2015年9月25日金曜日

政府の説明は「全部うそ」 会場を沸かせた“小泉節” 

 小泉純一郎元首相(73)松山市内のホテルで16日にあった講演会で、立ちっ放しで1時間以上「脱原発」の熱弁を奮いました。
 
 政府や電力会社が説明する原発の安全性やコストの安さについて「全部うそ」とばっさり切り捨て、「日本は原発ゼロでやっていける」、「首相が原発ゼロに舵を切れば、多くの国民が協力してくれるのに残念だ、安倍首相のこともを批判しました。
 
 小泉氏は首相在任中は原発推進派で、郵政民営化を行い、新自由主義政策を進め日本を格差社会に変えました。そういう点で評価できるところはないのですが、脱原発への転身については「過ちては改むるに憚ること勿れ」の論語を引用して言い訳にしています(それ以外のことについての反省の言は聞こえてきません)。
 
 産経新聞は保守の牙城で原発推進派なのですが、社の趣旨に反するものであっても比較的詳細に紹介するというところがあります。
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政府説明は「全部うそ」 原発派沸かせた“小泉節” 
1時間立ちっぱなしの熱弁、批判の矛先は安倍首相にも
産経新聞 2015年9月24日
 東京電力福島第1原発事故後、脱原発社会を掲げ、講演活動を続けている小泉純一郎元首相(73)。松山市内のホテルで16日にあった講演会でも脱原発の持論を展開した。政府や電力会社が説明する原発の安全性やコストの安さについて「全部うそ」と痛烈に批判。一方で、「ピンチをチャンスに変えるべきだ。日本は原発ゼロでやっていける」と政府が脱原発に舵を切るよう訴えた。1時間以上立ちっぱなしで、約600人を前に熱弁をふるった元首相。首相在任中の原発推進から立場は変わったが、“小泉節”は健在だった。
 
原発神話「全部うそ」
 「松山空港から会場まで天ぷら油の廃油で走る車で来た。天ぷら油で車が走ってしまう。たいしたものだ。まさにバイオだ」
 講演の“つかみ”でこう語りかけた小泉元首相。その後も、簡潔で明快な言葉を巧みに使う独特のフレーズで参加者の関心を引き寄せた。
 政府や電力会社などが説明する原発の安全性や環境への配慮、コストの安さという優位性については「全部うそ」とばっさり。「一度事故が起きれば取り返しがつかない。環境や農産物、故郷なども…。損害賠償などに多額の税金が投入される」と訴えた。
 電力会社の体質にも触れ、「電力会社は原発を動かせば損はしない。コストに上乗せして電気料金を決めていた。電力自由化が始まると、原発が一番安い電力でなくなる」と述べた。
 首相在任中は原発を推進しながら、退陣後は脱原発というのは無責任だ-。自身に向けられたそんな批判に対しては、『過ちを犯したことを知っていながらも過ちを認めないのが本当の過ち』とした論語を引用し、「それは承知。勉強すればするほどうそだと分かった」と語り、会場を沸かせた。
 再稼働を進める政府の方針にも批判を向けた。「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場の候補地を国が選定する方式に変更したが、「自治体も住民もOKしない。再稼働すれば、また核のごみが増える。見通しが甘い」。原子力規制委員会が世界最高水準としている新規制基準についても、「他国と比較していないのにどうして世界一と分かるのか」と苦言を呈した。
 
脱原発は志ある事業
 講演では、脱原発社会の実現を多くの国民が共感できる壮大で夢のある事業と位置づけた。
 昭和40年代後半の石油ショック以後、日本が地道に省エネなどの技術開発に力を入れ、環境先進国になった例を挙げ、「日本人はピンチをチャンスに変える能力に優れている」と強調。九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した8月までの約2年間、原発ゼロが続いたが、「寒い冬も暑い夏も停電は起きなかった。脱原発宣言したドイツでも何基か原発が動いている。原発ゼロでやっていけるのは日本だけ」との認識を示した。
 その上で、「自然と共存しエネルギーに代えて国民を豊かにする社会の方がはるかによい。原発ゼロは志のある事業。やるべき価値のある仕事で、あきらめずに続けていく。原発の負の遺産を将来に負わせてはいけない」と訴えた。
 
反原発団体の姿も
 今回の講演は、地元の環境コンサルティング会社などでつくる市民団体「愛媛のエネルギーを考える会」が主催。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)が新規制基準に適合し、再稼働に向けた地元同意の動きが本格化する中での開催となった。
 会場には、福島の事故の経営責任を問う東電株主代表訴訟の弁護団長を務める河合弘之弁護士をはじめ、伊方原発再稼働に反対する同県内の市民団体の関係者らも姿をみせた。
 そんな中で熱弁をふるった元首相。「首相を辞めて、政界引退して、まさかこんな講演をするとは夢にも思わなかった。それでも70歳過ぎても立ちっぱなしで講演ができる」.次々と繰り出される“小泉節”に会場は大いに盛り上がった。
 
批判の矛先は首相にも
 講演後には記者会見も行い、「伊方(原発)であれ、どこであれ、原発を再稼働すべきではない。再稼働すれば核のごみが増える。発想が分からない」と、改めて再稼働反対を訴えた。
 また、「これほどピンチをチャンスに変える時代はない。首相が原発ゼロに舵を切れば、多くの国民が協力してくれる。考えを変えないようで残念だ」と、批判の矛先は安倍晋三首相にも。
 「みなさんの熱心な反応が私に元気を与えてくれる。1時間以上話しても疲れない」。講演をこう振り返った小泉元首相。その“発進力”はまだまだ衰えていないようだ。