2014年9月25日木曜日

トレンチ水の凍結止水は断念、地下水の浄化後法流もOKされず

 難航していたトレンチと建屋との接続部分のトレンチ内の水を凍結させる作業は、遂に完成の見込みが立たないのでギブアップすることになりました。
 今後はトレンチ内に水を張ったままセメントを流し込んで止水するということで、11月中旬からセメントを流し込み始め来年1月には作業を終えたいとしています。
 信じられないような長い回り道でしたが、山側の凍土壁工事を優先的に進めていたので、全体の工程には影響しないということです。
 
 それとは別に東電は、将来完成する凍土壁よりも外側の、護岸から海側に2m行ったところに直径約1mの鋼管杭を並べて打って、全長800m弱の遮水壁をほぼ完成させました。これを有効に機能させるためにはその内側の地下水をドレンとして抜いて、浄化後海に放流する必要があるのですが、それはまだ漁業者からOKが得られていません。
 本来であれば着工前に全体の構想を説明して、予め了解を得ておくのが筋なのですが、反対されて着工が出来なくなるのをおそれて、完成間近になってから相談をかけたのでした。しかし東電の作戦は上手く行かずにOKが得られないまま頓挫しています。 
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トレンチ汚染水対策 方針転換へ
NHK NEWS WEB 2014年9月23日
東京電力福島第一原子力発電所で「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルに流れ込んだ汚染水の対策が難航している問題で、東京電力は汚染水を抜き取ったうえで、トレンチをセメントで埋めるとしていたこれまでの方針を転換し、汚染水が入ったまま、セメントを流し込むことを検討していることが分かりました。
汚染水の抜き取りを並行して行うため、「汚染水が漏れるリスクは小さい」としています。
 
福島第一原発では、「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルに高濃度の汚染水が流れ込み、地下水と混ざって海に流れ出していると見られています。
東京電力は当初、汚染水の一部を凍らせて止水したうえで、ことし7月から汚染水を抜き取る作業を始め、その後トレンチをセメントで埋める計画でしたが、現在も十分に凍らず、汚染水が抜き取れない状態です。
このため東京電力はこれまでの方針を転換して新たに開発した特殊なセメントを汚染水が入ったままのトレンチに流し込み、トレンチを埋める作業と汚染水を抜き取る作業を並行して行うことを検討しています。
東京電力は「この作業によって汚染水が漏れるリスクは小さい」と説明していて近く、この方針を原子力規制委員会に示したうえで11月中旬からセメントを流し込み始め、来年1月には作業を終えたいとしています。
一方、福島第一原発では汚染水対策の一環として1号機から4号機の周囲の地盤を凍らせて建屋への地下水の流入を防ぐ「凍土壁」の建設が進められていて、トレンチの対策の遅れが建設に影響することも懸念されていますが、東京電力は「凍土壁の建設に影響はない」としています。
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海側遮水壁、月内運用困難 地下水放出、理解得られず
福島民報 2014年9月24日
 東京電力福島第一原発の汚染水対策の柱である海側遮水壁は98%まで完成したが、東電が目標とする今月中の運用開始は困難な状況になっている。「サブドレン」と呼ばれる陸側の井戸などからくみ上げた地下水を浄化して海洋放出することが運用開始の前提条件だが、漁業者の理解が得られていない。東電は放出への理解を求め、遮水壁完成を急ぎたい考えだが、先行きは不透明だ。
■根強い風評懸念
 海側遮水壁の運用開始を控えた東電は18、19の両日、くみ上げた地下水を浄化後に海に流す計画を、いわき、相馬両市で開いた説明会で初めて一般の漁業者に示した。しかし、出席者からは「浄化水とはいえ一度は汚染された水。風評対策は大丈夫か」「万一のトラブルはないのか」など反発する声が相次いだ。各会場とも、漁業者の理解を得ることはできず、次回の説明会の日程も未定となっている。
 東電は、サブドレンからの排水基準を地下水バイパスと同様に厳しくする方針だ。地下水バイパスでは、トリチウムの排出基準を法定放出基準(1リットル当たり6万ベクレル)の40分の1に当たる1500ベクレル未満に設定している。8月に行われたサブドレンの地下水の浄化試験では、トリチウムやセシウムなどの核種が地下水バイパスの排出基準を下回った。
 ただ、建屋に入る前の地下水バイパスと異なり、サブドレンからくみ上げる「一度汚染された水」への不安は根強い。東電福島復興本社福島広報部の担当者は「理解が得られるまで、丁寧に説明を重ねるしかない」と厳しい表情を浮かべる。
■前提条件
 政府、東京電力が放射性物質の海洋流出を大幅に防げると期待する海側遮水壁を完成させるには、遮水壁の内側(陸側)の地下水をくみ上げる必要がある。地下水をくみ上げずに遮水壁を閉じてしまうと、行き場を失った地下水の水位が上昇し、土壌に含まれる放射性物質と混じり合って汚染水が増加する懸念があるためだ。
 東電は運用開始が目前に迫った7月末、くみ上げた地下水を浄化後に海に流す計画を唐突に県漁連の幹部に示した。県原子力安全対策課は、漁業関係者らから理解を得られない背景には、東電の場当たり的な対応や見通しの甘さがあるとみている。同課の担当者は「汚染水対策は長期的な視点に立った計画策定が不可欠。丁寧な説明がなされていない」と指摘する。
■見えない国の姿
 漁業者への説明会には経済産業省の担当者が出席した。しかし、漁業者から上がった抜本的な風評被害への対策を求める声に、担当者が具体案を示すことはなかった。
 「全て東電任せで、政府の姿が見えない」。県や漁業者の間では、汚染水対策の柱の成否を左右する事態にもかかわらず、前面に出ない経産省に対する不信感も募る。
 県や漁業関係者からは、経産省が東電とともに地元への迅速な情報提供や説明を続けるよう求める声も上がった。
 一方、小渕優子経産相は7日、就任後初めて福島第一原発を視察し、廃炉や汚染水対策について「全体としてコントロールされている」との政府の認識をあらためて示した。だが、海側遮水壁をはじめとする対策の実施には、課題が山積しているのが現状だ。
【背景】
 東京電力は平成24年4月、福島第一原発港湾内に全長780メートルの海側遮水壁を設置する工事に着手した。護岸から海側2メートルの位置に長さ約20~30メートル、直径約1メートルの鋼製の円筒を海底に打ち込み、つなぎ目をゴムなどで埋める。最後は4号機の海側に円筒を並べ、護岸前に砕石を積み壁を閉じる計画だ。東電によると、港湾は現在、シルトフェンスと呼ばれる幕を張り、外洋への放射性物質の流出を防いでおり、周囲の海水の放射性物質に大きな変動は確認されていない。海側遮水壁の設置で、汚染水の港湾に流れ出るのを、より強力に防げるとしている。