2014年4月4日金曜日

大間原発差し止め 函館市が提訴

 青森県北端の大間原発が、一昨年10月に建設を再開し、電源開発がこの秋にも安全審査を申請する準備を進めていることに対し、津軽海峡を挟んで最短で23キロの距離にある北海道函館市が、国と電源開発に対し、原発の建設中止を求める訴えを3日、東京地方裁判所に起こしました。
 自治体が原告となって原発の建設差し止めを求める裁判を起こしたのは、全国で初めてです。
 
 訴えの中で函館市は、「安全性が確保されたとは言えず、事故になれば自治体の機能が失われるほどの大きな被害を受ける」、「函館市が同意するまでは建設をやめるべきだ」と求めています。
 これは現在 函館市が原発建設の際の同意手続きの対象とはされておらず、原発建設の説明会もなかったことに対して、「函館市のような30キロ圏内の自治体も対象となるべき」とする主張です
 
 「安全性が確保されていない原発」がもしも事故になれば、「自治体の機能が失われるほどの大きな被害を受ける」以上、当然の要求です。
 
 NHKは函館市提訴のニュースの後半で、大間町が受ける「電源三法交付金」や原発から上がる固定資産税の額など原発設置の効能を報じていますが、それは長年の原発行政のゆがみが反映されたものであって、一旦事故が起きたときの深刻さにこそ焦点を合わせるべきでしょう。
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大間原発差し止め 函館市が提訴「危険だけを背負う理不尽」
田中龍作ジャーナル 2014年4月3日
 窮鼠猫を噛む。国と電力会社の横暴に対して自治体が反撃に出た―
 大間原発の対岸にあたる函館市が同原発の建設差し止めなどを求めてきょう、東京地裁に提訴した。自治体が原告となり原発の建設差し止めを求めて訴訟を起こすのはこれが初めてのケースだ。
 
 被告は電源開発株式会社と国。原告の函館市が求めているのは次の三本柱―
  ▼経産大臣の原子炉設置許可は無効。
  ▼国は電源開発株式会社に大間原発の建設停止を命ぜよ。
  ▼電源開発株式会社は大間原発を建設、運転してはならない。
 函館市は人口27万5千人。最も近い所は大間原発から23キロしか離れていない。いわゆる30キロ圏内である。
 東電・福島第一原発の事故を受けて原子力災害対策特別措置法が改正され、30キロ圏内の自治体に対して原子力防災計画の策定が義務づけられることになった。
 30キロ圏内の自治体は過酷事故が起きた場合に備えて、モニタリングや住民避難などの体制を整えておかなければならなくなったのである。
 
 負担が増えたにもかかわらず、原発建設の際の同意手続きの対象とはされていない。今回の訴えでは「函館市のような30キロ圏内の自治体も対象となるべき」としている。
 したがって函館市が大間原発の設置に同意するまでの間、国は電源開発株式会社に対して大間原発の建設停止を命じるべきである――というのが今回の訴えの骨組みだ。
 午後3時15分、東京地裁民事訟廷事件係。工藤壽樹・函館市長は代理人弁護士らに付き添われながら神妙な面持ちで訴状を提出した。
 
 工藤市長を突き動かしたのは危機感だ。原発事故後間もなく、福島へ視察に訪れた。「地域が崩壊してしまう。人が住めなくなる」。27万5千人の自治体の責任者は反芻するように話した。
 「国や電源開発に対して再三にわたって要請をしてきたが、何も対応してもらえなかった。地域の不安に対して何ら配慮して頂けなかった。函館市民の安全を守るために万(ばん)止むを得ず提訴に至ったことは残念」。工藤市長は無念さを滲(にじ)ませた。
 「『(国から)避難計画を作りなさいよ』と言われ、それなのに国や事業者からまともに相手にしてもらえない」。
 
 工藤市長によれば函館市への説明会も開かれなかった、という。「意見を言う場も設定してもらえなかった。危険だけを背負う理不尽さ…」。工藤市長は唇を噛みしめた。
 原発立地自治体ではない、30キロ圏内の自治体はいずれも重荷だけを背負うことになる。函館市はこの理不尽さに異議を唱えたのである。提訴の波紋は全国に及ぶ。
 
 
函館市が大間原発差し止め提訴
NHK NEWS WEB 2014年4月3日 
青森県で建設中の大間原子力発電所について、津軽海峡を挟んで半径30キロの範囲内にある北海道函館市が「事故になれば大きな被害を受ける」と主張し、国と事業者に原発の建設中止を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。
自治体が原発の建設差し止めの裁判を起こしたのは全国で初めてです。
 
青森県大間町の大間原発は東日本大震災で建設工事が一時中断しましたが、おととし10月に再開され、事業者の電源開発は運転開始を目指して、ことし秋にも安全審査を申請する準備を進めています。
これに対し、津軽海峡を挟んで最短で23キロの距離にある北海道函館市が、国と電源開発に対し、原発の建設中止を求める訴えを3日、東京地方裁判所に起こしました。
訴えの中で函館市は、「安全性が確保されたとは言えず、事故になれば自治体の機能が失われるほどの大きな被害を受ける」などと主張しています。
合わせて「函館市は事故の際に避難などの対象となる半径30キロ圏内に含まれており、函館市が同意するまでは建設をやめるべきだ」と求めています。
自治体が原告となって原発の建設差し止めを求める裁判を起こしたのは、全国で初めてです。
 
訴えについて国の原子力規制庁は、「訴えがあることは承知しているが、内容を把握していないためコメントは差し控えたい」としています。
また、電源開発は「訴えを起こされたのは誠に残念で、裁判を通じて考えを主張していきたい。今後とも、安全な発電所作りに取り組み、函館市にも情報提供や説明をしながら計画を推進していきたい」というコメントを出しました。
 
函館市長「国への提訴は苦渋の決断」
函館市の工藤寿樹市長は、提訴後の会見で「函館市は観光と水産の街で、もし大間原発で事故が発生すれば、私たちの受ける打撃は計り知れない。原発の建設にあたっては再三にわたって周辺自治体の同意を得るように申し入れてきたが、聞き入れてもらえなかった。国を相手取って裁判を起こすというのは苦渋の決断だ。町を守るためやむをえず、提訴に至ったことは残念に思っている」と話しました。
 
原発の地元・大間町では
大間原発の地元、青森県大間町は引き続き建設を推進する立場で、地元の商工関係者と共に原発が早期に稼働することを望んでいます。
大間町は、原発が立地する自治体などに国から交付される「電源三法交付金」を平成24年度までの30年間で総額およそ124億円受け取ってきました。
交付金は、消防車の購入や小学校の建設、それに病院の運営費用などさまざまな事業に充てられ、町を運営するうえで重要な収入になっています。
町は、この交付金に加えて、ことし11月に大間原発が完成するという前提で固定資産税の収入を見込んでいましたが、原発事故の影響で建設工事が遅れ固定資産税など町の収入の見通しに影響が出ています。
町は、大間原発の完成が平成30年度以降にずれ込むという想定で財政を見直した結果、原発の固定資産税の収入は来年度からの4年間で当初の見込みより140億円少なくなるという試算をまとめました。
このため、町は先月、来年度に予定していた町役場の建て替え工事を先延ばしにすることを決め、大間原発の早期の完成や稼働を望んでいます。
一方で、事業者の電源開発は新しい規制基準に基づいた国の安全審査に合格するまで原子炉など本体部分の工事を進めるのを控えていて、多い日で1700人ほどいた建設作業員がいまでは700人ほどに減っています。
このため、地元の飲食業や旅館業の中には工事の本格化や原発の早期稼働を期待する声が出ています。
訴えについて青森県大間町の金澤満春町長は、「ほかの自治体が決めたことで、コメントできない。大間町は今までどおり、推進の立場で取り組んでいきたい」というコメントを出しました。