2016年3月2日水曜日

発送電作業に入った瞬間に警報 高浜4号今後の工程見通せず

 国民の反対を押し切って再稼働した高浜4号機が、送電を開始(=並列操作)した瞬間に警報を発し、原子炉を含む発電機が自動停止しました。
(並列=電線で結ばれている他の数十基の発電機と交流の位相を同期させて送電に入ること。「並入」ともいいます)
 50分後に開かれた説明の会見でも、原子力事業本部長は、「並列するため、発電機と送電設備をつないだ瞬間、何が起きたか分からない」と困惑した様子だったということです
 電力会社は原発の運転差し止め訴訟などでは、イベントツリーを作成し、事故が起きた時には瞬時にその原因が解明されて迅速に対応が行われる(⇒ 原子炉溶融には至らない)旨の説明をしていますが、実際には、こうした現象的にはごく単純な事故でも、その原因を解明し対応するまでには相当の時間がかかるのが実態です。
 裁判などで行う電力会社の説明にはこうした欺瞞が数多く含まれていることに注意することが必要です。
 
 高浜4号機は再稼働の直前にも一次冷却水が漏れるという事故を起こしました。
 一次冷却水というのは、原子炉内に封入されている最も汚染された水なのですが、核分裂を起こして高熱を発する「核燃料を冷却する水」と見ることもできるので、「冷却水」という常識には反する名称を付けています。
 冷却水の運転温度は原子炉の運転圧力によって変わりますが、通常は150℃前後の過熱沸騰水のことです。ただ漏水事故時にはまだ核分裂は起きていなかったので常温であったと思われます。
 従って本来一次冷却水が漏れるというのは重大事故なのですが、世間ではそう認識されていないことに便乗して通り抜けました。これも電力会社の欺瞞です。
     (関係記事)
2月23日 高浜原発の1次冷却水漏れ「報告遅い」と京都府と滋賀県
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発送電作業に入った瞬間に警報 高浜4号今後の工程見通せず
福井新聞 2016年3月1日
 「ファン、ファン、ファン」。関西電力高浜原発4号機(福井県高浜町)の発電・送電作業に入った瞬間、中央制御室に複数の警報音が鳴り響いた。モニターには原子炉の停止を示すランプが点灯。「確認して」「タービントリップ確認」。慌ただしく確認作業に追われる運転員らの大きな声が交錯した。原子炉は安全に自動停止したが、発電・送電を目前にしたトラブルで、今後の工程は見通せない状況となった。
 
 同町水明のプレスセンターでは、記者や関電社員ら約20人が発電・送電の操作をする中継をテレビで見守っていた。午後2時1分、運転員が発送電を始めるスイッチを入れるのと同時に、慌てて計器に顔を近づけて確認する運転員らの姿が映し出された。
 「トリップ(自動停止)した」。ライブ中継を見ていた原子力事業本部発電グループの濱田裕幸マネジャーが、高木宏彰チーフマネジャーに耳打ちした。当初、操作後10分間としていたライブ中継は4分間ほどで一方的に切れた。
 間髪入れず、表情をこわばらせた高木チーフマネジャーが記者団に説明し始めた。「並列操作を行った際、主変圧器・発電機の内部故障を示す警報が鳴り、発電機とタービン、原子炉がトリップした。制御棒全48本は落ちている」
 
 関電の広報担当者の動きは慌ただしさを増す。午後2時50分に関電原子力事業本部の宮田賢司・副事業本部長が緊急会見。「並列するため、発電機と送電設備をつないだ瞬間、何が起きたか分からない」と困惑した様子だった。
 午後7時25分ごろ、トラブル当時の中央制御室内の映像が公開された。異常事態を伝えられた豊松秀己原子力事業本部長のこわばる表情が映っていた。
 
 これまで関電は3、4号機の再稼働に向け「万全の態勢で準備してきた」と繰り返してきた。しかし、4号機は原子炉起動前の2月20日に放射性物質を含む1次冷却水漏れが発覚。原因対策を講じたことで当初の予定を変えることなく、26日の再稼働に踏み切った。
 関電の計画では29日の発電・送電開始を経て3月下旬に営業運転に入ることになっている。ただ、宮田副事業本部長は「まずトラブルの原因を見極める。今後の工程は全く未定」と表情を曇らせた。