2014年1月28日火曜日

放射能汚染水の解決は国の責任で 福島県市町村が意見書

 非常事態が続く福島原発の放射能汚染水問題について、国が全責任を持つ体制の確立を求める意見書が、福島県内の59市町村のうち49市町村で可決されました。
 
 昨年9月二本松市で決議された意見書では、原発事故『収束』ではなくて、放射能汚染水被害の拡大に直面しているとし、東電の資料、情報をすべて政府が管理・評価し、抜本的対策のため国内外の専門的知見を総結集し、「国家的非常事態」としてあたるべきだと述べています。
 
 東電は、自民党が不利にならないようにと昨年7月の参議選の投票終了を待って、それまで隠蔽していた地下水の汚染を公表しました。それを受けて安倍首相が、「今後は国が前面に立って汚染水の処理を進める」と国会で言明したのは8月の上旬でした。そして汚染水問題を検討する有識者会議も組織しました。
 それなのに地下水の汚染は解決するどころか深刻の度を増す一方です。そこに国の顔などは全く見られません。相変わらず東電が前面に立って、いわば荒唐無稽ともいえる説明を繰り返しています。一体どうなっているのでしょうか。
 
 東電はこれまで、汚染源は事故直後に2号機と3号機の原子炉建屋から漏れた汚染水であり、それらが地下水に徐々に移動した結果だと説明しているということです(最近、1号機も汚染源になっていると規制委から指摘されました)。
 海側の井戸水のベータ線は、東電が測定を開始してからは濃度が増える一方で、既に300万ベクレル/Lを超えました。そういう深刻な現象に対しても東電は全く説明が出来ていません。
 前述したことを前提にしていては、説明のしようもないのでしょう。
 
 
 福島第一原発敷地の下にはもともと日量1000トンの阿武隈山系の地下水が流れていて、地下水位が高いため地下構造物が浮力を受けて不安定にならないようにと、建設の当初から地下水を汲み上げて海に放出するということをずっと続けてきました。それ以外の地下水は海底盤の下を進んで海岸線から10キロあたりで海底に噴出しているということです。
 こうした事柄は福島原発の関係者であれば知っていたことですが、比較的最近まで公表されませんでした。
 
 「やむを得ず明らかにせざるを得ないもの以外は隠蔽しておく」。
 これが東電の基本的な態度のように思われます。それで事態が解決し収束に向かうというのであればまだしも、事実は日々深刻の度を加えています。それなのに国の顔は全く見られない。 
 これが福島原発の汚染水問題の現状です。
 福島県市町村の国が全責任を持つ体制の確立を求める意見書」に、国はどう応えようとするのでしょうか。
 
 尚、この問題に関しては共産党が昨年9月に「緊急提言}()を行っています。内容的に大いに参考にすべきものと思われます。
 
 ※ 2013年9月18日共産党が福島汚染水の危機打開のための緊急提言を発表 
 因みに提言は以下の4つの柱からなっています。
 (1)「放射能で海を汚さない」ことを、基本原則として確立する
 (2)放射能汚染水の現状を徹底的に調査・公表し、「収束宣言」を撤回するとともに、非 常事態という認識の共有をはかる
     (まず「収束宣言」を正式に撤回し、非常事態にあるという認識共有汚染水の現状について、何がわかり、何がわかっていないか、どこに問題があるのかについて、国内外の専門的知見を総結集して調査し、国民に情報を正直に公表する。政府の責任で、国内外の専門的知見を結集した体制をつくる。
 (3)再稼働と原発輸出のための活動をただちに停止し、放射能汚染水問題の解決のために、もてる人的・物的資源を集中する
     (汚染水問題の抜本的な解決のために、電力業界はもとより、産業界、科学者、技術者など、もてる人的・物的資源をこの大事業に集中させる。
 (4)東京電力を「破たん処理」し、「コスト優先・安全なおざり」を抜本的にただす
 
 以下に、福島県内49市町村が意見書に関する記事を紹介します。
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放射能汚染水の解決 国の責任で 福島県内49市町村が意見書
しんぶん赤旗 2014年1月28日
59市町村 
 非常事態が続く東京電力福島第1原発の放射能汚染水問題について、国が全責任を持つ体制の確立を求める意見書が、福島県内の59市町村のうち49市町村で可決されました。日本共産党福島県委員会が、27日までに明らかにしたものです。
 
 福島、郡山、いわき各市など主要都市をはじめ、自治体ぐるみ避難する浪江町、富岡町、飯舘(いいたて)村、さらに会津地方は17市町村すべてで可決しています。
 
 昨年9月議会で可決した二本松市の意見書では、「原発事故が『収束』に向かうどころか、放射能汚染水被害の拡大という危機に直面しているのは明白」だと指摘。東電の資料、情報をすべて政府が管理・評価し、抜本的対策のため国内外の専門的知見を総結集し、「国家的非常事態」としてあたるべきだと述べています。
 
 そのうえで、政府は「放射能で海を汚さない」ことを基本原則にし、「(事故)収束宣言」を正式撤回するよう求めています。さらに「事故収束作業や汚染水対策を東電まかせにせず、(国の)現地対策本部を設置し、政府が全責任を持つ体制を確立することを強く求める」としています。
 
 一方、県内原発全基廃炉要求は56市町村が表明しており、残る2町1村も3月議会で同様の態度を示す方向です。