2016年4月22日金曜日

22- トリチウム水の海洋放出案に 福島県・漁連がクレーム

 福島原発汚染水の浄化処理で取り除けない放射性トリチウム(三重水素)の処分方法を検討している経産省の作業部会が、19日、海へ流すことが最も短期間で低コストで処分できるとの試算結果をまとめました。
 
 水を構成する水素原子の核に中性子が2つ飛び込んで放射能化したトリチウム水は、化学的・物理的な方法では分離・濃縮が出来ません。従って無処理で海に流すのが一番低コストなのは最初から分かっていることで、何の説得力もありません。しかし、専門部会で検討した結果がそうだったということを口実にして、今後無処理放流の選択肢を強調する可能性はあります。
 
 20日、郡山市で開かれ国の廃炉・汚染水対策福島評議会で、鈴木正晃副知事は「トリチウム水の放出は環境と風評に大きな影響を与えるので経済的合理性だけでなく、社会的な評価を含めて議論してもらいたい」と注文を付けました。
 県漁連の野崎哲会長は「分離技術の開発を諦めることのないようお願いしたい」と要望しました。
 また野崎会長は報道陣の取材に「経済的合理性だけでは判断できない。乱暴な議論は困る。今声高に叫ぶ問題ではない」と作業部会の試算にくぎを刺しました。
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「コスト強調」試算に注文 トリチウム処分試算で福島県や漁連
福島民友ニュース  2016年04月21日  
 東京電力福島第1原発の廃炉と汚染水対策に地元の意見を反映させる国の廃炉・汚染水対策福島評議会は20日、郡山市で開かれ、国の作業部会が汚染水の浄化後に残る放射性トリチウム(三重水素)の処分方法や試算を明らかにしたことを受け、県漁連や県が国に風評など社会的な影響を踏まえた慎重な議論を求めた。
  
 トリチウムの濃度を水で薄めて海中に放出する「海洋放出」が最も短期間に低コストで処分できるとする試算について、鈴木正晃副知事は「トリチウム水の放出は環境と風評に大きな影響を与える問題。経済的合理性だけでなく、社会的な評価を含めて議論してもらいたい」と注文を付けた。
 
 トリチウム水をトリチウムが濃い水と薄い水に分離する技術の実用化は、現時点では難しいとする国の見解について県漁連の野崎哲会長は「分離技術の開発を諦めることのないようお願いしたい」と要望した。
 また野崎会長は報道陣の取材に「経済的合理性だけでは判断できない。乱暴な議論は困る。今声高に叫ぶ問題ではない」と作業部会の試算にくぎを刺した。
 評議会後、高木陽介経産副大臣は取材に対し「作業部会はあくまでも試算という形で出しただけ。風評被害など当事者にとって大変重い問題をしっかりと受け止め、丁寧に議論を進めたい」と述べた。
 トリチウム水の処分を巡っては、経済産業省が設置した有識者による作業部会が19日に試算などを示した。作業部会が今後取りまとめる報告書を基に、国の汚染水処理対策委員会が処分について議論を開始する。
 
 
福島・汚染水 海洋放出が最も短期間で低コスト
毎日新聞2016年4月19日  
 東京電力福島第1原発事故の放射性汚染水問題について、浄化処理で取り除けない放射性トリチウム(三重水素)の処分方法を検討している経済産業省が、海へ流すことが最も短期間で低コストで処分できるとの試算結果をまとめたことが分かった。19日開催の専門家部会で提示する。同部会は処分方法の決定は見送る方針だが、試算結果が国や東電の判断に影響を与える可能性がある。
 
 同省は、海洋放出のほか、(1)地下に埋設する(2)水蒸気化する(3)水素ガスに還元して大気放出する−−など五つの処分方法を検討。それぞれについて、トリチウムを含む水の総量を80万トン、1日の処分量を400トンなどと仮定し、処分期間やコストを計算、比較した。 
 試算結果はトリチウム濃度によって変動するが、海洋放出は最長7〜8年で処理することができ、最大でも35億〜45億円程度のコストで、五つの中でも最も低かった。一方、地下埋設は最長76年の管理が必要で、コストも高かった。 
 
 汚染水は、汚染水を処理する多核種除去設備「ALPS(アルプス)」で62種類の放射性物質が除去されるが、トリチウムだけは取り除けない。トリチウムを含む汚染水は敷地内のタンクに貯蔵されて日々増え続けており、同部会で処分方法を検討してきた。【岡田英】