2015年12月23日水曜日

東電の原発事故発表を無批判に放置している日本のメディア

 東電が今頃になって原発事故直後の14日の夜から16日にかけて引き起こされた環境への汚染は、核燃料の熱で3号機の格納容器が放射性物質を閉じ込める機能を失い、直接放出されたのが原因だと公表しました。これまでは、必死の手作業で水蒸気を放出したため放射能が拡散したという説明でした。
 
 これに対して元外交官の天木氏は、そんな重大なことを今頃になって何食わぬ顔をして認めたことに憤っています。
 さらに海側遮水壁の完成によって却って地下汚染水の量が1日約400トンも増加(トータルで1日600トンに)したという、目指したことと正反対の結果がもたらされたことにも驚いています。
 
 そしてそうした東電の数々の不手際に対してメディアや政党が全く騒がないのは異常なことで、この国は危機的状況にあると述べています。
 
 政府や東電のような大手の広告主に対してメディアは何の批判もできないということに加えて、多くの野党もまたそうであるという現実は、確かに危機的状況というべきです。
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放置されたままの東電の信じがたい原発事故発表の衝撃
天木直人 2015年12月22日  
原発事故について素人の私でも、これらのニュースがどれほど深刻な意味を持っているか、わかる。
すなわち東電が今頃になって発表した。
放射能が大量放出されたのは福島原発第3号機の格納容器が完全に破損していたからだったと。
これを12月18日のNHKなどがあっさりと報道して終わっている。
これまで散々伝えられてきたことは、爆発をおそれて水蒸気を放出(ベント)したため放射能が拡散した、ではなかったのか。
格納容器が完全に破損していたという事は、いわゆるメルトダウン、メルトスルーということではないのか。
専門家に言わせれば大変なことに違いない。それを今頃になって何食わぬ顔をして認めたのだ。
 
そう思っていたら、立て続けにもう一つの驚くべきニュースが流された。
東電は18日、汚染地下水が染み出るのを防ぐ「海側遮水壁」が完成したことによって、せき止められた地下汚染水が急増している(1日約400トン)と原子力規制委員会に報告したという。
12月19日の各紙が小さく報じていた。
深刻なことは、急増する地下汚染水の浄化が間に合わず、海に流さなければ対応できない恐れがあることだ。なんのための「海側遮水壁」だったのか。
 
しかし私が衝撃を受けたのはこの二つの報道だけではない。
より衝撃を受けたのは、このような深刻な東電の発表について、メディアがまったく騒がないところだ。
それだけではない。
うそつき安倍が原発再稼働に踏み切った。
その後も電力会社が続々と原発再稼働の動きを見せている。
この安倍政治のでたらめぶりを追及できるこれ以上ない東電の発表を、野党がまったく政治問題化しないところだ。
この国のメディアは機能していない。
この国の政治はもっと機能していない。
これでは国民は何も気づかないままだ。
 
国民の気づかないところで、この国は大変なことが、あらゆるところで噴出し、解決策のないまま漂流し続けているのだ。
私はもっぱら外交についてそのことを指摘し続けているが、行き詰まってるのは外交だけではない。
すべてに行き詰まっているのだ。
この国は危機的状況にあると思う(了)
 
 
福島第一原発 格納容器機能失い放射性物質放出か
NHK NEWS WEB 2015年12月18日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で環境を汚染した原因の1つである3号機からの放射性物質の放出について、東京電力は放射性物質を閉じ込める「格納容器」と呼ばれる設備が機能を失い、直接外部に放出されたと考えられるとする見方を示しました。
 
東京電力は福島第一原発の事故で起きた放射性物質の放出の原因などについて、新たにまとまった検証結果を公表しました。
核燃料が溶け落ちた福島第一原発3号機では放射性物質を閉じ込めるため、原子炉を覆っている「格納容器」内の圧力が上がり、破損するおそれがあったため、水蒸気などを放出する「ベント」と呼ばれる操作を繰り返し行いました。
これについて、東京電力はデータを改めて確認した結果、3月13日の午後9時に行った3回目のベント以降は圧力の下がり方が緩やかなことなどから、ベントは成功していないという見方を示しました。
このため、14日の夜から16日にかけて引き起こされた環境への汚染は核燃料の熱で3号機の格納容器が放射性物質を閉じ込める機能を失い、直接放出されたのが原因と考えられるとしています。
これについては、ベントの状況によっては圧力が緩やかに下がることもありうるほか、操作の前後で圧力が変動しているのはベントによる可能性があるという指摘が専門家の間から出ていて、現在も検証が続いています。