2015年12月9日水曜日

09- もんじゅを作り続けるのは狂気の沙汰

 もんじゅがナトリウム漏れ事故を起こしてから12月8日で20年になります。
 もんじゅはいつまでたっても完成しない装置で、直近まではその完成時期は2050年とされていましたが、現在は完成のめどについての言及はないということです。
 その間の維持経費はたった1日で5500万円も掛かり年間220億円にも上ります(もんじゅの経費はこれまで電力会社が電気料の一部から捻出していると見られていましたが、今は電力会社にその余裕はないためほぼ全額が税金で賄われているということです)。民間企業であればとてもこんな金食い虫の装置を温存することはありません。ほとんどの経費を国が負担しているからこのように意味不明の装置が温存されているわけです。
 
 もんじゅを廃炉にすれば核燃料サイクルの中核が失われるというような言い方がされますが、もんじゅは蓄積すること自体が不都合なプルトニウムを増殖させる装置であって、プルトニウムを消費する装置ではありません。プルトニウムは最初に燃料を装荷するときに一度使われるだけで、サイクルと呼ぶためには、無数にもんじゅを作り続けるしかありません。狂気の沙汰というべきです。
 
 ごく最近、窮余の一策として核燃料の減容化を研究テーマにするというのが継続理由にされましたが、実装置前段規模のもんじゅで、海のものとも山のものともわからない研究を進めるなどということはあってはならないことです。どうしてもやりたいというのであれば東海村にある実験機「常陽」がそれに適しています。その意味でも存続させる理由はありません。
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もんじゅ 燃料劣化が進む ナトリウム漏れ事故20年
毎日新聞2015年12月7日
 1995年12月8日にナトリウム漏れ事故を起こした高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、燃料のプルトニウムが劣化し続けていることが、運営する日本原子力研究開発機構への取材で分かった。ほとんど運転していない20年間に、プルトニウムの一部が核分裂しにくい「アメリシウム241」に変化しているという。同機構は「現時点で運転に支障はない」とするが、停止が長引けば燃料を交換する必要に迫られる恐れがあると認めている。 
 
 もんじゅの炉心では、プルトニウムなどの燃料を核分裂させて発電する。核分裂したプルトニウムからは中性子が飛び出し、別のプルトニウムに衝突して核分裂させる。こうした連鎖が繰り返され、核分裂が維持される。 
 ところがアメリシウムは中性子を吸収して、核分裂にブレーキをかける働きをする。NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「核分裂しないアメリシウムが増えた状態は、劣化した燃料と言える」と話す。 
 実際、機構は2010年の再稼働時、アメリシウムへの変化に伴い、198体の燃料のうち6割にあたる117体を交換した。機構によると、この時の調査で燃料全体の重量の1%強がアメリシウムになっていることが確認された。 
 
 機構の担当者は「現時点ではフル出力で運転もできると考えている」とする。一方で、「このまま停止が長期間にわたって続けば、(アメリシウムが増え続け)燃料を交換しなければならなくなる」と打ち明ける。 
 もんじゅは85年に着工し、95年に発送電を始めたが、ナトリウム漏れを起こして長期停止した。10年5月に再稼働したものの、同8月に燃料交換装置が原子炉内に落下して以来、再び停止している。 
 
 停止中にも維持費などで年平均約223億円が支出されている。もんじゅ関連の総費用は今年3月末までに約1兆1703億円にのぼっている。機構によると燃料1体当たりの製造価格は数千万円。予備の燃料は42体あるが、運転再開の際に交換用燃料を手配した場合、さらに費用が上積みされる可能性がある。 
 一方、原子力規制委員会がもんじゅの運営主体を機構から交代させることを勧告しており、再稼働できるかは不透明な情勢だ。【畠山哲郎】 
 
 
もんじゅナトリウム漏れ20年 存廃岐路、国策も揺らぐ恐れ
福井新聞 2015年12月8日
 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)がナトリウム漏れ事故を起こしてから8日で丸20年を迎えた。事故は安全性や情報公開をめぐって大きな社会問題となり、長期停止に陥った。東京電力福島第1原発事故後には保守管理の不備が相次ぎ、11月に原子力規制委員会が運営主体の変更を勧告。もんじゅは存廃の岐路に立たされている。
 
 事故は1995年12月8日夜、出力40%で試運転中、2次系配管の温度計さや管が折れ、冷却材のナトリウムが漏えい。当時の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が現場映像を意図的に編集した「ビデオ隠し」問題などで、事故は事件になった。
 強い批判を浴びた動燃は98年に核燃料サイクル開発機構に、2005年には当時の日本原子力研究所と統合して今の原子力機構に改組され、10年5月に運転を再開。しかし約3カ月後、原子炉容器内に炉内中継装置が落下するトラブルを起こし再び停止した。12年11月には大量の機器の点検漏れが発覚し、13年5月に規制委から運転再開準備の禁止命令を受けた。
 その後も保守管理の不備による保安規定違反が相次ぎ、規制委は先月13日、運営する原子力機構を「資格なし」と断じ、新たな運営主体を見つけるよう馳浩文部科学相に勧告した。
 
 回答期限は半年をめどに設定され、文科省は月内に有識者会合を立ち上げる。原子力機構に代わる運営主体探しは困難が予想され、もんじゅを中核とする国の核燃料サイクル政策も大きく揺らぐ恐れがある。