2015年10月6日火曜日

06- 福島第一原発事故の指定廃棄物 「5県に処分場」見直さず

東京新聞 2015年10月5日
 東京電力福島第一原発事故で発生した「指定廃棄物」問題で、政府は処分場を宮城、栃木、千葉、茨城、群馬五県に一カ所ずつ建設する計画について、見直し時期を迎えた関連法の改正を見送り、維持する方針を固めた。候補地の地元で噴出している反対論を無視した形で、国と地元の対立が一層深まっている。 (高山晶一、大野暢子)
 
 原発事故を受けた除染や廃棄物の処理は、二〇一二年一月に全面施行された放射性物質汚染対処特別措置法で規定。指定廃棄物の処分場を五県に一カ所ずつ造る方針も、同法に基づく基本方針に盛り込まれた。同法には三年後の見直し規定があり、環境省の有識者検討会が今年三月から議論に着手した。
 
 国はこれまで宮城県の栗原市と加美、大和の両町、栃木県塩谷町、千葉市を処分場の候補地に選定したが、地元自治体や住民の反対で実現のめどが立っていない。今回議論で方針を見直すかどうか注目された。
 九月末にまとまった提言では、難航している現状を認めながらも「特措法の基本的枠組みは有効に機能している」「現行制度を見直すことが解決に資するとは考え難い」と明記した。
 地元の理解を得る方策は、「更(さら)に丁寧な説明」や「地域振興をもたらす支援」に取り組むとしただけ。一六年度末をめどに、あらためて進捗(しんちょく)状況を点検するとした。政府は提言に従い、特措法改正や基本方針の見直しはしない方針だ。
 
 提言では「指定廃棄物の放射能濃度は(原発から出る)高レベル放射性廃棄物の一億分の一程度」など、放射線の危険性を過小評価するかのような表現も盛り込まれている。
 
 低線量被ばくに詳しい中下裕子・中央大法科大学院客員教授は「特措法は、原発事故直後の混乱期に急ごしらえでつくられた法律。事故処理に対する国の見通しは甘すぎる」と指摘。関口鉄夫・元滋賀大非常勤講師は、米軍普天間(ふてんま)飛行場移設に伴う新基地建設問題と重ね「国が民意を軽んじ、有識者に国の方針を権威づけてもらっている」と安倍政権の姿勢を批判する。
 
<指定廃棄物> 放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレル超の焼却灰、下水汚泥、稲わらなど。今年6月末現在、12都県で計16万1783トン。国は宮城、栃木、千葉、茨城、群馬5県に1カ所ずつ処分場(長期管理施設)を建設する計画。建設に反対する地元からは、福島第一原発周辺での集約処分や、各市町村での分散保管を求める声が出ている。
 
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