2016年6月5日日曜日

新潟県の被災者支援を評価する本を 宇大教員らが本出版

 宇都宮大の教員ら三人が「原発避難と創発的支援 活かされた中越の災害対応経験」を出版しました。
 著者らは「避難者への継続的な意向調査や、国の支援対象から漏れた人への救済を独自に打ち出した新潟県を通し、支援のあり方を共に考えたい」と語り掛けています
 
 新潟県は原発事故後、福島県などから最大約9600人(山形県に次いで全国2位)の避難者を受け入れ今年4月末現在も、3466人が新潟県内で生活しています
 福島県と隣接する新潟県は、福島県側から高速道路で行きやすいという点がありますが、地理的な要因だけでなく、過去に新潟で起きた災害や、その教訓に学んできた行政や民間の果たした役割が大きい」と、著者の一人宇都宮大国際学部の高橋若菜准教授は強調しています
 
 東京新聞が本の概要を報じています。
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原発避難者支援 新潟に学ぼう 宇大教員らが本出版栃木
東京新聞 2016年6月4日
 二〇一一年の東京電力福島第一原発事故による避難者への手厚い支援で知られる新潟県に学ぼうと、宇都宮大の教員ら三人が「原発避難と創発的支援 活(い)かされた中越の災害対応経験」(本の泉社)を出版した。著者らは「避難者への継続的な意向調査や、国の支援対象から漏れた人への救済を独自に打ち出した新潟県を通し、支援のあり方を共に考えたい」と語り掛ける。 (大野暢子)
 
 同書によると、新潟県は原発事故後、福島県などから最大約九千六百人の避難者を受け入れた。福島、宮城、岩手の被災三県を除くと、一一年八月時点の避難者数は、山形県に次いで全国二番目に多かった。今年四月末現在も、三千四百六十六人が新潟県内で生活している。
 福島県と隣接する新潟県は、福島県側から高速道路で行きやすく、地震や放射線の被害が少なかった点が、機動的な受け入れにつながったとされている。
 「ただ、地理的な要因だけでなく、過去に新潟で起きた災害や、その教訓に学んできた行政や民間の果たした役割が大きいのです」。著者の一人で、宇都宮大国際学部の高橋若菜准教授(政治学)はこう強調する。
 
 高橋准教授は、共著者で同学部の田口卓臣(たくみ)准教授(フランス文学)と一四、一五年、新潟県内で避難者支援の最前線に立った人々を取材。当時の同県防災企画課長や、〇四年の中越地震を踏まえ、防災や復興を進める支援組織の幹部にインタビューを行い、一問一答形式で掲載した。
 両氏の証言によると、新潟県は一一~一五年に計六回、避難者に要望や生活再建への思いを聞くアンケートを行い、内容を公開原発事故直後は、県職員らが避難者と直接会い、複雑な思いをくみ取ろうと努めたほか、最近でも深刻なケースは戸別訪問しているという。
 
 「子育て中の被災者を対象にした高速バスや高速道路利用料の無料措置も、新潟県が独自に始めた。行政のリーダーが現場に足を運んだからこそできたこと」と高橋准教授。「新潟を特別視するのではなく、今も混乱が続く熊本地震の被災地や、将来の災害に生かせたら」と願い、特に行政職員や支援団体、若者らに読んでほしいと考えている
 同書には、新潟県が実施したアンケート結果の分析や、もう一人の共著者で、中越地震に詳しい新潟大人文学部の松井克浩教授(社会学)による解説も盛り込まれている。
 全二百十四ページ。税抜き千五百円。全国の書店で注文・購入できる。