2016年7月3日日曜日

03- 原発事故究明 動かない国会 検証機関設置せず

東京新聞 2016年7月2日
 二〇一一年三月に起きた東京電力福島第一原発事故の原因究明に当たった国会の事故調査委員会(解散)が、未解明部分の検証を続ける独立の調査機関を国会に設けるよう提言したにもかかわらず、放置されたままになっている。発生直後の東電の対応では、問題があったことを示す新事実が今も相次いで発覚。国会事故調の提言から五日で四年を迎え、委員だった有識者は調査機関の必要性を訴えている。 (宮尾幹成)
 
 国会事故調は、政府や東電とは別に事故原因を調査。一二年七月に報告書を発表し、原因の未解明部分の究明や、事故収束のプロセスを審議するため、電力会社や政府から独立した第三者機関「原子力臨時調査委員会(仮称)」を国会に設置するよう提言した
 
 だが、設置の動きは鈍い。自民党は、原発事故を含めた東日本大震災の初動対応を再検証する党内のチームが五月に報告書をまとめ、原発事故では「今なお新しい事実が出てきている」と指摘。にもかかわらず、国会への調査機関設置を求める声は一部にとどまり「原発利用を進める議論が優先され、機運が高まらない」(若手議員)という。
 
 事故をめぐっては六月、東電が弁護士に依頼した調査の報告書で、当時の清水正孝社長が「炉心溶融」という言葉を使わないよう社内に指示していたことが判明。広瀬直己(なおみ)社長は隠蔽(いんぺい)を認めて謝罪した。事故当日、原子炉水位が下がっていた1号機で炉心が露出すると予測しながら、法律で義務付けられた政府や福島県への報告を怠っていたことも、本紙の取材などで明らかになっている。
 
 政府や国会の事故調による調査時点では、こうした事実は出ていなかった。現在、事故の継続的な検証作業の場は、東電柏崎刈羽原発がある新潟県の「原発の安全管理に関する技術委員会」など一部に限られ、委員を務める田中三彦・元国会事故調委員は「(東電の対応は)重要なことを伝達していなかった点で通底している。国会事故調の提言を速やかに実行し、検証を続けてほしい」と求めた。