかし、東電は「家や土地に対する損害賠償に加え、除染費用まで払えない」などと主張。このまま返済が滞れば、復興予算に穴があく事態もあり得る。

 東電は政府が四回にわたって請求した除染費用四百三億円のうち六十七億円しか払っていない。残る支払いが遅れている理由を「書類を精査しているため」と説明してきた。
 しかし、複数の政府関係者によると、東電は既に返済が遅れている分だけでなく、数兆円と想定される将来の負担についても返済を拒否する方針を政府側に伝えた。東電取締役は、政府・与党の関係者に対し、土地や建物の価値が減った分の賠償は進めており、ここに除染費用も含まれているため「二重払いになる」などと強調しているという。
 これに対する政府・与党内の考え方はばらばらだ。
 経済産業省資源エネルギー庁は、東電に理解を示し、除染費用を国が負担するよう財務省などと協議を始めており、与党内でも国費負担論が出ている。
 一方、除染を担当する環境省では、東電に延滞金を科すことも検討している。同省幹部は「汚染水対策が大変だから、などの理由も挙げ、東電は全く払おうとしない。ゼロ回答だ」と憤る。
 返済拒否の理由について東電に確認を求めたが、担当者は「(除染の)請求内容を個別に確認させていただいて適切に判断したい」とコメントした。
 事故後に施行された除染特別措置法では、東電が除染費用を負担することが明記されている。実質的に国有化されている東電が、巨額の除染費用を支払うのは難しいため、電力各社が負担金を出し合い、そこから東電が資金を受け取り、国に返済する仕組みが既にできている。

 

2013年10月27日日曜日

鈴鹿市公民館に高校生の放射能研究成果を展示

 三重県鈴鹿市の白子公民館、地元の白子高の生徒たちが放射能についてまとめた研究成果展示されています。
 白子高校生が文化祭のために制作した模造紙四十枚の大作で、展示を見た杉谷哲也館長が「これだけ本格的に調べる労力がすごいし、何より知りたい情報が分かりやすくまとめられている」と内容に感銘を受けて譲ってもらったものです

 高校生たちは「放射能は怖いイメージがある一方、どこか遠くのことに感じる。しっかり知りたい」と話し合ってテーマを決め、放射能の仕組み、歴史、人体に与える影響などについて、一人一人が持ち寄った情報を精査し、図や写真を添えたりクイズ形式にしたりしてまとめました。
 展示の中心メンバーの岩谷莉奈さんは、「一生懸命作ったので、地域の人たちに見てもらえるのは本当にうれしい」と話しています。

 生徒たちのこうした自主的な研究成果が地域に伝わることは、放射能の真実が広まることであって力強いことです。
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【三重】 白子高生の放射能研究成果を展示
中日新聞 2013年10月26日
 鈴鹿市の白子公民館で、地元の白子高の生徒たちが放射能についてまとめた研究成果を展示している。文化祭のために制作した模造紙四十枚の大作で、展示を見た杉谷哲也館長が内容に感銘を受けて譲ってもらった。一部を入れ替えながら十一月八日まで館内に掲示する。その後も保管し、希望があれば貸し出す。

 吹奏楽コースの一年二組四十人が、各クラスごとに研究成果を掲示する文化祭の催しで制作した。「放射能は、東日本大震災による原発事故で怖いイメージがある一方、どこか遠くのことに感じる。しっかり知りたい」と話し合い、テーマを定めた。
 放射能の仕組み、歴史、人体に与える影響でグループ分けし、一人一人が持ち寄った情報を精査。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故での被害や内部被ばくと外部被ばくの違い、東京電力福島第一原発事故の経緯、エックス線など日常生活での利用について、図や写真を添えたりクイズ形式にしたりしてまとめた。

 展示物は、先月二十七日の文化祭で掲示を終えたら、すぐ焼却処分する予定だった。だが見学に訪れた杉谷館長が「これだけ本格的に調べる労力がすごいし、何より知りたい情報が分かりやすくまとめられている」と、その場で生徒に譲渡を願い出た。
 白子公民館では、展示スペースと階段の壁に、四十枚から選んだ十六枚を並べ、随時入れ替える。ほかの公民館や団体などにも貸し出す考えだ。
 展示の中心メンバーの一人、岩谷莉奈さん(16)は「制作途中から、一生懸命作ったのに捨てるのは、もったいないと皆で話していた。地域の人たちに見てもらえるのは本当にうれしい」と話している。(鈴木智重)


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2013年10月26日土曜日

原発・放射能ニュース 2013.10..26~31

 電子版の各紙に載った原発と放射能に関するニュースを掲示します(但し公開の範囲)。記事の掲載は原則として書き出し部分に留めますので、全文はURLをクリックしてご覧ください(URL記載のないものは公開の全文です)。公開期限後表示されなくなった記事を読みたい方はコメント欄にお書き下さい。(返信欄に表示します)

10.31

「果たしてない」 6割 県内59市町村長アンケート 首相の「責任果たす」発言 (福島民報) 
  (1日付 「首相は汚染水問題解決の責任を果たしていない」本文記事参照)

イシガレイ、コモンカスベなど5点が基準値超え 福島民友ニュース)
 (福島)県は30日、水産物69種180点の放射性物質検査結果を発表、海産ではイシガレイ、コモンカスベ、シロメバルのそれぞれ1点が食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えた。
  河川・湖沼では、ヤマメ2点が基準値を上回った。

川内の「稲わら」利用可 (福島民友ニュース)
 (福島)県は30日、17市町村で栽培された牧草と飼料作物54点の放射性物質検査結果を発表、14点から1キロ当たり3~34ベクレルの放射性セシウムが検出されたが、国の暫定基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回った。川内村などの稲わらは基準値以下と確認されたため、利用できるようになった。 

10.30

福島、沖縄も負担増 除染 東電救済でゆがみ (東京新聞)
 東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の除染問題で、東電の負担を免除し、税金で賄おうとする動きが政府・与党内で強まってきた。原発を推進してきた国の責任は大きいが、税金を投入するとなると、原発のない沖縄県の人まで負担することになり、被害者の福島県の人たちの負担も増える。安易な東電救済は、新たなゆがみを生みかねない。 (岸本拓也)
 現在、除染費用は国がいったん肩代わりし、最終的には東電が全額負担することが、放射性物質汚染対処特別措置法で決まっている。しかし、東電は国がこれまで請求した四百四億円のうち、六十七億円しか返済していない。
 最近では、除染費用は不動産の損害賠償に含まれているとして、国に今後の支払いを拒否する考えを伝え、与党にもさらなる支援を働き掛けてきた。
 
規制委:核燃料取り出し計画を認可 (毎日新聞) 
  (31日「規制委:4号機プールからの核燃料取り出し計画を認可」本文記事参照) 

福島第1原発5、6号機廃炉の可能性 東電、汚染水移送検討 (河北新報)
 東京電力の石崎芳行副社長(福島本社代表)は29日、福島第1原発の汚染水対策として、5、6号機の地下に汚染水を移送する検討をしていることを明らかにした。専門家は「原子炉建屋の地下全体に移送するとすれば、原発として使えなくなる」と、廃炉を前提とした発言ではないかと受け止めている。
 石崎副社長は福島県庁で記者会見し、「あり得ないくらいの大雨まで想定し、5、6号機の地下が使えないか、幅広い対策を検討している」と話した。廃炉自体については「検討中」と述べるにとどめた。
 
10.29

環境省、東電に延滞金請求 除染未払い約340億円 (東京新聞)
 東京電力福島第1原発事故に伴う除染の費用をめぐり、大半の支払いを拒んでいる東電に対し、環境省が延滞金を課す方針を固めたことが29日、分かった。11月中にも未払い分約340億円について告知書を送り、支払いを求める。
 会計検査院は今月16日、昨年7月に実質国有化された東電を初検査した報告書を公表し、速やかな支払いを求めるよう環境省に指摘。同省はあらためて要請したが応じなかったため、延滞金を課すことで支払いを促す。
 告知書を送付すると、国の立て替え費用の金利に当たる年5%程度の延滞金が発生。(共同)

財務相、除染の一部国費負担に理解 「東電だけの責任でない」 (日経新聞)
 麻生太郎副総理・財務相は29日の閣議後の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所周辺の除染費用について「(原子力政策は)基本的に国策でやってきた。東電だけに責任があるという話はいかがなものか」と述べ、国の一部負担に理解を示した。自民党の東日本大震災復興加速化本部が近くまとめる提言を受け、政府として具体策の検討に入る。
 国が除染費用を負担することには財務省などで慎重論もあったが、麻生氏が理解を示したことで議論が進みそうだ。

第1原発港湾内の水中カーテン破損 台風の高波原因 (福島民友ニュース)
 東京電力は28日、福島第1原発港湾内で、5、6号機の取水口近くに設置した水中カーテン「シルトフェンス」が破損したと発表した。台風27号の影響による高波が原因とみられる。
  東電によると、破損したのは二重に設置されたシルトフェンスのうち、外側に張られた1枚。26日午後2時30分ごろ、社員がシルトフェンスの端を固定する金具が外れているのを発見、27日に復旧した。東電は「フェンスの(別の)1枚は機能しており、外洋への影響はない」としている。

10.28

経産省、東電の除染費免除を検討 支払い義務4700億円のみ (東京新聞)
 東京電力福島第1原発事故に伴う除染費用をめぐり、経済産業省が、東電の支払い義務をこれまでの実施分約4700億円に限定し、今後実施される除染や中間貯蔵施設の費用は免除する案を検討していることが28日、分かった。東電の経営再建へ向け、負担軽減を図るのが狙い。
 だが環境省や財務省では、東電の全額負担を明記する特措法の改正が必要として慎重論が強く、東電救済のための国費投入は国民の間でも反発が出るのは必至だ。(共同)

規制委員長、東電社長と面談 福島第一、作業環境改善を指示 (東京新聞)
 (29日「規制委員長が東電社長と面談」本文記事参照)

東電 除染費負担を全面拒否 「賠償と二重払い」主張 (東京新聞)
 東京電力が、数兆円に上ると想定される福島第一原発事故による放射能汚染の除染費用を全面的に返済しない方針を政府に伝えていることが分かった。費用は政府が復興予算から立て替え払いし、東電が後に返済することが法律で定められている。しかし、東電は「家や土地に対する損害賠償に加え、除染費用まで払えない」などと主張。このまま返済が滞れば、復興予算に穴があく事態もあり得る。 (桐山純平)
 
第1原発、4万5千ベクレル検出 再び上昇、排水溝から (東京新聞)
 東京電力は27日、福島第1原発の汚染水を貯蔵する地上タンクで約300トンの水漏れがあった「H4」エリア付近の排水溝で27日に採取した水から、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり最大4万5千ベクレル検出されたと発表した。
 26日採取分では低下傾向にあったが、再び上昇した。東電は、放射性物質が付着した周辺の土壌が、雨で流れ込んだことが原因とみている。過去最高値は、23日採取分の14万ベクレル。
 東電は測定地点の下流を土のうでせき止めており、海への影響はないとしている。(共同)

10.27

東電、除染費用支払い拒否 74億円、国は黙認 (朝日新聞)
 (28日「原賠法:利益は原子力村が得て、リスクは国民が負う」本文記事参照)

10..26

ふらつく規制委=放射能低減装置や排水手順-汚染水対策、一貫性欠く (時事通信)
 東京電力福島第1原発での放射能汚染水トラブルが後を絶たない中、作業を監視する立場の原子力規制委員会の姿勢もふらついている。汚染水から放射性物質を減らす装置「ALPS(アルプス)」の稼働や、汚染水の貯蔵タンク群を囲むせきにたまった水の排水手順などで一貫性のない対応が相次いでいる。

福島第一原発 作業簡略化してせきの水放出 (NHK)
東京電力福島第一原子力発電所では、雨のため、汚染水のタンクを囲むせきの水位が上昇し、水をタンクなどに移す作業を行いました。水位が速く、上昇したせきの水は、原子力規制委員会が認めた緊急時の手順にしたがってその場で放射性物質の濃度を測り、測定用のタンクにためる作業を省略して放出しました。
台風27号と前線の影響で、福島第一原発では26日に入って午後1時までに22.5ミリの雨が降りました。これまでのところ、5時間でおよそ100ミリの雨を観測して、せきの水があふれた今月20日に比べると雨量は少なくなっていますが、東京電力は水位が上昇したせきの水をタンクや地下の貯水槽に移す作業を行いました。
 
【滋賀】事態「十分想像できず」 高島の汚染木材チップ放置で県 (中日新聞)
 高島市安曇川町の鴨川河口に放射性物質で汚染された木材チップが放置されている問題をめぐり、高島市が県に求めていた要望書の回答期限の二十五日、県職員が高島市役所を訪れ、福井正明市長らに回答書を手渡した。
 平常値を超える放射線量にもかかわらず、県が異常値でないと判断した根拠や処分方法の検討内容など、市がただした五点の質問について、県琵琶湖環境部の森野才治次長らが文書とともに説明した。
 線量については「自然放射線による空間線量の変動幅は通常毎時0~0・2マイクロシーベルト程度とされており、異常値ではないと判断した」と主張。その上で「琵琶湖の沿岸に無断で放置されるという事態を十分想像できなかった」と釈明した。撤去に向けては「速やかに行為者や排出元などに対して厳しく対応を求める方策を固める」としたものの具体的な工程は示されなかった。
 
首長から不満相次ぐ 精神的賠償支払い期間で (福島民報)
 25日に文部科学省で開かれた原子力損害賠償紛争審査会では避難指示解除後の精神的賠償の支払期間について1年を目安とする案が大筋了承されたが、避難区域がある市町村の首長からは不満や要望が相次いだ。
 県内では住宅改修の業者が不足しており、楢葉町の松本幸英町長は「原発事故から2年7カ月が過ぎ、家屋の損傷やネズミなどの被害は想像以上。わずか1年では自宅を元通りにして帰還するための余裕がない」と指摘した。双葉町の伊沢史朗町長は「町の実情をよく把握し、被害実態に沿った賠償指針の検討をお願いしたい」とコメントした。
 
福島第1 2号機雨水注入400トン 3号機建屋でも始まる (河北新報)
 福島第1原発の雨水問題で、東京電力が2号機タービン建屋に注入したタンクのせきの雨水量は約400トンに上ることが分かった。同社が25日、明らかにした。
 東電は同日、3号機タービン建屋への雨水注入も始めた。「2号機建屋内の水位が注水で上昇し、注水先を分散させる必要が生じたため」と説明している。建屋内の水位(海水面からの高さ)は2号機が3メートル26センチ、3号機が3メートル30センチで、原子力規制庁の規制水位まで24センチ、20センチに迫っている。
 雨水の放射性セシウム濃度は検出限界値未満。建屋の水は2号機が4000万ベクレル、3号機が5600万ベクレルと超高濃度で汚染されている。雨水は建屋への注入により、建屋内の汚染水に混じって高濃度化している。
 東電は台風の影響でせきにたまり続ける雨水対策として、建屋への注水に踏み切った。東電は「注水は原子力規制庁の了承を得る必要はない」と話している。

福島原発、地下貯水槽へ雨水移送 台風27号の影響 (東京新聞)
 東京電力は26日、台風27号に伴う雨で、福島第1原発の地上タンク群を囲むせきの水があふれる恐れがあるとして、計7カ所のせきから二つの地下貯水槽に水を移送した。また別の2カ所のせきでは、水の放射性物質の濃度が法定基準を下回っているとして、ポンプなどで敷地内に排出した。
 東電によると、移送したのは「H2北」「H5」「H6」などのタンク群のせきにたまった雨水。地下貯水槽は敷地内に7カ所あり、4月の漏えい発覚で使用を中止していた。東電は今月24日にも一時的な運用として、せきの水を地下貯水槽に移送した。(共同)

安倍首相、福島産米の風評被害払しょくに努める考え強調 (FNN フジ)
安倍首相は25日、福島第1原発事故後、3年ぶりにコメの出荷を行った福島・広野町の町長から新米を贈られ、風評被害の払拭(ふっしょく)に努める考えを強調した。
安倍首相は「わたしたちは、やっぱり、しっかり、このおコメについての風評被害を払拭していくことではないのかなと。福島のコメはおいしい、全く安全には問題ないんだということを、今後とも発信をしていきたい」と述べた。
福島・広野町ではこの秋、福島第1原発事故後、3年ぶりにコメの出荷が開始された。
日頃から、官邸の食堂で福島産の米を食べている安倍首相だが、25日は、広野町の山田町長から新米の贈呈を受け、おにぎりを食べると、「もちもちしていて、おいしい」などと、福島県産のコメをアピールした。