2014年11月30日日曜日

原発政策 各党の衆院選公約

 安倍首相は、今回の衆院選は「アベノミクスの是非を問うもの」と位置づけたようですが、実際に与党で過半数を獲得すれば、選挙で信任されたとして原発の再稼動に邁進することは目に見えています。
 
 河北新報が衆院選における各党の選挙公約を整理して表にまとめました。
 各党の公約の概略が分かりますので紹介します。
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衆院選 原発政策 各党公約出そろう
河北新報 2014年11月29日
 衆院選(12月2日公示、14日投開票)で主要政党が掲げる原発政策の公約が出そろった。各党とも福島第1原発事故を踏まえ、原発再稼働の是非や目指す方向性を示したものの、「核のごみ」の最終処分を含む核燃料サイクル政策への言及は有無が分かれた。
 各党の公約は表の通り末尾に添付
 
 原発政策は「依存度を可能な限り低減」(自民党)、「2030年代の稼働ゼロ」(民主党)、「新設は認めない」(公明党)など、将来的に原発依存から脱却し、原発比率を下げる方向性は各党で共通だった。共産党と生活の党、社民党は、原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査中の原発を含め、再稼働を認めないと明記した。
 ただ、自民党は唯一、原子力を「重要なベースロード電源と位置付け、活用する」と併記。脱依存なのか推進なのか、スタンスの曖昧さに有権者が戸惑う可能性がある。
 
 一方、青森県六ケ所村で計画されている使用済み核燃料の再処理や、高レベル放射性廃棄物の最終処分など、原発稼働と切り離せない関係にある核燃料サイクル政策には、自民、民主、生活の各党が言及していない。
 維新の党と共産、社民は、サイクルの廃止や撤退を明記。公明は使用済み核燃料の直接処分も視野に見直しを検討し、処分地の見通しが立たない高レベル廃棄物の最終処分も「解決の道を検討する」とした。次世代の党も「サイクルと、最終処分場の選定問題に具体的な結論を出す」と踏み込んだ。
 
 各党の公約について、元経済産業省職員で、NPO法人社会保障経済研究所(東京)の石川和男代表は「原子力政策はフロントエンド(燃料製造-発電)とバックエンド(再処理-廃棄物最終処分)の両方がないと不完全。政権担当経験があり、バックエンド政策の難しさを知る自民や民主は公約に書きにくかったのだろう」と分析。「政策実施に伴うコストなど国民に耳障りな部分は各党とも触れていない」と物足りなさを指摘した。
 
 政策の具体的な工程や実施に伴うマイナス面への対策といった判断材料がないと有権者も賛否を示しづらいのは事実。論戦では、各党がより具体的に政策を提示し、議論する必要がありそうだ。
 

高浜原発1・2号機稼働延長!?! 小出ジャーナル

 29日の小出ジャーナル(第99回)は、高浜原発1号機、2号機40年超の運転を目指している問題を取り上げました。
 高浜原発の原子炉は中性子のアタックを受けて劣化し、劣化の指標である延性脆性遷移温度が現に95℃にも上がっていると指摘し(正常値はマイナス数十℃)、そんな装置は「もう止めるのが当然のことだろう」と述べています。
 
追記
 小出氏は、来年3月末に京都大学を定年退職し、大阪府泉南郡熊取町の京大の原子炉実験所を離れるということです。そしてそれ以後はしばらく講演等の仕事を減らすつもりとのことです。
 詳細は下記をクリックして下さい。(2014/10/28追記の項)     
           ⇒ http://healing-goods.info/koide/ 
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特別検査で高浜原発1・2号機稼働延長か?
第99回小出裕章ジャーナル 2014年11月29日
ラジオ放送日 2014年11月28日〜12月5日 
 
 40年経ったのになおかつ、それを動かそうということ自体が私は随分異常なことだと思います・・・
 
石丸次郎 : 今日は、関西電力の高浜原子力発電所の1号機、2号機の再稼働についてお話を伺いたいと思います。
小出さん : はい。
石丸    : 関西電力が福井県にある高浜原子力発電所1号機、2号機。これは74年に稼働が始まりましたので、40年が経とうとしている原発ですけれども、これを特別検査を申請して、また再稼働させようとする動きが見えてますね。
小出さん : はい。
石丸    : 現行の法律では、基本的に原発の寿命は40年。特別検査をして、合格すれば20年プラスして60年まで稼働が一応可能ということになっておりますが、やっぱり心配になるのは、相当老朽化してるんじゃないかと。40年も動かし続けてということが真っ先に頭に浮かびますけれども。これ、どうですか?40年という稼働の原発は、どう考えたらいいでしょうか?
小出さん : 皆さん、ご自分の周りのことを考えて頂きたいのですが、例えば自分が乗っている車、40年前の車であったとすれば使い続ける気がするでしょうか?
石丸    : なるほど。
小出さん : あるいは、家庭の電化製品でもそうですけれども、40年前の物って、これからもずっと使っていこうと思うのが、むしろ不思議だろうと私は思います。原子力発電所というのは、特に安全性に十分な注意を払わなければいけない機械なわけですし、それがもう40年の寿命というか、40年経ったのに、なおかつ、それを動かそうということ自体が私は随分異常なことだと思います。
石丸    : なるほど。
小出さん  : 一番問題なのは、原子炉圧力容器と言ってる炉心を格納している圧力釜なのですが、それが中性子を被ばくしながら、どんどんどんどん劣化してきてしまっているわけです。
石丸    : やっぱり、鋼鉄製でも劣化してくると?
小出さん : はい、そうです。もちろん人間は被ばくをすれば、簡単に死んでしまうわけですけれども、鋼鉄も被ばくをすればするだけ劣化していくわけです。
     皆さん、家庭で使ってる鍋とガラスでできているコップという物を考えて頂きたいのですが、普通、私達が生活している場所というか、温度ですね。気温10℃、20℃、或いはマイナス零下何℃になるということもあるかもしれませんが、普通、鉄は割れないのです。ガラスは簡単に割れますけれども、鋼鉄は割れません。トンカチで叩いても、例えば落としたって、ひしゃげたり曲がったりするかもしれませんけども、割れないという性質を持っています。
     ただ、その鋼鉄もどんどんどんどん冷やしていくと、ある温度以下になると簡単に割れてしまう。つまり、ガラスのような性質になってしまうという温度が実はあるのです。
      それを私達は延性。普通、その鋼鉄が割れないというのを私達は「延性」と呼んでいるのですが、延びるのですね。金属というのは。それから、ガラスのように簡単に割れてしまう物を「脆性」と私達は呼んでいるのですが、温度が低いと大抵の物は脆性なのです。脆性から延性に変わる温度というのがあって、それを私達は「延性脆性遷移温度」と呼んでいます。
      鋼鉄の場合には、それが通常だと零下何十℃という所で、それ以上の温度であれば延びる。つまり、簡単には割れないという性質を持っているのですが、原子炉が稼働して、鋼鉄が被ばくをするに従って、その温度がどんどんどんどん上がってくるのです。例えば、高浜原子力発電所の1号機の場合には、すでに脆性から延性に変わる温度が95℃という値がすでに数年前に得られています
石丸    : これ、えらく高くなってるっていうことですね?
小出さん : どんどんどんどん、その遷移する温度が高くなってきてしまっていて、95℃以上であれば、まだ金属の性質を持っているけれども、95℃以下、つまり普通、私達が生活している温度の状態では、もう高浜原子力発電所の原子炉はガラスなのです。ですから、何かコトがあれば、バリっと割れてしまうという、そういう危険な状態にすでになってしまっています。本当であれば、もうこういう原子炉は動かさないという判断をするのが妥当だろうと私は思います。
石丸    : なるほど。脆くなる温度が上がってきたと?
小出さん : そうです。はい。
石丸    : これは、中性子を浴び続けたせいなんですか?
小出さん : そうです。まさにその通りです
石丸    : ということは、どんどんどんどん脆くなって、40年間脆くなってきた物を、でも使い続けざるを得ないわけですよね?交換はできないわけですもんね?
小出さん : 交換はできない。ですから、原子力発電所の寿命というのは、もともと40年ぐらいだろうと言われていたわけですけれども、それは、この原子炉圧力容器というものが交換できないし、それがどんどん中性子を被ばくして劣化してくるので、40年ぐらいで止めておくのが妥当だろうなと初めに考えたのです。その時期がもう高浜原子力発電所にはきているわけですし、私はもう止めるのが当然のことだろうと思います。
石丸    : なるほど。動機が経済的な動機、つまり欲ですよね?
小出さん : はい、そうです。
石丸  : 儲けたいということで、この安全の問題がまた二の次になるようなことって本当に困りますよね?
小出さん : はい。 
石丸    : これも高浜の問題もですね、この脆性、脆くなる、ガラスのように脆くなるっていうこと。どれだけ検査で規制の方が検討するのかちょっと分かりませんけれども、注目していきたいと思います。
小出さん : はい。
石丸  : 小出さん、今日はどうもありがとうございました。
小出さん : ありがとうございました。
 

2014年11月29日土曜日

自民道連 泊原発再稼働を重点政策|福島作業員3割が偽装請負

 自民党道連は27日、衆院選に向けた道内の重点政策を発表しました。エネルギー政策に関して「原子力発電の再稼働」を盛り込み、北電泊原発再稼働を含め、再生可能エネルギーなど持続可能なエネルギー構成を目指すとしています。 何一つメリットのない原発になぜこだわるのでしょうか。
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 東電福島原発で働く作業員へのアンケートを実施した結果、3割近い回答者の雇用形態が偽装請負に該当する疑いがあることが判明しました東電は、会社名が判明した19社に対して、偽装請負の有無を確認した上で「是正するよう要請する」としています
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泊原発再稼働を容認 自民道連が道内の重点政策
北海道新聞 2014年11月28日
 自民党道連は27日、衆院選に向けた道内の重点政策を発表した。エネルギー政策に関して「世界一厳格な安全基準に基づく原子力発電の再稼働」を盛り込み、北電泊原発(後志管内泊村)再稼働容認の姿勢を示した。原発再稼働を含め、再生可能エネルギーなど持続可能なエネルギー構成を目指すとしている。 
 
 「アベノミクス効果を地域のすみずみまで波及」「新たな成長戦略で産業と雇用を創出」など重点6項目と12の柱で構成。環太平洋連携協定(TPP)交渉については「『農林水産物の重要品目の関税撤廃を認めず、こうした聖域が確保できないと判断した場合は脱退も辞さない』とした、自民党及び衆参農林水産委員会の国会決議を順守」と脱退の可能性にも言及し、「北海道の立場をしっかりと主張する」とした。昨年夏の参院選に向けた重点政策と同様の立場を取った。 
 
 重点項目には人口減少対策も盛り込み、「安心して子供を産み育てられる環境の整備」などを掲げ、具体策として「母子・父子家庭の就業・生活支援と自立支援センターの設置促進」「幼児教育の無償化の推進」などをあげている。
 
 
第1原発、3割が偽装請負の疑い 作業員アンケート
東京新聞 2014年11月27日
 東京電力は27日、福島第1原発で働く作業員へのアンケートを実施した結果、3割近い回答者の雇用形態が偽装請負に該当する疑いがあることが判明したと発表した。
 昨年10~11月に実施した前回調査よりも約10ポイント増加。東電は会社名が判明した19社に対して、偽装請負の有無を確認した上で「是正するよう要請する」としている。
 東電によると、アンケートは労働環境を改善するため、8~9月に社員を除く全ての作業員6567人を対象に無記名方式で実施。約7割の4587人が回答した。 (共同)
 

大飯、高浜再稼働差し止め仮処分 申請却下 続報

 関電大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分」申請に対して、大津地裁は27日、それを却下する決定を行いました。
 
 大飯原発3、4号機については既に運転差し止めの「本訴訟」が行われて、今年5月に「運転差し止め」の画期的な判決が下されました。その分今回の却下の決定には落胆しましたが、これまでのように国や電力の原発は安全であるという言い分をそのまま鵜呑みにしたというものではないようです。
 
 却下の理由は「原子力規制委員会が、いたずらに早急に、再稼働を容認するとは到底考えがたい」から、それに先行する仮処分の必要はないというものでした。
 審理の最大の争点だった「基準地震動」について、原告側が「関電が過去の地震動の最高値でなく平均値に基づいて設定した」ことを不当であると指摘したことに対して関電が「反論を放棄した」ことから、それを確定できなければ再稼働はあり得ないとの判断も示しています。
 
 仮処分申請は却下されたものの内容的に「実質的勝訴」とする見方もあって、弁護団長は「裁判所は再稼働容認の判断を出せる状況ではないと明言した。規制委は厳粛に受け止めるべきだ」と述べまし
 
 続報として東京新聞、毎日新聞、京都新聞の記事を紹介します。
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大飯、高浜再稼働 「早急な容認考えがたい」
東京新聞 2014年11月28日
 滋賀県などの住民らが、関西電力の大飯原発3、4号機(福井県おおい町)と高浜原発3、4号機(同県高浜町)=いずれも運転停止中=の再稼働差し止めを求めた仮処分の申し立てで、大津地裁(山本善彦裁判長)は二十七日、「現時点で差し止める必要性はない」として、却下する決定をした。
 決定文では、差し止めの必要性がないとした理由を原発の安全性の観点からではなく「原子力規制委員会が、いたずらに早急に、再稼働を容認するとは到底考えがたい」からとした。
 最大の争点だった「基準地震動」について関電が反論を放棄したことや、原発事故を想定した住民の避難計画が策定されていないことなどに触れ「これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ない」との考え方を示した。
 住民らは、大飯と高浜で過酷事故があれば住民の生存権や人格権が侵害されると主張。原発の耐震設計の目安となる基準地震動を、関電が過去の地震動の最高値でなく平均値に基づいて設定しているなどとして危険性を訴えていた。関電側は「安全性は確保されている」と却下を求めていた。
 対象の原発四基はいずれも停止中。関電は昨年七月、再稼働を目指して新規制基準への適合性審査を申請し、原子力規制委が審査を進めている。
 関電は「妥当な判断。今後も安全対策に万全を期すとともに、一日も早い再稼働を目指したい」とコメントした。
 
◆住民ら「不当」 「実質的勝訴」
 関西電力の原発差し止めを求めた仮処分申し立てが大津地裁で却下されたことを受け、住民側は二十七日、大津市内で記者会見し「不当な決定だ」と非難の声を上げた。一方で、原子力規制委員会が直ちには再稼働を容認しないと言及した点について「実質的勝訴」とする声も出た。
 住民側の辻義則代表(67)=滋賀県長浜市=は「裁判所が、再稼働を進める政府や電力会社の姿勢に不信を述べたともいえる。関電は再稼働に向けての手続きをいったん停止すべきだ」と話した。
 弁護団長の井戸謙一弁護士は「裁判所は規制委が再稼働容認の判断を出せる状況ではないと明言した。規制委は厳粛に受け止めるべきだ」と述べた。
 
 
原発再稼働差し止め:却下決定「再稼働あり得ない」指摘も
毎日新聞 2014年11月28日  
 滋賀、大阪、京都3府県の住民計178人が関西電力に対し、福井県の大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、27日に大津地裁が出した却下の決定は、事故対策などが進んでいない現状を指摘した上で仮処分の緊急性がないと判断した。住民側は、裁判所の認識と再稼働に向けた実際の動きの「ずれ」を批判する一方で、避難計画策定の遅れなどへの言及を一定程度評価した。
 住民側は「事故で琵琶湖が放射能汚染されれば健康被害は計り知れない」などと主張。関電は「安全性は十分確保されている」として却下を求めていた。
 
 決定は、4原発について「事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画などが何ら策定されていない」と指摘。「これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ず、原子力規制委がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたい」とした。
 
 27日午後に記者会見した住民側代表の辻義則さん(67)は、早急な再稼働を否定した決定理由について「両原発は近く再稼働の前提となる原子炉設置変更許可が認められると見込まれており、社会の一般的な認識に反する」と批判した。
 
 一方、決定が避難計画の策定作業などが進まなければ再稼働はあり得ないとしたことを「再稼働にまい進する政府・電力会社の姿勢に対する不信と批判」と評価。住民側代理人の井戸謙一弁護士(60)は「常識的に考えれば、こんな状態で再稼働は容認できないという裁判所のメッセージだ」と述べた。【田中将隆、村松洋】
 
 
「司法の責任放棄」住民ら憤り 大飯・高浜差し止め却下
京都新聞 2014年11月27日
 原発の再稼働を防ごうとする京滋の住民の願いは、司法に届かなかった。福井県にある関西電力大飯、高浜原発の再稼働差し止めを求めた仮処分申請から3年3カ月余り。大津地裁は27日、却下の決定を出した。住民は悔しさをあらわにする一方、関電の安全対策にも言及した決定内容に、「再稼働への大きな足かせになる」と評価する声も上がった。
 
 午後1時すぎ、大津地裁前で弁護団長の井戸謙一弁護士(60)が決定の主文を読み上げると、約30人の住民からため息が漏れた。申立人の一人で福島県南相馬市から避難している青田勝彦さん(72)=大津市=は「司法の責任放棄だ。裁判所は原子力規制委員会に判断を丸投げした」と憤った。
 審尋は18回を数えたが、決定が出ないまま年月が流れた。その間にも九州電力川内原発が規制委に新規制基準の適合性を認められるなど、再稼働に向けた動きが進む。井戸弁護士は「申し立て当初と状況が変わった。裁判所が国民の願いを受け止め、早期に決定を出していれば違う結果になったはず」と唇をかんだ。
 大津市の滋賀弁護士会館であった住民報告集会では、住民から「勇気のない決定だ」などの声が上がった。
 
 ただ、今回の決定は関電側の安全対策にも言及。住民側が「過去の地震の平均像を算出しただけ」と問題視する基準地震動(最大規模の地震の揺れ)の策定方法に触れ、地裁は「関電からは何ら説明がない」と指摘。住民の避難計画の策定などが進んでいない現状では「再稼働はあり得ない」と言い切った。住民代表の辻義則さん(67)=長浜市=は「関電がこのまま再稼働に走ることはできない内容。非常に大きな足かせになる」と評価した。
 

2014年11月28日金曜日

原発がれきのセシウム3キロ飛散|福島甲状腺検診は重要 専門家会議

 原子力規制委は26日、昨年8月に福島原発3号機でがれきを撤去した際に、放射性セシウムが飛散した影響の分析結果をまとめ北に3キロメートル離れた地点まで飛散したことを認めましたが、約20キロメートル離れた南相馬市への飛散は否定しました。
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 福島原発事故による健康管理の在り方について検討する環境省の専門家会議は26日、政府に提言する中間報告書案について議論しました。専門家からは「甲状腺検診の不利益ばかり強調されている。検査することで健康管理をしたい県民の声もある」として、検査の重要性を指摘する意見が相次いだということです
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放射性セシウム、3キロ先まで飛散 福島第1のがれき撤去 
日経新聞 2014年11月26日
 原子力規制委員会は26日、東京電力が昨年8月に福島第1原子力発電所3号機でがれきを撤去した際に、放射性セシウムが飛散した影響の分析結果をまとめた。
 25キロメートル圏内の5地点を調べたところ、北に3キロメートル離れた福島県双葉町で放射性セシウム降下量が1平方メートルあたり3万4000ベクレルに達し、高い値を検出した。
 他の4地点ではがれき撤去前後で変化はほぼなかった。約20キロメートル離れた南相馬市で収穫されたコメを汚染したと一部で指摘されたが、その可能性は否定した。
 
 
甲状腺検診の重要性を指摘 環境省の専門家会議
福島民友ニュース 2014年11月27日
 東京電力福島第1原発事故による健康管理の在り方について検討する環境省の専門家会議(座長、長瀧重信長崎大名誉教授)は26日、都内で会合を開き、政府に提言する中間報告書案について議論した。専門家からは「甲状腺検診の不利益ばかり強調されている。検査することで健康管理をしたい県民の声もある」として、検査の重要性を指摘する意見が相次いだ。
 
 中間報告書案では、甲状腺がん検診について一般論として「寿命を全うするまで症状が出ない小さながんまで発見する可能性がある」と指摘。その上で、参加者の同意を得て調査を進め、がんが増加するかどうか被ばくとの関連を検証すべきとしている。
 このまとめに対し、清水一雄日本医科大名誉教授が「県民から検査してほしいとの声があることを分かってほしい」と指摘。石川広己日本医師会常任理事も「異常があるかないかを見るのが検診。そこに臨床医が寄り添うことが重要だ」と述べ、検査が県民の健康不安の解消につながっている側面を訴えた。
 
 このほか、丹羽太貫福島医大特命教授と阿部正文福島医大総括副学長が、放射性物質による直接的な健康影響だけではなく、原発事故が間接的に引き起こした精神的な問題や生活習慣病の増加などについても政府が責任を持つべきで、報告書に書き込むべきだと主張した。
 
 これらの指摘に対し、長瀧座長は「参加者の自由な意思を尊重すべきだ」「直接的な影響以外の部分はこの会議で議論できることなのか」などと否定的見解を述べた。
 環境省の担当者は、今後の検討会の進め方について「いただいた意見を反映させる作業をしないと分からない」と述べ、次回開催の考えを明確にしなかった。報告書は政府の「子ども・被災者支援法」に関連する政策や、本県の県民健康調査の方向性にも影響を与えるため、環境省の対応が注目される。
 

関電高浜/大飯 再稼働差し止め認めず 大津地裁

 27日、大津地裁滋賀県の住民らが関電高浜原発3、4号機と大飯原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分の申し立て却下しました
 仮処分の申し立て却下することは原子力規制委員会審査に待つというものです
 大飯3、4号機の再稼働差し止めを巡っては、福井地裁は今年5月に差し止めを命じる画期的な判決を出しましたが、大阪高裁に出されていた住民らの仮処分申請は、同月、原子力規制委員会が新基準による審査を進めていることを理由に却下されました
 原子力規制委の審査結果に従うということであれば、結論はほぼ見えています。
 大飯原発の再稼動を差し止めた福井地裁の英明で緻密を極めた判決を、他所にも求めるということはやはり簡単ではないということでしょうか。
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原発再稼働差し止め:大飯・高浜の仮処分却下 大津地裁
毎日新聞 2014年11月27日
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)と高浜原発3、4号機(同県高浜町)=いずれも停止中=を巡り、滋賀、大阪、京都3府県の住民計178人が関電を相手取って再稼働の差し止めを求めた仮処分申請で、大津地裁(山本善彦裁判長)は27日、早急に再稼働が容認されるとは考えにくいとして、申請を却下する決定を出した。
 
 大飯3、4号機の再稼働差し止めを巡っては、大阪高裁が今年5月、原子力規制委員会が新基準による審査を進めていることを理由に住民らの仮処分申請を却下。一方、福井地裁は同月、差し止めを命じる判決を出し、司法判断が分かれていた。
 
 住民側は東京電力福島第1原発事故(2011年3月)後の11年8月、定期検査中だった両原発と美浜原発の計7基の再稼働差し止めを求めて仮処分を申請。昨年12月には3原発の計11基について、同じ趣旨の訴訟を起こした。決定を早めるため今年9月、仮処分申請の対象を変更し、大飯3、4号機と高浜3、4号機に限定した。
 
 申し立てで住民側は、新基準は福島事故の原因を解明した上で制定されたものでなく、原発の安全性を担保しておらず「再稼働は人格権を侵害する」として、訴訟の判決確定までの再稼働差し止めを主張。関電は却下を求めていた。
 関電は高浜3、4号機について、再稼働の前提となる原子炉設置変更許可申請の補正書を原子力規制委員会に提出済みで、新基準による審査は大詰めの段階。大飯3、4号機も耐震設計の基になる「基準地震動」の設定が了承されるなど審査が進んでいる。【田中将隆】
 
◇一日も早い再稼働目指す
 大津地裁が原発4基の再稼働差し止めを求める仮処分申請を却下する決定をしたことについて、関西電力は「妥当な判断をいただいた。安全が確認された原子力プラントは一日も早い再稼働を目指したい」とするコメントを発表した。
 
 
原発再稼働差し止め認めず 大津地裁、関電高浜と大飯
東京新聞 2014年11月27日
 関西電力の高浜原発3、4号機(福井県高浜町)と大飯原発3、4号機(同県おおい町)の地震対策は不十分だとして、滋賀県の住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分の申し立てについて、大津地裁(山本善彦裁判長)は27日、却下する決定をした。
 
 いずれの原発も停止中。関電が昨年7月、再稼働に向けて、新しい規制基準への適合性審査を申請し、原子力規制委員会が審査を進めている。
 山本裁判長は「規制委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは考えがたい」と指摘。再稼働が目前に迫っているとの住民側の主張を退けた。 (共同)
 

2014年11月27日木曜日

福島でガンと心疾患が急増

 元原子力学者で現在は工学倫理を専攻されている武田邦彦教授は、かつては旺盛に原発事故・放射能に関するブログを公表していましたが、その後その関係は有料ブログに移転されたため紹介できなくなりました。
 26日、同氏のブログの体裁が一新され、久しぶりに原発事故関連の記事が載りましたので紹介します。(公開日と別に執筆日が末尾に記載してあります)
 
 ブログに添付されているグラフが不鮮明で文字等が正確に読み取れないのですが、タイトルは「2012年セシウムの土壌汚染密度分布と『急性心筋梗塞』の年齢調整死亡率」ではないかと思われ、横軸が土壌汚染度で縦軸が死亡率です。
 
 プロットされている点が右肩上がりに分布している(=相関がある乃至は高い)ことが確認されます(図中に相関係数が記載されているのかは不明です)。
 セシウムは筋肉に取り込まれるので、チェルノブイリ事故でも事後心臓病で死亡する事例が多発しました。
 福島原発でも、現場作業員の心臓疾患によると思われる死亡(人数は不明)が度々報じられています。
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福島で急増するガンと心疾患 
  武田邦彦 2014年11月26日  
 
福島の汚染地域で、子供の甲状腺がんとともに大人のガンや心疾患で死亡する人が急増している(月間「宝島」などで多数報告されている)。そこに居住している方がおられることを考えると心痛むが、事実は事実で大切である。
 
かつてダーウィンが「事実を知るには勇気がいる」と言っているが、NHKやその他の放送局が政府側について、国民に事実を知らせなくなった昨今、私たちは自分自身や家族、子供を守るために事実をしる勇気を持つ必要がある。
 
被爆から3年以上をへた福島では、1)子供の甲状腺がん、2)大人の心臓疾患、そして、3)全体的なガンの増加と平均寿命の低下、が見られている。整理の仕方によってまだはっきりしないところもあるが、宝島が調査したデータのうち、学問的にしっかりしているデータを次に示した。
 
 
これは放射性セシウムで汚染された地域の汚染度と、そこに住む人の心臓疾患の関係を示したものだ。このような状態のときに、「医療、予防」としてどのように考えるかを整理しておきたい。
1) これまでの知見と一致しているか、それとも反しているか?
2) データの信頼性は「注意」の段階か、「警告」か?
 
科学的に得られるデータはつねにある程度の「不確かさ」を持っている。だから御嶽山の噴火の場合も同じだが、科学的に見る場合と、「社会的」に見る場合と違う。このブログで再々、掲載しているが、「医学者と医師」、「研究者と教師」の関係でわかるように、「医学者は純粋に科学の立場で、医師は社会との合意や責任に置いて」データを解釈し、発言する。
「研究者は自由な立場で研究でき発信できるが、教師は学問的に確定したものしか教えることができない」ということだ。教師が最新の学説を説明する場合は、かならず「自らの意見によらず」、両論がある場合は両論を同時に教えなければならない。つまり社会は危険回避や判断が必要とされ、生徒は正しい学問を教えられる権利を有するからである。
 
福島のガンや心臓疾患の場合、医学者や科学者はいろいろと解釈できるだろうが、このブログが「社会的接点があるブログ」という立場でこのデータを見ると、
 
1) 1年1ミリの被曝限度や1年5ミリ以上の職業的被爆による白血病に労災が適応されたと同じように、「従来の知見と合致する」。つまり、1年1ミリを越える被曝者が福島には多いので、疾病の発生が危惧されること、
 
2) データの信頼性から言うと、「やや相関性があるように見える」と言う段階で、これが「人の健康」に関係がなければ静観すべきであるし、「人の健康」に関することなら警告を出すべきである。この場合、人の健康に関係するので、福島県や政府は住民に移動勧告などをするべきである、
 
3) 福島に広範囲な健康障害が発生していることを考えると、他の原発の運転を一時、凍結し、状態が判明する2025年ぐらいに再判定をするのが望ましい。危険かどうかわからない時に同種のことを社会的にするのは人道的立場から許されない。特に自民党は自由主義を標榜しているので、日本国民の選択の自由を尊重するべきである。
 
放射線の被曝によってなにが起こるかは科学的に不明なことが多いのをこのブログで再々、指摘しているし、わたしは多くの本を書いてきた。現在の福島の状態は「これまでの知見の通り、被曝による健康障害がでつつある」ということを示している。今後、これが拡大するか、鎮静するかも私たちの頭脳と経験では判断できない。
 
しかし、少なくとも「被曝は大丈夫」といっている人は「事故時の法令に基づく発言」を越えることがないように警告したい。また法令を越える発言をして日本国民に被害をもたらした専門家、役人、マスコミは健康障害に対して物心両面からの補償と償いをする準備を始めてもらいたい。
私たちは法令を超えて人を傷つける権利を有していない。特に福島の医師は県民に警告を発して欲しい。医師は政府や自治体と歩調を合わせる義務は全くないのだから。
(平成26年11月20日