2014年5月20日火曜日

「高齢原発」5基は廃炉? それとも運転延長? /福井

 昨年月に施行された改正原子炉等規制法は、原子炉の鋼板は核分裂時の中性子を浴びて急速に劣化するにもかかわらず、原発の寿命を運転開始から原則40年と定めましたそのうえ、特別点検を行って原子力規制委員会の審査に合格すれば、最大20年の運転延長ができるとし、その移行措置を決めました。
 移行措置は昨年7月時点で運転開始から37年を超す原発の運転延長を選ぶ場合、特別点検の結果を添えて、2015月に延長申請をするというものです。
  (改めて高齢原発に異常に優しい規制法であることが分かります)
 
 福井県内で対象となるのは、日本原電敦賀1号機(運転開始後44年関西電力美浜1、2号機(同43~41年)、高浜1、2号機(同39~38年)の計基です
 申請前に終了しておく特別点検には半年から1年掛かるので、そろそろ延長申請をするのかどうかを決める段階に入っているのですが、いまのところ各原発とも判断は「未定」ということです。
 
 
註.
 原子炉鋼板の劣化は鋼板の「脆性遷移温度」で計ります。鋼板の靭性が失われガラスのように脆くなる境目の温度で、緊急冷却した場合などに原子炉が壊れ(やすくな)る温度を意味します。
 鋼板の脆性遷移温度は通常は-16℃程度なのですが、九電玄海1号機の例では運転開始34年後には98℃まで上がりました。
 
   (関係記事)
     2013年12月15日玄海原発の再稼動は暴挙 井野東大名誉教授
     2013年6月13日原発40年超の運転も認めると 
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廃炉か運転延長か、判断の時期迫る「高齢」5基/福井
 中日新聞 2014年5月19日
 原発の運転期間を原則四十年と定めた改正原子炉等規制法に従って廃炉にするか、定期点検より厳しい特別点検を行って運転延長するか-。「高齢化」した原発を抱える電力事業者が判断する時期が近づきつつある。(福井)県内では、計四基が対象の関西電力が「秋までに判断する」という方針を示し、一基が対象の日本原子力発電は判断する時期を「未定」としている。
 
 昨年七月に施行された改正原子炉等規制法は、原発の寿命を運転開始から原則四十年と定めた。ただし、特別点検を行って原子力規制委員会の審査に合格すれば、最大二十年の運転延長ができる。移行措置として、施行時点で運転開始から三十七年を超す原発の運転延長を選ぶ場合、特別点検の結果を添えて、二〇一五年四~七月に延長申請しなければならない。
 
 特別点検には半年から一年ほどかかるとみられ、逆算すると判断する時期が迫りつつある。関西電力の場合は美浜1、2号機(美浜町)、高浜1、2号機(高浜町)の計四基が対象となり、八木誠社長は四月末の会見で「今年の秋までに検討したい」と述べている。
 一方、日本原子力発電は敦賀1号機(敦賀市)が対象。運転中の商業炉では最も古く、運転開始から四十四年余りたつが、判断時期は「未定」とする。旧原子力安全・保安院から四十年を超す運転の認可を受けた際に、運転期間を一六年末までと表明しており、運転延長できる期間は非常に短い。
 
◆新基準、特別点検 ハードル高く
 「運転延長か廃炉かの判断は、複雑な方程式を解くようなもの」と原発関係者は指摘する。
 四十年超の原発は、新規制基準の適合審査と特別点検の両方をパスしなければならない。比較的新しい原発でさえ、当初の予想を超えて適合審査が長期化し、電力各社は安全対策工事に多額を投じている。
 古い原発のネックは難燃ケーブルを使っていない点だ。新規制基準は「難燃ケーブル相当の性能」を求めており、取り換えには多大な費用がかかる。延焼防止剤を塗る方法もあるが、原子力規制委員会が認めるか不透明だ。大型の原発一基を新設するのに四千億円程度が必要とされるが、工事費用がこれを上回るなら廃炉を選ぶ可能性が高い。
 
 特別点検のハードルも高い。長年の使用で、炭素鋼などでできた原子炉容器がひび割れていないか、コンクリート製の原子炉建屋が劣化していないか、念入りな調査を求められる。延長期間は最大二十年だが、状態次第で希望通りの年数が認められない可能性も十分ある。
 このほか、二年後に控える家庭向け電力小売りの全面自由化や今後の電力の需給状況、火力発電用の燃料価格の変化など、考慮すべき要因は多い。(西尾述志)

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