2014年5月6日火曜日

泊原発アンケートで「地元」範囲の認識に差 避難計画も疑問

 北海道電力泊原発を巡る毎日新聞のアンケートでは、地元合意の範囲について、北海道後志地方の首長20人の中で意見が複雑に分かれました。
 北電と「安全確認協定」を結ぶ16市町村を含めた後志地方の全20市町村の同意が必要とする意見、50キロ圏内とする意見、30キロ圏以上の同意が必要とする意見、30キロ圏内とする意見、「事故シミュレーションに基づいて影響が出ると予想される全ての自治体から同意を得るべき」とする意見、地元同意は不要とする意見、という具合です
 地元合意は原子力規制委の安全審査後、原発再稼働するに当たって必要となるものです。
 
 また避難計画については、泊原発30キロ圏内の全13町村が2014年3月までに策定済みで、原発と至近距離にある岩内町と共和町はこれまで20回以上の訓練実績があります。
 その一方、村の一部が原発30キロ圏内に入る赤井川村は昨年10月の道原子力防災訓練に臨みましたが、行政も住民も原子力への知識が不足していることを実感したということです。
 また積丹半島の先端にある積丹町は、泊原発で事故が起きれば国道が寸断され「陸の孤島」になるため、海上保安庁の巡視艇を使って小樽港まで住民らを避難させる計画を立てましたが、昨年10月道防災訓練日は荒天のために中止になりました。「悪天候の中で原発事故があれば住民避難は困難」を確認する結果となりました。
 避難計画の実効性の確認にはまだほど遠い状態です。
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泊原発アンケート:「地元」範囲認識に差 避難計画も疑問
毎日新聞 2014年5月5日
 北海道電力泊原発を巡る毎日新聞のアンケートでは、原子力規制委員会の安全審査後、原発再稼働に必要となる地元合意の範囲について、北海道後志地方の首長20人の中で意見が分かれた。一方、半径30キロ圏内(緊急防護措置区域、UPZ)にある全13町村は、国から義務付けられている原発事故時の避難計画策定を終えたものの、その有効性に疑問を抱く首長の姿が浮かんだ。
 
◇解釈分かれる
 意見に開きがあったのは、地元同意の「地元」とはどこまでか、という点だった。
 黒松内、倶知安、積丹、余市の4町は、北海道電力と「安全確認協定」を結ぶ16市町村を含めた後志地方の全20市町村の同意が必要だと回答。余市町の嶋保町長は「福島の事故後、泊原発問題に取り組んできた後志地方全体に同意を求めるべきだ」としている。
 島牧村は50キロ圏内、仁木町は「30キロ圏以上の同意が必要」とし、留寿都村と古平町は30キロ圏内を主張。ニセコ町の片山健也町長は「福島の被害を考えれば、原発からの距離だけで同意取得の範囲を決めるのは無意味」とし、「事故シミュレーションに基づいて影響が出ると予想される全ての自治体から同意を得るべきだ」と指摘した。
 
 一方、寿都、蘭越、喜茂別、京極、赤井川、真狩の6町村は、泊村など原発周辺の4町村や5キロ圏内のみで良いと回答。真狩村の佐々木和見村長は「原発稼働で経済が振興し、かつ事故があった場合に大きな被害が出る地元4町村に判断を委ねたい」としている。
 
 「電源3法」による原発交付金を受ける4町村では、泊、神恵内両村が「運転再開は国が判断すべきだ」とし、地元同意は不要との考えだ。共和、岩内両町も同様の理由で回答しなかった。このため、国が同意の対象範囲を都道府県と立地自治体のみに限定した場合、泊原発では地元同意が簡単に得られる可能性もある。
 
◇訓練に戸惑い
 規制委は昨年7月、原発事故を想定した防災計画策定を義務付ける地域を従来の「8〜10キロ圏」から「30キロ圏」に拡大。アンケートでは、泊原発30キロ圏内の全13町村が避難計画などをまとめた防災計画を2014年3月までに策定済みと回答した。1989年に計画をまとめた岩内、共和両町は20回以上の訓練実績を強調。岩内町の上岡雄司町長は「道の計画に合わせて修正を重ねている」と答えた。
 
 一方、他の30キロ圏内の首長からは、計画や訓練への戸惑いの声が上がる。
 村の一部が原発30キロ圏内に入る赤井川村は昨年8月に計画を策定し、同10月の道原子力防災訓練に臨んだ。だが、赤松宏村長は「行政も住民も原子力への知識が不足していた。啓発強化の必要性を感じた」と回答。村の担当者は取材に「原発事故は人ごとだと思ってきたので、訓練の意義を見いだせない住民が多かった」と話した。
 積丹半島の先端にある積丹町は、泊原発で事故が起きれば国道が寸断され「陸の孤島」になる恐れがある。町は昨年10月の道原子力防災訓練で、海上保安庁の巡視艇を使って小樽港まで住民らを避難させる訓練を計画したが、当日は荒天のために中止した。
 
 泊原発再稼働に反対の立場の松井秀紀町長は取材に、「悪天候の中で原発事故があれば住民避難は困難だ。現在の計画で住民の命を確実に守れるとはいえない。原発防災は福島の事故後に出た話で、まだ戸惑いが大きい」と話した。【遠藤修平、高橋克哉】

泊原発再稼働に対する周辺自治体の賛否
泊原発再稼働に対する周辺自治体の賛否