2016年2月8日月曜日

申請の11原発で免震棟を中止に 川内審査受けて

 原発事故が起きた際の対策拠点(免震重要棟)をめぐり、電力各社が原子力規制委員会に新基準による審査を申請した全国16原発のうち11原発で、地震の揺れを緩和する免震機能をなくし、当初方針より規模も小さくするなどしていることが東京新聞の取材で分かりました。
 
 いわゆる免震需要棟を既に設置している原発は「柏崎刈羽」と「島根」の2原発だけで、未完成であるものの当初予定した免震重要棟計画を維持しているのが「東通原発」です。
「志賀原発」は免震構造で完成させたものの放射能防護性が不十分です。
 その他の原発は、川内原発同様に当初は免震重要棟で審査を申請したものの、その後に免震機能のない耐震構造に変更し、規模も大幅に縮小するなどの計画に変えていました川内原発に見習ったもののようです。
 重要棟は、過酷事故時に100人程度の人員が最低1週間程度はそこで居住するものなので、それが可能な広さや設備が必要です。狭いものでも兎に角あればいいというものではありません。
 
 大半の電力会社は、その趣旨は無視してとにかく低コストで早く審査を通したいという姿勢のようで、福島第一原発事故の悲劇はもう喉元を過ぎ去ったかのようです
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申請の11原発、免震機能省く 事故対策拠点 川内審査受け縮小
東京新聞 2016年2月7日
 原発事故が起きた際の対策拠点をめぐり、電力各社が原子力規制委員会に新基準による審査を申請した全国十六原発のうち十一原発で、地震の揺れを緩和する免震機能をなくし、当初方針より規模も小さくするなどしていることが本紙の取材で分かった。必要最低限の施設を整え、低コストで早く審査を通したい各社の姿勢がうかがえ、東京電力福島第一原発事故の教訓はないがしろにされている。 (小倉貞俊)
 
 対策拠点は、事故収束作業に携わる要員を放射能や地震から守り、関係機関と連絡を取り、食料や資材を備蓄しておく必要不可欠の施設だ。福島の事故で大きな役割を果たし、新基準の大きな柱の一つとされてきた。ところが昨年十二月、九州電力が再稼働した川内(せんだい)原発(鹿児島県)で、免震棟の新設計画を撤回。同社は玄海原発(佐賀県)でも計画を白紙にした。
 
 本紙は他にも同様の動きがないか、電力各社に調査。その結果、審査申請した十六原発(川内、玄海両原発を含む)のうち、十一で免震機能のない耐震構造に変更し、規模も大幅に縮小するなどの計画に変えていたことが分かった。
 
 当初計画通りに整備が終わったのは、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や中国電力島根原発(島根県)だけ。北陸電力志賀(しか)原発(石川県)では、免震棟は造ったが、指揮所の放射線防護性能が足りないため、耐震構造の指揮所を免震棟に新たに併設するという。免震棟は、余震が続いても、揺れを数分の一に緩和できるかわりに、設計が複雑でコストがかかり、工期も長くなる。
 
 川内原発の審査で、規制委は免震棟完成までの代替施設として、免震機能のない小規模な施設でも新基準に適合するとの判断をした。これを受け、電力各社はコストを抑え、早く審査をパスする状況をつくりたいと、計画変更に動いた。本紙の取材に、複数の電力会社が川内事例を参考にしたと認めている。
 
 川内原発の免震棟撤回問題をめぐっては、規制委が今月三日、九電の瓜生道明社長に「納得できない」と再検討を求めている。
 
◆必要最小限のルール
<新基準と免震棟> 原発の新しい規制基準は、防潮堤を設け、防水性能の高い扉を多用することで津波から原発を守るほか、「免震など」で通信、指揮、収束要員を守る施設を整備すること、さらには放射性物質の放出を抑制するフィルター付きのベント(排気)設備の導入などを求めている。新基準を満たせば、現場は1週間持ちこたえ、事故の拡大を防げる-とされるが、規制委が認める通り「再稼働できる必要最小限のルール」にすぎない。