2014年9月15日月曜日

県・市 東電に質問状|ADR和解9案 東電拒否|原燃を認可法人化

 千葉県と県内の22市・団体は12日、東電に対して原発事故の影響で生じた損害賠償請求をめぐり、観光キャンペーンなど風評被害対策費用や、工業製品の放射線測定費用など、東電側が賠償責任を認めていない部分も、対象に含むべきだとする質問状を提出しました。回答期限は1015です。
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 原発事故で避難を余儀なくされた人たちの損害を巡り、原発ADRした和解案を東電が拒否し、9件が現在も協議中であることが分かりました。東電関係の社員や家族が出した損害賠償の43件は、東電が拒否して手続きが打ち切られました。
 ADRの和解案は低い額であることが先日明らかにされましたが、それでも東電が受け入れないというのは大変に問題です。
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 核燃料サイクルを担う日本原燃は現在電力会社が出資する「株式会社」の形態ですが、それを政府が認可し民間企業の拠出金で事業を行う「認可法人」変更することを、政府が検討していることが分かりました。2016~18年に向けての電力自由化で採算性のないサイクル事業存続が危ぶまれるためです。採算性も技術的な見通しもないままに、莫大な予算を消費し続ける原燃を今後も確実に存続させようというわけです。
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東電に質問状提出 (千葉)県と22市・団体 賠償請求めぐり
東京新聞 2014年9月14日
 (千葉)県と県内二十二市・団体は十二日、東京電力福島第一原発事故の影響で生じた損害賠償請求をめぐり、質問状を提出した。観光キャンペーンなど風評被害対策費用や、工業製品の放射線測定費用など、東電側が賠償責任を認めていない部分も、対象に含むべきだとただした。
 
 県が東電に賠償問題で質問状を提出するのは初めて。松戸や柏など二十一市と、南房総広域水道企業団とともに計七十四項目を質問した。
 県は二〇一二年から請求をしているが、提示額の十二億四千万円に対し、受取額は九億七千万円にとどまる。
 県は観光キャンペーンなどの風評被害対策で八千五百万円を請求しているが、東電側は「観光客減少は、原発事故と震災による影響を区分することが困難」としている。
 このほか、放射線に関する電話相談費用や千葉港での海水の放射線測定費用なども賠償対象として求めた。
 
 回答期限は十月十五日。県庁で質問状を受け取った東電の山村明・千葉補償相談センター所長は「理解していただける回答をお持ちできるよう取り組みたい」と話した。
 県から東電への同様の質問状は、岩手や埼玉、栃木県でも提出されている。 (村上一樹)
 
 
原発ADR 和解9案東電拒否 長期化で賠償拡大が背景
毎日新聞 2014年09月14日  
 福島第1原発事故で避難を余儀なくされた人たちの損害を巡り、国の原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続き(原発ADR)で示された和解案に対し、東京電力が拒否を表明した事例が11件に上り、うち9件が現在も協議中であることが、センター関係者への取材で分かった。東電は今年1月に経済産業相に認定された新総合特別事業計画で「和解案を尊重する」と明記したが、拒否は今年4月以降に続発しており、矛盾した姿勢が問われそうだ。
    
 東電の拒否回答は▽福島県浪江町民約1万5000人に精神的賠償を月5万円増額し15万円にする▽飯舘村蕨平(わらびだいら)地区の住民への被ばく慰謝料は50万円−−の2件が公表されていたが、他にも9件あることが判明した。
 
 関係者によると、原発ADRを担当する仲介委員(弁護士)から、東電の拒否事例について同センターに報告があり、今年7月末現在で計11件に上った。そのため、弁護士や大学教授でつくるADR総括委員会が8月、「和解案のみならず、ADR自体を軽視している」などと東電の対応に苦言を呈する所見を示した。その後、東電は2件の和解案を受け入れたが、残り9件については、仲介委員が拒否の撤回を東電に求めて協議が続いている。
 
 原発ADRは双方が和解案を受け入れると解決に至るが、受諾を義務づける法的拘束力はなく、どちらかが拒否して裁判に委ねることもできる。9月5日現在で、1万2888件の申し立てのうち約9500件で和解が成立。東電が拒否して手続きが打ち切られたケースは東電関係の社員や家族のみで、精神的賠償を転居後すぐに打ち切られたなどとして申し立てた43件という。
 
 拒否続発の背景には、住民の避難生活が長期化している現状を反映し、国の原子力損害賠償紛争審査会が多くの人に共通する被害を類型化して2011年8月以降に策定した賠償の指針を超える内容の和解案が相次いでいることがある。東電広報部は「国の指針に基づいて賠償を受けている人に対し、和解案が著しく公平性を欠く場合に拒否することもある」としている。【深津誠】
 
 
原燃の認可法人化検討 政府 核燃サイクル延命図る
東京新聞 2014年9月14日
 核燃料サイクルを担う日本原燃(青森県六ケ所村)について、電力会社が出資する株式会社から、政府が認可し民間企業の拠出金で事業を行う「認可法人」への変更を、政府が検討していることが十三日、分かった。
 
 電力自由化でサイクル事業存続に影響が出かねないため、国の関与を強めて維持を図る狙いだが、国営化は選択しない方針。
 十六日の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で議論を本格化させる。二〇一五年の通常国会での改正電気事業法案提出までに、政府は方向性を示したい考えだ。
 ただサイクル事業は費用が巨額で核兵器に転用可能なプルトニウムを扱うため、曲折も予想される。