2016年5月15日日曜日

浜岡立地 御前崎の正副議長系 原発関連工事10億円受注

 原発の立地自治体の首長や議会の有力議員の肉親などが、原発関連の仕事を大々的に受注しているケースが問題視されることがありますが、浜岡原発でも御前崎市議会の議長と副議長の実兄が2010年から5年間で合わせて10億円余りを受注していたことが分かりました。
 
 全面停止から丸5年を経過した浜岡原発の再稼働問題に関する記事も併せて紹介します。
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浜岡立地 御前崎の正副議長系 原発関連工事10億円受注
東京新聞 2016年5月14日 
 中部電力浜岡原発が立地する静岡県御前崎市で二〇一〇年からの五年間に、同市議会の増田雅伸議長(60)の実兄が経営する建設会社が、中部電の子会社などが発注する原発関連工事を少なくとも約三億四千九百万円分受注していたことが分かった。若杉泰彦副議長(67)の実兄が社長の建設会社も一〇年度からの二年間で、少なくとも約七億九百万円分受注していた。
 
 浜岡原発を巡っては、一九七〇~八〇年代の建設の際、地元住民組織に総額三十億円余りが渡ったとする文書の存在が今月判明。同原発は十四日に停止五年を迎えるが、この五年で進められた安全性向上工事などで「中部電マネー」が市議の親族企業に流れていた。
 静岡県の工事経歴書によると、増田議長の実兄が社長を務める増田建設(御前崎市)は、中部電の子会社、中電不動産(名古屋市)発注の原発構内の倉庫新築工事など、少なくとも二十二件を受注した。
 増田議長は増田建設で〇三年まで専務取締役だったが、〇四年の市議選出馬を機に退職し、〇五年に建築士事務所を設立。今年四月に議長に就いた。建築士事務所も原発関連の受注があったことを認めている。
 若杉副議長の実兄が社長を務めるのは若杉組(静岡県掛川市)。中部電から工事を請け負う大手ゼネコン鹿島などから防水扉の工事を受注するなど、東日本大震災以降は津波対策工事が増えた。常務取締役だった若杉副議長も〇四年の市議選出馬で退職している。
 浜岡原発は3、4号機の再稼働を目指し、安全性向上工事が九月にも完了する予定で、原子力規制委員会の審査を通過した場合、地元の同意を得る上で、議員は大きな影響力を持つ。
 増田議長は本紙の取材に「再稼働可否の判断に手心を加えるつもりはない」と説明。若杉副議長は「可否の判断は支援者の声を重視する」と話した。中部電の担当者は「取引内容の詳細については控える。契約先の下請け先の選定については関与していない」とした。 (小沢慧一) 
 
 
全面停止5年 浜岡再稼働には根強い慎重論
中日新聞  2016年5月14日
◆避難経路確保など課題
 中部電力浜岡原発(御前崎市)が全面停止して十四日で五年を迎える。三月末に津波対策工事の柱となる防潮堤が完成し、九月には4号機の安全対策工事が完了する見込みだ。原発再稼働を巡る環境は変化を続けるが、周辺自治体の首長や住民の慎重論は依然として根強い。 
 
 二〇一一年三月の福島第一原発事故を受け、南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地する危険性を重視した菅直人首相(当時)が、同じ年の五月六日に浜岡原発の運転停止を中電に要請。同十四日に全面停止に至った経緯がある。
 再稼働を目指す中電は同年九月から、津波対策として海抜十八メートルの防潮堤の建設工事を開始。計画変更を繰り返しながら、四年半の歳月をかけ、壁本体が海抜二十二メートル、延長二・四キロの防潮堤を造った。
 
 (静岡)県は今年三月、過酷事故を想定した広域避難計画を公表。原発から半径三十一キロ圏の「緊急防護措置区域(UPZ)」の住民約九十四万人を静岡県内の他の自治体や、関東などの七都県に避難させる計画だが、受け入れ先の詳しい市町村は明示できず、避難経路の確保など課題も多い
 地元の御前崎市では四月に市長選があった。推進派の二候補が出馬し、石原茂雄前市長の後継指名を受けた柳沢重夫さん(69)が初当選。再稼働問題が争点にならなかったため、再稼働に反対ともとれる白票を含めた無効票が前回選の倍以上の六百四十八票もあった。
 
 UPZにある藤枝市などの七市町は、中電と県との安全協定案の内容に大筋で合意したが、再稼働の事前了解については明文化されない見通しだ。
 全国的には、昨年八月に九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が新規制基準下で初めて再稼働してから、川内原発2号機、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が再稼働。だが、大津地裁はこの三月に高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分を決定。国と司法で、安全性評価に違いが出た。浜岡原発についても、住民団体が運転差し止めを求める訴訟が東京高裁などで係争中だ。
 熊本では四月、内陸直下型で震度7を二度記録する地震が発生。今も余震が続くが、川内原発は稼働を続けている。静岡県内でも複数の活断層が確認されており、対応策の見直しが迫られている。(小沢慧一)