2015年1月11日日曜日

福島原発は津波の来る前に壊れていた(小出裕章氏)

 政府や原子力ムラなどの原発推進勢力が口が裂けても言わないことは、福島原発が津波が来る前に壊れていたということです。
 もしも津波が来る前に壊れていたとなると、現行の原発の耐震性が問題となるので、防潮堤を作って原発を再稼動させるという現在の進め方が否定されることになるからです。
 
 しかし福島原発事故前に原子力安全委員を務めたことのある武田邦彦氏が、東日本大震災のあと東日本各地の原発を見て回ったところ、全ての原発が破損事故を起こしていたことから、「日本の原発は震度6の地震にもたない」と結論付けて、それをブログで公表しています。
 現に福島「第二」原発は第一原発とは違って海抜が高かったために津波の影響はなかったのですが、やはり原子炉が破損し、それを復旧してから報道陣に公開されたのは事故後1年以上も経ってからでした。
 
 福島原発に関しても、大容量の冷却用海水ポンプ(竪型ポンプ)が地震の直後に止まったことが運転記録の解析から明らかになっています。
 また機械室の上階で配管が破損して水が噴出したことを作業員が証言しています(これは後に無蓋水槽内の水が地震で揺られたため溢れ出たものと事故調が説明しましたが、水槽からのオーバーフローを配管からの噴出だと現場の作業員が間違うことは普通考えられません)。
 非常時外部給電用の複数の鉄塔が倒れ(その結果給電が不能になった)たのも地震によるものでした。
 何よりも現在汚染水が日量400トン発生していてその処理(=貯蔵)に四苦八苦しているのも、建屋の地下部分が地震で損傷したために地下水が原子炉建屋の地階に浸入していることによっています。
 
 10日付の小出裕章ジャーナルはそれらとはまた別の角度から、「津波が来る前に福島原発があちこちで壊れていた」ことを述べています。
 
 第105回小出裕章ジャーナルを紹介します。(太字強調部分は原文のままです)
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原発事故と自然災害 
「津波が来る前にすでに原子力発電所があちこちで壊れていたという証拠はたくさんあります」
第105回 小出裕章ジャーナル 2015年01月10日
ラジオ放送日 2014年1月9日〜16日 
石丸次郎 : 1月の小出裕章ジャーナルは、「特集シリーズ:原発はなぜいけない?」でお送りします。今日はですね、原子力発電所と自然災害について、小出さんにお伺いしたいと思いますが、福島第一原発の事故はこれも言うまでもないことですけれども、自然災害が直接原因となって起こりました。そこで、このまず地震で揺れがありました。「この揺れによって、そもそも原発は壊れたんじゃないか」という説と、それから「いやいやそうではなく、地震の後に来た津波の大津波のために壊れたのだ」という説もあります。今、もう4年近くが経ったわけですけれども、小出さんは今どういう見方をされていらっしゃいますか?
 
小出さん :  地震がまず始めに起きたのですね。それから1時間後に津波が襲ってきたわけで、津波というものが決定的なダメージを与えたということは本当だと私は思います。でも地震が起きた時に、津波が来る前にすでに原子力発電所があちこちで壊れていたという証拠はたくさんあります
 
石丸次郎 :  東電は「いや、地震の揺れには万全を期してたのでそうじゃなくて、想定外の大津波が来たせいだ」ということを今でも主張しているようですね?
 
小出さん : そうではありません。例えば1号機という原子炉では津波が来る前に、原子炉建屋の中の放射線量がもう上昇していましたし、それは、もう津波でなく、地震の時からもう起きていたということの証拠だと思います。それから、ずっと論争になっているのですが、1号機の非常用発電機は津波が来る前にもう止まってしまったという、そういうデータも実はある。きちっとまたこれから検証しなければいけませんけれども、その可能性もあると思っています
 
そして何よりも決定的なのは、1号機で水素爆発が起きたのですが、最上階5階と言ってる部分がまず壊されてですね、壁が抜けてしまって天井も抜けてしまってるわけですけれども。4階と5階の間にですね、大型機器を搬入するための穴が空いていて、そこに重たい鉄板が蓋をしていたのですが、その蓋がもう実はないのです。なぜ無いかと言うとですね、4階で巨大な爆発が起きて、その鉄板、鉄の蓋がすぐ吹き飛んでいるのです。
 
では、その4階というのは一体何があったのかと言うと、非常用の復水器という物がそこにありまして、その挙動が大変不思議だったということで、ずっと今日までまだ問題になっているのですが。おそらく、その非常用復水器の所のなにがしかの配管等が壊れて、そこから水素が噴出してきて、そこで大きな爆発が起きた。そして重たい鉄の蓋を吹き飛ばしたという、そういうストーリーを作る以外には説明がつかないのです。
 
そうなると4階という所にたくさんのその水素があったということになりますので、非常用復水器の所で何か配管等が破れていたということを想定しなければいけませんし、その原因としては、地震で壊れたと考えるのが一番妥当だと私は思います
 
石丸次郎 : なるほど。もう津波が来る前の揺れで配管に異常が起こっていたんだ、ということですね?
 
小出さん : そうです。福島第一原子力発電所を破壊した、その地震のマグニチュードは9という数字で表されました。では、その地震が一体どれだけのエネルギーを放出したかと言うと、広島原爆が放出したエネルギーの3万発分に相当する
 
石丸次郎 : 3万発分ですか? 恐ろしい。
 
小出さん : はい。もう到底、人間技ではない。人間が対処できるようなものではないということが、地震というかたちで表れてくるのです。そういう時には「もう打つ手がない」と、やはり覚悟しておなければいけないと私は思います。
 
石丸次郎 : そういう、とてつもない広島原発の3万発分に当たるエネルギーを放出した大地震というのが、日本は歴史を振り返ると、100年、200年、300年に1度ずつやっぱり起こってきた歴史があるわけですよね?
 
小出さん : そうです。日本という国は世界一の地震国ですし、私達が全く望まないけれども、やはり地震というのは周期的に起きてしまうという、そういうものなのです。
 
石丸次郎 : そういう所で原発を作ってきたわけですけれども、そこで言われてきたのは、「大丈夫です」と「安全です」と「日本の原発は安全です」ということをずっと言われてきたわけで、我々も多くの人が「大丈夫だろう」というふうに思ってきた。つまり、つくる側、推進する側もそれを認めてきたが、一般国民もですね、「日本の科学技術は相当世界一の相当レベルの高いところにあるんだから、その科学者が言うんだから安全でしょ」とやっぱり思ってきたわけですよね。これは罪が深い、と私なんか思うんですけれども。原子力の専門家として科学者として活動されてきた小出さんの立場からすると、その原子力の安全神話を語ってきた人達、この人達が科学者として、どういうふうに評価をされますか?
 
小出さん :  大変罪深い人達だと私は思います。特に、日本人は、日本が科学技術立国だとか原子力の先進国だとか聞かされると、何かその嬉しくて、それを信じてしまう方向に向かうわけですけれども、決してそんなことはありません
 
もともと日本という国は、江戸時代ずっと長い間鎖国ということをやっていまして、西洋型の科学技術に触れたというのは、ほんと近い過去になってからであって、それ以降、なんとかヨーロッパ、米国に追いつけ、追い越せとやってきたわけですけれども、それでも時間が流れるとともに、向こうも先に進んでしまうわけですから、日本が科学技術で先進国であるとか、特に原子力なんていうので先進国であるなんていうことは全くないのです。
 
それなのに、あたかも自分達は安全な知識を持っているというように、原子力を進めてきた人達が言ってきたわけで、ほんとに罪深いことだと思いますし、挙句の果てに福島第一原子力発電所の事故を引き起こしてしまったわけですから、せめて責任を取るべきだと思うのですが、誰一人として責任を取らないという状態になってしまっています
 
石丸次郎 :  誰一人として責任取ってませんよね? これはもちろん行政もそうですし、科学者にも責任あるわけですよね? もちろん。
 
小出さん :  少なくとも、福島第一原子力発電所に対して安全審査をして、「安全性を確認した」と言ってお墨付きを与えた学者がいるわけですから、そういう人達は決定的な責任があるし、きちっと責任を取らせなければいけないと思います
 
石丸次郎 :  無責任な体質の国に日本はなってしまいました。これは原発問題だけじゃありませんけれども。やはり、これは安全神話、それは刑事罰に問うかどうかってことは、また別の問題として考えなきゃいけないでしょうけれども、しかしながら、責任を認めて明らかにする。そして、責任の取り方を考えるということは、福島原発の事故から我々が考えなきゃいけない。安全神話は通用しないということを認識しなければいけない。やはり、教訓だというふうに思います。
 小出さん、ありがとうございました。
 
小出さん : ありがとうございました。