2015年10月27日火曜日

伊方原発再稼働 愛媛県知事が同意 新基準で2例目

 四国電力伊方原発3号機再稼働について、地元伊方町の山下和彦町長の同意、愛媛県議会「再稼働必要」決議に続いて、中村時広・愛媛県知事が同意しました。新基準で再稼動するのは川内原発に続いて2例目となります
 
 伊方原発は、細長佐田岬半島の根元にあり(添付図参照)その奥側には住民約五千人が生活しています。原発事故の場合、本来は海路で避難するのが順当ですが、その先の豊後水道の潮流が川のように速いし、地震・津波に付随して事故が起きた場合には海路での避難は無理となります。
 そうしたことから陸路で四国本島側に逃げるのが基本とされているのですが、その場合「原発のすぐ前を通って」本島側に行くしかないので被曝は免れません。それに避難計画に実効性があるのかどうかも訓練で検証していない(避難所要時間など)ということです
 
 地震・津波の可能性については、伊方原発の間近に巨大な活断層中央構造線)が走っているので大地震を引き起こすことが懸念されています。
 また南海地震による津波は、最大21m(2012年8月内閣府)が46分後に到達するとされています。
 
 伊方原発は、建ててはいけないところに建設されて、住民が安全に避難できなければ稼動させてはならないのに、規制委の規制基準は何一つ歯止めの機能を果たすこともなく、「粛々と」再稼動に向かいつつあるということです。
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伊方原発3号機再稼働 愛媛県知事が同意 新基準で2例目
東京新聞 2015年10月26日 
 愛媛県の中村時広知事は二十六日午前、原子力規制委員会の審査を七月に通過した四国電力伊方原発3号機(同県伊方町、出力八十九万キロワット)の再稼働に同意した。同社の佐伯勇人社長と県庁で会い、伝えた。今後、機器の詳細設計認可などの審査手続きが残っており、再稼働は年明け以降とみられる。東京電力福島第一原発事故(二〇一一年三月)後に施行された新規制基準に基づく審査を通過した原発で、立地自治体の知事が同意したのは九州電力川内(せんだい)1、2号機(鹿児島県)に続き二例目。全国的に再稼働の流れが加速する可能性がある。 
 
 中村知事は同意の理由について、県議会の同意や、県が国とは別に要請した四国電力の安全対策の実施状況を総合的に判断したと述べた。佐伯社長には、引き続き安全確保に万全を期し、特に原子炉起動の際の住民への丁寧な説明を求めた。
 知事はその後会見し「(原発は)あるかないかで言えばない方が良いが、原子力の代替エネルギーが見つかるまで、最先端の安全対策を施す中で付き合っていかざるを得ない」との見解を示した。また「脱原発を追求する条件は出力、安定供給、コストの三点の条件を満たす代替エネルギー(の開発)だ。そこは国の責任で対応してほしい」と指摘した。
 
 佐伯社長も記者会見し、知事同意に対し「深く感謝申し上げる。安全確保に不断の努力を重ねていきたい」と述べ、再稼働の時期に関しては「具体的なタイミングに言及するのは時期尚早だが、一日でも早い再稼働を目指す」と話した。
 
 伊方3号機は既に伊方町の山下和彦町長が再稼働に同意したほか、県議会が「再稼働の必要性が認められる」と決議した。
 中村知事は午後上京し、林幹雄経済産業相や原子力規制庁長官らに同意したことを伝える。
 3号機は審査通過の際、耐震設計で目安となる地震の揺れ(基準地震動)が最大六五〇ガルと設定された。だが中村知事は、それ以上の対策を求め、四国電力はおおむね一〇〇〇ガルの揺れに耐えられるとする工事を終了。有識者からなる県の専門部会で規制委の審査結果を検証したが、「追認にすぎない」との批判もある。
 
<解説> 地元が再稼働に同意した四国電力伊方原発は、東西に細長く急ながけが連続する佐田岬半島の根元にあり、半島の住民が避難するにしても、逆に原発に支援要員や資材を送るにしても、地理的な問題を抱えている。
 半島の原発西側には約五千人の住民が暮らしており、避難計画では、この住民は、陸路で四国本島側に逃げるのが基本とされる。しかし、半島は細く、住民は事故を起こした原発のすぐ前を通って逃げる形になる。フェリーなどで大分県側に避難する代替策も考えられているが、事故が震災に伴う津波による場合は無理。ただでさえ豊後水道は地元漁師が「川のように流れる」と表現するほど潮流が速い。
 「自然災害と同時に事故が起きたら、自分たちはアウト」。住民からはこんな声が聞かれる。訓練で避難計画に実効性があるのかどうかも検証していない
 一方、原発に続く道路は国道と県道が各一本。尾根を走る国道は立派だが、原発にたどり着くには、急な山道を百メートル以上下りる必要がある。がけに面した県道は車がすれ違うのがやっとという地点が多く改修中。
 原発の新規制基準では、「既存の要員と資材だけで一週間持ちこたえられる」とされるが、想定する事故より深刻化した場合、孤立したままさらに事態が悪化する可能性も残っている。 (山川剛史)
 
<伊方原発> 瀬戸内海に面した愛媛県伊方町にある四国電力の加圧水型軽水炉。1~3号機の計3基あり、出力は計202.2万キロワット。現在全て停止しているが、稼働時は四国電の供給電力の約4割を占めていた。四国電は2013年7月、3号機の再稼働に向け原子力規制委員会に審査を申請し、今年7月に通過。30キロ圏には山口県上関町の一部が含まれ、豊後水道を挟んで対岸の大分県が重大事故時の伊方町民の避難先に指定されるなど、再稼働に関する周辺自治体の関心は高い。松山地裁では伊方原発の運転差し止め訴訟が係争中。
 
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