2014年3月23日日曜日

国際的に「核燃サイクルの推進」を明言する非常識

 安倍首相は24,25両日にオランダ・ハーグで開かれる第三回核安全保障サミットで、原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明するということです。
 
 日本が既に44トン(=長崎に落とされた原爆の五千発以上)ものプルトニウムを保有していることの言い訳に、核燃料サイクルプルトニウムを使うということなのですが、物質収支的に何年かければどのように消費されるのかも不明で、再利用を名目に長年にわたって原発を動かし続けることになれば、まさに本末転倒です。
 
 そもそも、高速増殖炉は危険極まりなくかつ技術的な見通しもないとして、先進各国が一斉に開発から手を引いた中で、日本だけは、一旦役人が決めた方針は決して変えないという体質も反映して、唯一 高速増殖炉の開発を続けたのでした。
 しかしその結果は、1兆1千億円という莫大な予算を消費しながら、数十年も掛けたにもかかわらず一向に埒があかず、いまだに動く気配などありません。
 
 それにもかかわらず核燃料サイクル推進』してプルトニウムを消費する」と、この段階で国際的に明言するというのは、一体どういう神経をしているのでしょうか。「いい格好しい」をしたいのでしょうか。「もんじゅ」の実態については世界の関係者たちは先刻ご承知の筈で、正に恥の上塗りです。
 首相の周りには、そうした妄動を制止する人材はいないのでしょうか。
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首相 了承なく「推進」 核燃サイクル 与党協議の中
東京新聞 2014年3月21日
 安倍晋三首相が二十四、二十五両日にオランダ・ハーグで開かれる第三回核安全保障サミットで、原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明することが分かった。核燃料サイクルを「推進する」と明記した政府のエネルギー基本計画案に対しては、与党内で反対論が根強く、まだ閣議決定がされていない。政府・与党の意思決定前に、世界に向けて日本が将来も原発を維持する方針を発信することになる。
 
 プルトニウムは核兵器の材料となるため、利用目的がはっきりしないまま大量に保有していれば、テロや核拡散を招くとして国際社会から疑念を持たれる。日本は長崎に落とされた原爆の五千発以上に相当する四十四トンものプルトニウムを保有している。
 
 首相は核サミットで「利用目的のないプルトニウムはつくらず、保持しない」との方針を表明。安全が確認された原発は再稼働させて、核燃料サイクルによりプルトニウムを使っていく考えを示す。
 ただ、大量のプルトニウムを消費するのに何年かかるかの見通しは立っていない。再利用を名目に長年にわたって原発を動かし続けることになりかねない。
 
 核燃料サイクルに関しては、取り出したプルトニウムを利用するはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)はトラブル続きでほとんど動いていない。通常の原発で使用済み核燃料のプルトニウムを使うプルサーマル発電も、通常の核燃料に比べて二倍の高レベル放射性廃棄物が発生するなど問題が多い。