2015年10月26日月曜日

26- 「避難の権利」の確立を 29日に全国組織設立集会

 人は誰も、放射能で汚染された地域に居住することを強制されません。それが「避難の権利」と呼ばれるものです。
 避難に伴う費用や慰謝料は当然支払われるべきです。
 汚染度がかなり低い場合にはその地域に居住を希望する人も出てくるので、その権利も認められるべきでしょう。ただしその場合でも、避難した人が受ける国家からの保護は同じように受ける権利がある筈です。
 汚染度がある限度を超えればもはや個人の意思でそこに居住することは、人道上認められないでしょう。
 
 この権利はまず法律で定められるべきで、その良い手本が1991年(チェルノブイリ事故の5年後)にロシアで制定された「チェルノブイリ法」です。
 同法では、年間被曝量が5ミリシーベルト以上になる区域を「移住義務ゾーン」、1ミリシーベルト以上5ミリシーベルト未満の区域を「移住権利ゾーン」と定め、被災者は支援を得て汚染地域で暮らすのか非汚染地域へ移住するかを選ぶことができますどちらの人も、国家の負担による健康診断や薬剤の無償提供、年金の割り増しなどの社会的な保護を受けられます避難(移住を選んだ場合は、国は住民が失うことになる家屋などの財産について、現物または金銭での補償をすることになっています
 
 しかるに日本ではどうでしょうか。
 そうした立派な見本があったにもかかわらず、年間被曝量が20ミリシーベルト以下であれば問題なく居住できるとして、その地域から避難した人たちを「自主避難者」と呼びました。原子力規制委の田中委員長などは「勝手に避難した人たち」という言い方をしています。
 それでもこれまでは「自主避難者」にも、慰謝料や住宅手当的なものを不十分ながらも払って来ました。しかしそれももうじき「自主避難者」に対しては支払を停止すると明言しています。
 まことに信じられないような話で、日本は世界に恥ずべき「原発事故対応 劣等国」です。
 
 福島原発事故の避難者らが「『避難の権利』を求める全国避難者の会」を結成し、29日に東京で設立集会を開くことになりました
 強制避難と自主避難区別を越え、全国避難者のネットワークをつくり、政府や自治体に、避難の権利を保障する立法や支援策を求めていきます。
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原発避難の権利確立を 全国組織、29日に設立集会
東京新聞 2015年10月25日
 東京電力福島第一原発事故の避難者らが「『避難の権利』を求める全国避難者の会」を結成し、二十九日に東京で設立集会を開く。強制避難と自主避難の壁を越え、全国に散らばった避難者のネットワークをつくり、政府や自治体に、避難の権利を保障する立法や支援策を求めていく考えだ。
 
 「さまざまな避難者に呼び掛けが伝わる工夫を」「住宅支援問題の取り組みは外せない」
 七日夜、札幌市のアパートで福島市から妻子と自主避難した介護サービス業中手聖一さん(54)が、インターネット電話「スカイプ」で設立準備会の会議に臨んでいた。
 準備会メンバーは、福島県やその近隣から避難し、十都道府県で暮らす約十五人で、今夏ごろから話し合いを重ねてきた。この夜も活動方針や入会方法など、会議は三時間を超えた。
 同会が求める避難の権利を、中手さんは「避難する人もとどまる人も、自分の意思で選択できるよう等しく支援を受けられること」と説明する。
 
 政府は住民が帰還できる環境が整ったとして、これまでに福島県楢葉町などの避難指示を解除。放射線量が高い帰還困難区域以外の他の地域も二〇一七年三月までに解除する方針だ。福島県も自主避難者に対する住宅無償提供を同じ時期に打ち切ることを決めている。
 こうした状況に中手さんらは「避難の権利が切り捨てられようとしている」と危機感を抱き、政府と交渉できる全国組織が必要と考えたという。
 会では、避難の支援や健康診断の充実を政府に求めていくとともに、避難者の実態把握などにも取り組む方針だ。強制避難、自主避難にかかわらず入会でき、被災当時、どこにいたかも問わない。経済的な理由などで帰還した人も参加可能だ。
 
 避難者が抱える課題は一人一人異なり、行政からの支援にも格差がある。避難指示の解除により、自主避難の立場に変わる人が増える可能性もある。福島市から京都府木津川市に家族で避難し、中手さんと共に共同代表に就任予定の宇野朗子(さえこ)さん(44)は「お互いに理解して支え合い、分断を乗り越えたい」と話している。問い合わせは、中手さん、電080(1678)5562。