2014年9月7日日曜日

[原発]原発事故自殺 東電控訴断念|福島避難民訴訟 国は 原賠法4条免責を主張せず

 福島原発の事故で一時帰宅中に自殺した女性の遺族約4900万円を支払うよう命じる福島地裁判決に対して、東電は5日、控訴しないと発表し被災者の自殺の原因を原発事故と認めた初の判決が確定することになりました
 今後はこれが「判例」となります。
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 福島原発事故県内へ避難した福島県の人たち(合計42世帯125人)が国と東電に損害賠償を求めている訴訟の準備的口頭弁論が開かれ、その中で国は、原子力損害賠償法が規定する原子力事業者以外の賠償責任の免責を「主張しない」としました。各地の訴訟で国が免責を主張しないと明言したのは初めてのことで、国の賠償責任を問うことが可能になりました。
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原発事故自殺訴訟 東電、控訴断念 確定へ
朝日新聞 2014年9月6日
 東京電力福島第一原発の事故で福島県川俣町から避難を強いられ、一時帰宅中に自殺した女性の遺族が東電に賠償を求め、福島地裁が東電に約4900万円を支払うよう命じる判決を出した訴訟で、東電は5日、控訴しないと発表した。遺族も控訴しない意向だ。被災者の自殺の原因を原発事故と認めた初の判決が確定することになった。
 
 女性は渡辺はま子さん(当時58)。2011年6月、計画的避難区域に指定された同町山木屋地区から福島市に避難。一時帰宅した翌日の同年7月1日に自宅庭先で焼身自殺した。
 夫の幹夫さん(64)ら遺族4人は12年5月、約9100万円の損害賠償を求めて地裁に提訴。地裁は先月、「原発事故がうつ状態と自殺の原因」と認め、東電に賠償支払いを命じた。
 東電福島広報部は5日、福島市内で記者会見を開き、「遺族に速やかに賠償金を支払うという観点から決定した」と控訴断念の理由を説明。原発事故後に起きた自殺を巡るその他の係争中の訴訟には「固有の事情内容を伺い、適切に対応したい」とした。
 同県いわき市で記者会見した幹夫さんは、はま子さんの遺影を抱え「(東電が)悩み、苦しみを分かってくれた」と語る一方で「はま子は帰ってこない。それが一番悔しく、つらい」と目を赤くした。原告弁護団の広田次男弁護士は、東電が賠償の早期支払いを目指したことが、他の自殺をめぐる訴訟の進展に「非常に大きな意味を持つ」と評価した。(伊藤弘毅)
 
 
 
原賠法4条に規定 賠償免責「主張せず」
東京新聞 2014年9月6日
 東京電力福島第一原発事故に伴う避難で精神的苦痛を受けたとして、県内へ避難した福島県の人たちが国と東電に損害賠償を求めている訴訟の準備的口頭弁論が五日、前橋地裁であった。国は、原子力損害賠償法(原賠法)が規定する原子力事業者以外の賠償責任の免責を「主張しない」とした。弁護団によると、各地の訴訟で国が免責を主張しないと明言したのは初めて。(伊藤弘喜)
 
 弁護団は、これで国の賠償責任を問うことが可能になり、国が十分な安全対策をとっていたかなど、訴訟で実質的な審理に入れるとみている。弁護団の鈴木克昌団長は「これは重要なポイントだった。各地の訴訟にも影響するだろう」と評価した。
 原賠法は四条で「原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責任がない」と規定。原発事故後、四条を根拠に国が責任を免れるかどうか法解釈をめぐって議論があり、各地の訴訟でも、国は賠償責任についての姿勢を明確にしていなかった。
 原告側は国と東電が安全対策を先送りしたために事故につながり、避難を余儀なくされたとして、一人当たり千百万円の慰謝料を求めている。国は訴訟で請求棄却を求め争う姿勢を示している。
 
 この日は原告二人が意見陳述。福島県南相馬市から夫や当時五歳と二歳の子どもと高崎市内に避難した三十代の女性は「事故により住み慣れた土地で生活する当然の権利を奪われた。東電と国は誠意を持って責任を果たしてほしい」と訴えた。
 また、昨年九月に一次提訴した三十二世帯九十人と、今年三月に二次提訴した十世帯三十五人を併合審理することが決まった。今月十一日には、三世帯十二人が新たに提訴する。来年五月、四日間にわたり証人尋問を集中的に行うことも決まった。判決は同九月ごろに出るとみられる。