2014年8月14日木曜日

チェルノブイリ「28年目の甲状腺がん」

 ブログ:Ourplanet-TVが、チェルノブイリ事故後、ウクライナで甲状腺の診断や治療に関して指導的な立場を果たしてきた「ウクライナ国立代謝問題研究所」の、医師たちの話を紹介しています。
 冒頭の字幕付き動画で、彼らの話の全容を聞くことができます。ブログの記事はその要点を書き起こしたものになっています。
 (動画のURLがコピーできないため、元記事にアクセスしてご覧下さい)
 
 記事を読むと、福島の児童の健康調査をしている日本の医師団が、「放射線の影響は見られず問題はない」という説明を繰り返していることに対して、大いなる疑いを生じさせます。
 
 同記事によると、事故当時児童(18歳以下)だった人たちの28年後の状況は下記のとおりです。
 
 事故当時0歳から18歳だった子ども15,800人を対象に継続的な調査を行った結果、1998年~2014年の16年間に4分の1の人に甲状腺異常が認められ、そのうち177人が甲状腺がんになった。(1986年~1998年については不明)
 超音波検査5ミリの結節が見つかれば、必ず穿刺細胞診を実施し、良性の場合は経過観察。悪性なら手術を実施する。最近は3~4ミリの結節でもがんのケースがあるという。
 調査をはじめた1998年に36人が甲状腺がんと診断され、その後、2年おきに調査を行い、毎回25人程度(年間12~13人)新たに甲状腺がんが発見されている。
 がんで甲状腺を切除された人たちには、事後ホルモン剤を毎日服用するなどのプログラムが組まれている。
 
 追記) 穿刺細胞診は喉の外側から針を刺して行うもので、動画を見た感じでは細胞の顕微鏡検査を含めても数分しかかかりません。
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チェルノブイリ「28年目の甲状腺がん」 ウクライナ報告番外編
Ourplanet-TV 2014年8月12日 
 チェルノブイリ事故後、ウクライナ国内において、甲状腺の診断や治療に関して指導的な立場にを果たしてきた「ウクライナ国立代謝問題研究所」。事故当時0~18歳だった子どもの治療のほとんどがここで行われてきた。昨年11月に取材した際のビデオ報告を配信する。
    (16分あまりの動画あり)
 
 同研究所は、クリニック部門と研究部門、ラジオセラピー部門で構成されており、クリニックのベッド数は175床。職員は600人で、所内には、甲状腺がんに特化したデータベースがある。
  
小児科・生殖器科
 小児科は1歳から17歳の子どもが入院している。ベッド数は30床で、ベッドは常に満床だという。疾患はまちまちで、生殖異常や発育の遅れ、糖尿病や甲状腺異常など。患者の数は年々増えており、特に発育異常と糖尿病が増えているという。これらの生殖に与える影響は深刻で、1992年に生殖器科が設置された。
 
穿刺細胞診
 30代か40代前半の若手の医師が、手際よく細胞診を行っていた。超音波を見ながら針を刺す超音波ガイド下甲状腺穿刺吸引細胞診だ。部屋の一角には顕微鏡を覗く技師がおり、その場で診断を下す。穿刺から診断までの時間は、1回わずか1分にも満たないスピードで実施している。甲状腺だけでなく、首の様々な器官全体を見ているという。
 
甲状腺手術
 手術室は4室で16人の医師が担当している。1日8〜9人、週32~36人、年間900人の手術が行われているという。事故前、甲状腺がんのこどもは120万人に8人だったが、1990年には62人の子どもが甲状腺がんでがん登録されている。
  
放射線治療科
 この病院では、甲状腺がんがリンパ節に転移した場合、アイソトープを利用した放射線ヨード治療を行っているが、その割合は25~30%だという。私たちが取材した時点で、放射線治療の病棟に入院している患者は12人だった。2回の治療となる10歳の子どももいた。その子は甲状腺がんを手術したもののリンパ節転移し、2度目の手術後、寛解に向けて治療をしていたが肺に遠隔転移してしまった。
 放射線治療のバリシティバリ医師によると、いったんリンパ節に転移すると、4〜5回手術しなければならないケースもあるという。またこの病棟では、5年から7年の間に8〜15%の再発があるという。アイソトープの治療を受けた患者は放射線源になっているので近づけないため、監視カメラで確認し会話をしていた。
 
コホート研究
 内分泌研究所では、1998年から米国の研究機関と協力し、事故当時0歳から18歳だった子ども15,800人を対象に継続的な調査を実施している。その結果、16年間に4分の1の人に甲状腺異常が認められ、そのうち177人が甲状腺がんになった。
 検査では、内分泌の専門医がまず問診し、触診をしてから超音波検査をする。5ミリの結節が見つかれば、必ず穿刺細胞診を実施し、良性の場合は経過観察。悪性なら手術を実施する。最近は3~4ミリの結節でもガンのケースがあるという。
 調査をはじめた1998年に36人が甲状腺がんと診断され、その後、2年おきに調査を行い、毎回25人程度、新たに甲状腺がんが発見されている。テレシェンコ副所長は「同じようにヨウ素を受けながら、事故直後に発症する人と、20年以上経ってから発症する人がいるのかは、専門家の間でも解明されていない。」と話す。
  
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