2014年1月16日木曜日

原発関連会社の理不尽 二題

 15日、原発関連会社の非常識さを示す二つのニュースが流れました。普通の民間会社では全く考えられないような事柄です。
 
その1 
 国の紛争解決センターが、飯舘村の住民180人に「被ばくへの不安」に対する賠償を認める和解案を示したことに対し、東電が「根拠が明らかでない」として受け入れを拒否したことが分かりました。
                  ※ 正式名は原子力損害賠償紛争解決センター
 東電は紛争解決センターの設立時に「その和解案を尊重すると約束した筈です。それを「根拠が不明」などと言って受け入れを拒否するというのは言語道断で、一体何様だと思っているのでしょうか。加害企業としての自覚が全く感じられません。
 
 そもそも「根拠が明らかでない」などというのは発想が逆であって、もしも「被曝しても健康を心配しないでよい」というのであれば、住民にその理由を説明して理解を得る責任は東電にこそあります。
 新潟水俣病裁判の確定判決(=判例)でも、「公害源の追求が企業の門前にまで到達したときには、企業が発生源でないことの証明をする責任は企業の側にある(要旨)」と、「無責(任)」の証明義務は企業にあるとしています。それが「公害」問題における因果関係の証明に関する基本です。
 東電がこれほどまでに傍若無人に振舞えるのには、マスメディアの卑屈さを挙げざるを得ません。雪印乳業、吉兆、近くは焼肉チェーン店などの不祥事では、メディアは倒産するまで企業の責任を追及しました。しかし東電に対しては掌を返したように阿諛追従(ついしょう)し沈黙しています。東電の潤沢な広告費の前に屈服しているといわれています。
 
その2
 高速増殖炉「もんじゅ」で昨年5月、安全上重要な機器を含むおよそ1万4000の点検漏れなどが発覚して大問題になった日本原子力研究開発機構が今度は再発防止に向けてまだ見直しが終わっていないのに原子力規制委に対して「機器の点検が完了」、「再発防止に向けた管理体制の見直しを終了」などと虚偽の報告をしていたことが分かりました。
 昨年の不祥事では理事長が引責辞任をし心機一転した筈でしたが、いまだに旧態依然、何も変わっていないことが明らかにされました。まことに常識では理解できない話です。
 
 常識外といえばまだあって、この「もんじゅ」(建設費は1兆円超)は不具合のため10年以上も停止したままで、まだ1ワットも発電していませんが、それでも維持管理だけで何んと1日に5450万円(年間では199億円)も掛けていることになっています。
 一体どうすればそんなに経費を使えるものなのか、後学のために教えて欲しいものです。
 
 日本原子力研究開発機構は、以前の日本原子力研究所と動力炉・核燃料開発事業団が合体した独立行政法人で、3800人を擁し年間1900億円の予算を消化しています。
 しかし先の原発事故時に、何か被害拡大防止のための提案があったなどという話は聞きません。一体何をしているところなのでしょうか。研究のための研究、役に立たない研究ならば「道楽」といわれても仕方がありません。(原発の事故後 除染事業の元締めになりましたが、除染作業の実績やノウハウは何一つないので、いま莫大な「手数料」を手中にしつつゼネコンに除染の試行錯誤をさせているところです)
 
 以下に関係の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「被ばく不安」賠償認める和解案 東電が拒否
NHK NEWS WEB 2014年1月15日 
原発事故に関連して、国の紛争解決センターが、福島県の住民に「被ばくへの不安」に対する賠償を認める和解案を示したことについて、東京電力が「根拠が明らかでない」として受け入れを拒否したことが分かりました。
 
福島県飯舘村長泥地区の住民およそ180人は「原発事故のあとに避難区域への指定が遅れ、被ばくへの健康不安がある」として、国の「原子力損害賠償紛争解決センター」に集団で申し立てを行っています。
これについてセンターは去年、「被ばくへの不安」に対する賠償を認める考えを初めて示し、先月から一部の住民に具体的な和解案を提示していました。
しかし、会見した住民側によりますと、東京電力はこの和解案に対し15日までに、「根拠が明らかではなく受け入れられない」などと回答してきたということです。被ばくへの健康不安を理由に慰謝料を求めた申し立てはほかでも起こされていて、弁護団は「東京電力は和解案を尊重すると約束したはずでセンターの案を拒否することは許されない」と話しています。東京電力は「現在、和解案の内容についてセンターの考え方を確認しているところで、結果を踏まえて速やかに対応したい」というコメントを出しました。
 
もんじゅ 不備知りつつ「見直し終了」報告
NHK NEWS WEB 2014年1月15日
高速増殖炉「もんじゅ」の大量の点検漏れなどで試験運転を事実上禁ずる命令を受けた日本原子力研究開発機構が今度は再発防止に向けた見直しが終わっていないのに終えたとする報告をしていたことが分かりました。
原子力規制委員会は組織的な問題がないかなど、さらに詳しい報告を求め、命令が解除される見通しは立たないままです。
 
福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」を巡っては、安全上重要な機器を含むおよそ1万4000の点検漏れなどが発覚し、原子力規制委員会は去年5月、原子力機構に対し、再発防止策が整うまでもんじゅの試験運転の再開に向けた準備作業を行わないよう命令を出しました。
これを受けて原子力機構は去年11月、▽未点検だった機器の点検が完了したことや▽再発防止に向けた管理体制の見直しを終えたなどと規制委員会に報告していましたが実際には見直しが終わっていなかったことが15日の規制委員会の会合で指摘されました。
原子力機構が規制委員会に報告する前の日から始めたチェック作業で書類に多くの不備があることが分かり、▽点検の期日や手法の記載が事実と異なっていることや▽現場で使うマニュアルの内容が報告書と異なっているなど800余りに上るということです。
委員からは批判が相次ぎ、規制委員会は事実関係の誤りや組織的な問題がないかなどをさらに詳しく調べて報告するよう求めました。
規制委員会は去年5月の命令で、十分な管理体制を築くよう求めており、命令が解除される見通しは依然、立たないままです。
 
26年度政府予算案 もんじゅ維持費、増額199億円 福井
産経新聞 2013年12月25日 
■嶺南の自衛隊拠点に調査費計上
 政府が24日に発表した平成26年度予算案。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)の維持管理などの経費で前年度比25億円増の199億円を計上した。原発立地地域への自衛隊のヘリポートなどの拠点調査費100万円も盛り込まれた。
 
 自衛隊配備に向けた調査費については、原発が立地する嶺南地域でテロ対策や事故対策として自衛隊基地の誘致を求める声が相次いでおり、西川一誠知事も6月、小野寺五典防衛相に陳情を行っている。
 このほかの主な項目は、北陸新幹線を含む整備新幹線全体に720億円(前年度比14億円増)▽足羽川ダム38億円(同9億円増)▽全国の原子力災害の制圧道路68億円(同23億円増)-などとなっている。