2014年4月21日月曜日

動植物などの放射線像写真展

 原発事故でコイやモミジ、長靴、ほうきなど放射能に汚染されている様子は、オートラジオグラフィー(放射線写真)という手法で直接的に「可視化」されます。
 23日から28日まで、東京都品川区上大崎の「ギャラリー・やさしい予感」で、その「放射線像展」が開かれます
 
 放射性物質から放出されるベータ線粒子やガンマ線は、写真乳剤を感光・黒化させる作用があるので、写真乾板に放射能汚染体を(載せるなどして)近づければ、放射線の分布を示す映像が得られます。
 
 展示される映像は写真家の加賀谷さんが、東大名誉教授の森敏さんの協力を得て放射線写真にしたものです

 関連して19日の東京新聞の記事も併せて紹介します。
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被ばく、くっきり 23日から写真展
 東京新聞 2014年4月20日
 目に見えず、臭いもしない放射能による汚染の実態を見せたいと、写真家の加賀谷(かがや)雅道さん(32)が、東京電力福島第一原発事故の被災地に残された動植物などの被ばくの様子を「オートラジオグラフ」(放射線写真)と呼ばれる写真にした。
 
 このうち、約二十点を展示する「放射線像展」を二十三日から二十八日まで、東京都品川区上大崎の「ギャラリー・やさしい予感」で開く。
 展示するのは、コイやモミジなどの動植物のほか、長靴、ほうきなど生活道具の写真。原発事故で放射能に汚染され、住民が避難を強いられている福島県飯舘村や浪江町で集めた被写体を、東大名誉教授の森敏(さとし)さん(72)の協力を得て放射線写真にした。
 放射線写真は、放射線に感光する特殊な板に動植物などの被写体を載せ、被写体から放出される放射線を撮影する。放射性物質が付いたり蓄積したりした部分が影や黒い点となって板に写り、被ばくの様子を可視化できる。
 被ばく量が多いほど、被写体の元の形がはっきりわかるという。
 
 加賀谷さんは「放射能汚染を知るのに、放射線量の数字だけではわかりにくい。写真を見ることで汚染に対する想像が広がると思う」と話す。入場料五百円(学生は無料)。(藤川大樹)
 
  写真
2011年11月、福島県飯舘村で採取したモミジの放射線写真
  =写真は森敏さん、加賀谷雅道さん提供


<ビジュアル夕刊>放射線を撮る
 東京新聞 2014年4月19日
(前 略) 
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 見えない。匂わない。そんな放射能による汚染の実態を、見せる手法がある。ところどころに黒い斑点があるこの透明な鳥の写真は、オートラジオグラフ(放射線写真)と呼ばれるその手法で、福島県飯舘村にいたキビタキの被ばくの様子を写し出したものだ。
 
 放射線写真は、放射線に感光する特殊な板に鳥などの被写体を載せ、被写体から放出される放射線を撮影する。このキビタキは東京電力福島第一原発の事故で放射能に汚染され、住民が避難を強いられている飯舘村の牛舎で二〇一二年一月、写真家の森住卓(もりずみたかし)さん(63)が拾った。東大名誉教授の森敏(さとし)さん(72)が協力し、それを写真にした。
 鳥の形がうっすらと見えるのは、キビタキが全身に被ばくしているため。「翼の黒い斑点は、羽や体に降り注いだ放射性物質。腹部の色が少し濃いのは、昆虫や植物を食べて放射性物質が胃に直接入ったり、筋肉に蓄積したりしたのだろう」と森さん。また、森住さんは「福島の動植物の被ばくを何とか見える形にして、事故の風化を食い止めたい」と話す。
 
 宮沢賢治は長い時間軸でものをみつめ、詩集「春と修羅」の序で「おそらくこれから二千年もたつたころは…」と、遠い未来の人々の視点に思いをはせた。
 これから二千年もたった時代に生きる人々は、はるか昔の人間が残した放射性物質に、何を思うだろうか。自然豊かな福島に放出された放射性物質が消え去るまでのほど遠い時間を、今こそ想像したい。 (岩岡千景、藤川大樹)
 
 <8万年の月日> 福島第一原発から放出された放射性物質が10分の1まで減るのにセシウム137は100年。プルトニウム239は実に、8万年。実際にほとんどなくなるまでには、セシウム137で200年以上かかるとされる。
 

写真

キビタキ 福島県飯舘村で採取(森敏さん・森住卓さん提供)
 
 写真