2014年12月20日土曜日

廃炉費用全利用者が負担|東海第二訴訟 争点は耐震、耐津波「中心」にと地裁|福島のセシウム 隅田川底土等に蓄積

 原発の廃炉会計制度見直しに関する経産省の有識者会議は、2016月の電力小売り全面自由化後も、大手電力会社の原発廃炉費用を電気料金に転嫁する方針を決めました。電力小売りの全面自由化によって料金競争が激しくなれば、廃炉費用の上乗せが難しくなると予想されるため、新しい仕組みをつくるものです原発の擁護に至れり尽くせりの経産省の態度です。
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 東海第二原発の運転差し止め訴訟の第回口頭弁論で、地裁は口頭弁論に先立って、「原発付近で起こる地震や津波の規模をどう想定し、それに耐える設計をどう行うかが現時点で中心的争点と考えられる」と争点を整理ました。
 この段階での争点整理は異例とのことですが、弁護団は、「われわれも地震と津波が重要な争点と思っており、この部分が全く反論されていないことが明確になった」と整理案を高く評価しました。
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 福島原発事故東京の都心部を流れる隅田川の底土に、かなり高い濃度の放射性セシウムが長期的にたまり続ける可能性の高いことが分かりました。大きく蛇行し、流れが緩いためということです。隅田川同様、埼玉県を経由して東京湾に注いでいる荒川は水量と流れがあるため、河口域で沈殿していることが確認されました。
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廃炉費用転嫁を容認 全利用者が負担
東京新聞 2014年12月18日
 原発の廃炉会計制度見直しに関する経済産業省の有識者会議は十七日、二〇一六年四月の電力小売り全面自由化後も、大手電力会社の原発廃炉費用を電気料金に転嫁する方針を決めた。全ての電力利用者に負担してもらう経産省案を大筋で認めた。大手電力が老朽原発の廃炉を円滑に進められるよう、確実に費用を回収できるようにする。
 
 有識者会議は、転嫁の方針を盛り込んだ報告書を来年一月に取りまとめる予定だ。原発を持たない新規参入の電力小売会社の利用者も費用を負担することになり、反発も予想される。経産省は今後、例外を設けるかどうか議論する。
 現在の制度は、大手電力がコストを電気料金の原価に算入する「総括原価方式」により、廃炉費用を電気料金に織り込んで徴収している。電力小売りの全面自由化によって料金競争が激しくなれば、廃炉費用の上乗せが難しくなると予想されるため、新しい仕組みをつくる
 電力自由化では、一八~二〇年をめどに実施される「発送電分離」により、大手電力から分離して送配電会社ができる。
 電力小売会社は大手電力のグループ会社である送配電会社に送電線の利用料(託送料)を支払う。経産省は託送料に廃炉費用をプラスし、回収できるようにする考えだ。
 
 
東海第二原発訴訟争点 耐震、耐津波「中心」に 地裁
東京新聞 2014年12月19日
 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発の運転差し止めなどを県内外の住民が求めた訴訟の第八回口頭弁論が十八日、水戸地裁(新谷晋司裁判長)であった。地裁は口頭弁論に先立って訴訟の争点整理案を作成。原発付近で起こる地震や津波の規模をどう想定し、それに耐える設計をどう行うかが「現時点で中心的争点と考えられる」とし、原告と被告側の国、原電の三者に示した。 (妹尾聡太)
 
 原告弁護団によると、全国の原発訴訟のうち、審理が十分でない段階で地裁が争点を整理するのは異例。弁護団の海渡雄一弁護士は、閉廷後に水戸市内で開いた会見で「われわれも地震と津波が重要な争点と思っており、この部分が全く反論されていないことが明確になった」と述べ、整理案を高く評価した。
 
 整理案によると、地裁は「今後の審理のための便宜上の分類案で、最終的な争点としての重要性に直結しない」と前置きし、約二十項目ある争点をABCの三種類に分類。Aを「現時点で中心的で、反論がまだ終わっていない」、Bを「反論がまだ終わっていない」、Cを「現時点で主張立証の補充を求める必要性はない」などとした。
 
 Aは耐震、耐津波関係の二項目。これについて原告側は「原電の地震想定は不十分。津波の高さの想定も不足している」と指摘している。一方、被告側の原電は「耐震設計に問題はない。津波の高さは過去の津波や活断層の調査結果から想定した」などと主張し、反論の不足分は今後の審理の中で求められる。
 争点整理案ではこのほか避難計画、事故防止対策、事故時の原電の補償能力などを「B」とし、原発稼働に必要な財務基盤が原電にあるかなどを「C」と位置付けている。海渡弁護士は「整理案はおおむね良いが、ABC分類には異論もある」とした。原告、被告ともに今後、地裁に争点整理案の修正を求めるという。
 
 この日の口頭弁論で原電は、今年五月に関西電力大飯原発(福井県おおい町)の運転差し止めを命じた福井地裁判決を「司法に求められる客観性を欠いている」などと批判し、「同判決は東海第二原発を含む全国の原発に当てはまる」とする原告側に反論した。原告側は、原電の経営基盤が弱いため重大事故への対応が難しいことや、東海第二原発の位置は原発を設置する場所として適切でないことなどを主張した。
 
 次回の口頭弁論は二〇一五年三月十二日。
 
◆水戸地裁が示した主な争点 
A(反論がまだ終わっておらず、現時点で中心的と考えられる争点)
・地震の想定、対策が十分かどうか
・津波の想定、対策が十分かどうか
 
B(反論がまだ終わっていないと思われる争点)
・東海第二原発の立地は適法に審査されたか
・避難計画が策定されなくても運転できるか
・過酷事故や老朽化への対策が十分かどうか
・事故に対処できる財務基盤が原電にあるか
 
C(事実関係に争いがないか、もっぱら法的判断に関するため、現時点で主張立証の補充を求める必要性はないと考えられる争点)
・原発に求められるべき安全性はどの程度か
・原発稼働に必要な財務基盤が原電にあるか
・差し止めで生じる不利益をどう考慮するか
 
 
福島事故 放出セシウム 隅田川底土 続く蓄積
東京新聞 2014年12月19日
 東京電力福島第一原発事故の放射能汚染問題で、本紙が新たに東京の都心部を流れる隅田川の底土を調査したところ、かなり高い濃度の放射性セシウムが長期的にたまり続ける可能性の高いことが分かった。川は大きく蛇行し、流れが緩いことが大きく影響しているとみられる。
 
 本紙は首都圏の湖沼や東京湾、福島県の農地などで汚染の調査を続け、今回が六回目。
 十月から十二月にかけ、隅田川最上流部の岩淵水門(東京都北区)から日の出桟橋(港区)まで八地点(橋では左右両岸)で底土を採取。
 荒川は九月に実施した河口部に加え、埼玉県秩父市まで採取した。底土は乾燥させた後、それぞれ八時間かけ、セシウムの放射能濃度を測定した。
 
 その結果、荒川は河口域で一キログラム当たり三〇〇ベクレルを超える汚染が確認されたが、さかのぼっていくと濃度が急速に低下。河口部から約十七キロの江北橋(足立区)では一〇〇ベクレルを下回り、もっと上流部では五〇ベクレルを下回るレベルだった(詳細は分析中)。
 一方、隅田川は一四六~三七八ベクレルと全般的に濃度が高く、浅草周辺などの中流域が高かった。水がよどみやすい蛇行部の内側は濃度が高くなる傾向も確認された。
 測定結果について、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「水量と流れのある荒川は、放射性物質が一気に河口部まで運ばれた。隅田川は流れも緩く、大雨で徐々に海に運ばれていくとしても、濃度が下がるには長い年月がかかる。今後は半減期が三十年と長いセシウム137が汚染の中心となる。市民が底土に触れる機会は少ないだろうが、水がよどむ部分や河口域がどうなっていくのか、監視が重要になる」と分析した。

 
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