2014年1月5日日曜日

東電が廃炉作業の日当ピンハネを容認する文書

 東電昨年11月8日福島原発での労務費割り増し分(危険手当など)の金額が「1万円」だったことを明らかにしたうえ、作業員の賃金改善のため12月発注分の工事からさらに1万円を増額する→2万円/日)と発表しました。
 それに対して有力元請会社からクレームが出されましたが、その後東電は、元請各社に「(作業員に渡される日当が)1万円増額されることを示すものではない」と説明する文書を配布していたことが分かりました
   ※ 2014年1月2日 「廃炉作業 危険手当増額の公表は困ると元請
 
 要するに東電と元請会社の契約内容は、下請けに明かさないのが業界の慣例」という、クレームに東電が屈して、ピンハネは各社の裁量に任せると容認したわけです。
 逆にこうした経緯から、元請や上位の下請が作業労賃からのピンハネに加えて、危険手当からも貪欲にピンハネをしてきたことが明らかになりました。それどころかある時期までは、大半の作業員が東電(=国)から危険手当が支給されていること自体を知りませんでした(手当を受け取っていませんでした)。
 
 国民の税金で賄われている廃炉作業費のかなりの部分が、このようなトンネル会社(中間搾取会社)のフトコロに消えているとは、絶句するばかりの現実です。
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東電:福島原発作業、日当「中抜き」容認…元請けに文書
毎日新聞 2014年01月04日
 東京電力が福島第1原子力発電所で働く作業員の賃金を改善するため、工事発注時に計算する人件費の単価(労務費)を1日1万円増やすと発表した後、元請け各社に「(作業員に渡される日当が)1万円増額されることを示すものではない」と説明する文書を配布していたことがわかった。発表の趣旨を事実上変え、元請けや下請けによる人件費の「中抜き」「ピンハネ」を容認する内容で、作業員から反発の声が上がっている。【前谷宏】
 
◇割増金「1万円増」発表後
 厳しい作業が続く福島第1原発について東電は、本来の労務費のほか、被ばく線量や作業内容に応じた「割り増し分」を加えて工事を発注。ただ具体的な金額は「今後の契約や入札に影響が出る」と公表せず、作業員らから「元請けや下請けによる中抜きを助長する」と批判が出ていた。
 しかし東電は昨年11月8日に福島第1原発の「緊急安全対策」を発表した際、これまでの労務費割り増し分の金額が「1万円」だったことを明らかにしたうえ、作業員の賃金改善のため翌月発注分の工事からさらに1万円を増額すると発表。配布資料にも「労務費割増分の増額(1万円/日→2万円/日)」と明記した。広瀬直己社長も記者会見で「元請けの皆さんにも(賃金改善を)徹底してくださいとお願いしますし、今回1万円増えることが末端の方(作業員)も分かるので、しっかりフォローしていきたい」と話した。
 ところが、東電は11月29日になって資材部長名の文書を元請け各社に配布。「緊急安全対策のうち、『設計上の労務費割増分の増額』に関するお願いについて」との表題で、「施策の内容が正確に伝わらず、取引先様の現場対応に混乱を招いた」と謝罪。プラス1万円の労務費の増額が「作業員の皆さまの賃金改善を図っていこうとするもの」と改めて説明する一方で「(作業員に支給される)割増額が更に1万円増額されることを示すものではない」と述べた。
 
 この内容について東電広報部の担当者は毎日新聞の取材に「作業員の賃金は請負各社との雇用契約で決められるもので、発注段階の労務費と実際に作業員に支払われる賃金とは異なることを説明した」と回答。発注段階の割増額を1万円から2万円に増額すると発表したことにも「代表的なモデルケースとして説明した。実際はより少ないこともあり得る」と述べ、実際の割増額は「契約上の話になるので回答は差し控えたい」と明らかにしなかった。11月8日の東電の発表は地元紙に「原発作業員手当を倍増」などと報じられていた。東電の文書について福島第1原発で働くある作業員は「賃金をきちんと増やす方針の会社とそうじゃない会社が出てきており、現場の不公平感が強まっている。東電の文書は作業員の士気の低下を引き起こしかねない」と話している。