2015年11月23日月曜日

川内原発 福祉避難所2600人分不足 要援護者の4割

 真っ先に再稼動した川内原発の30キロ圏内(=UPZ)の9市町に在住している障害者・高齢者などの要介護者は、原発事故時には周辺の18自治体に避難する計画ですが、要介護者の4割にあたる約2600人分の人たちを収容する「福祉避難所」が、避難先の自治体に不足していることが分かりました。
 
 「福祉避難所」は、災害救助法に基づいて高齢者や障害者、妊産婦などの配慮が必要な被災者向けに災害時に開設される避難所で、各自治体が福祉施設や公共施設を指定することになっているものです。
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川内原発:福祉避難所2600人分不足 要援護者の4割
毎日新聞 2015年11月22日
 東日本大震災後、他に先駆けて再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に事故が起きた際の避難計画で、避難住民を受け入れる計18自治体のうち10自治体で障害者や高齢者など要援護者を収容する「福祉避難所」が不足していることが、自治体などへの取材で分かった。避難対象の要援護者の4割近い約2600人分が足りず、計画の不備が浮き彫りとなった。【岩崎邦宏】
 
 川内原発では、鹿児島県内の9市町が30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)内にある。事故の際には、UPZ外の鹿児島、熊本両県計18市町が避難住民を受け入れる。鹿児島県の避難計画では、一般避難所での生活が困難な要援護者については福祉避難所へ移動させることになっている。
 だが、UPZ内外の関係自治体に取材したところ、9市町に避難対象の要援護者が約7000人おり、その約38%、2638人分の福祉避難所が確保できていない
 
 18市町を見ると、福祉避難所は鹿児島市など6自治体で足りている一方、10自治体で不足していた(2自治体は収容可能人数が不明確なため不明)。10自治体に避難する要援護者に対し、収容可能人数は17%の532人にとどまっている。さらに、5自治体には福祉避難所が一つもない
 
◇玄海原発周辺も20自治体で不足
 一方、来年度中の再稼働を目指す玄海原発(佐賀県玄海町)の場合、不足の度合いはより大きい
 UPZ内の佐賀、長崎、福岡3県8市町に要援護者が約1万2000人おり、避難者を受け入れるUPZ外の3県39市町の福祉避難所の収容能力を調べると、約58%6918人の避難先がない
 
 避難者を受け入れる39市町のうち、佐賀市や福岡市など15自治体が足りているが、20自治体は不足(4自治体は収容可能人数を非公表のため不明)。この20自治体の収容能力は1940人分で、避難する要援護者の22%にとどまる。また、福祉避難所ゼロも2自治体あった。
 
 川内、玄海原発を合わせると受け入れ先の計57自治体のうち過半数の30自治体で福祉避難所が足りず、要援護者の半数の約9500人分が足りない。
 
 福祉避難所が足りない自治体に避難する要援護者は、体育館など一般の避難所を利用することになるが、バリアフリーでない避難所での長期生活は負担が大きい。1995年の阪神大震災では、要援護者が避難生活の疲労やストレスで相次いで亡くなった。これを教訓にベッドや医薬品、支援スタッフを備えた福祉避難所が制度化された。
 
「広域避難必要」 神戸大大学院工学研究科の大西一嘉准教授(防災福祉学)は「福祉避難所は災害関連死をゼロにする切り札だ。より広域的な避難や、旅館やホテルの活用なども検討する必要がある」と指摘している。
 
 福祉避難所
 高齢者や障害者、妊産婦ら配慮が必要な被災者向けに災害時に開設される避難所。自治体が災害救助法に基づき、福祉施設や公共施設を指定する。国の指針では紙おむつや医薬品、車椅子などを備蓄し、開設時の対応に当たる「生活相談職員」を置くことが望ましいとされる。