2016年7月8日金曜日

08- <参院選>東海第二「40年超え」運転延長

 「候補の考えを」有権者から切実な声
東京新聞 2016年7月7日
 運転開始から三十八年目。東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発は「四十年廃炉」の原則を超えた運転延長の可否の判断を来年に控える。しかし、今回の参院選で、地元茨城選挙区(改選数二)では、アベノミクスの是非などが争点とされる中、東海第二原発の存廃に関する議論は低調だ。原発と共に生活する有権者からは「もっと各候補の考えを聞きたい」「事故を風化させないでほしい」と切実な声が聞こえる。 (酒井健)
 
 原子力規制委員会は六月二十日、運転開始から四十年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)の運転延長を認可した。東京電力福島第一原発事故を教訓に施行された改正原子炉等規制法の下で、老朽原発の運転が認められたのは初めて。東海第二原発が続けば、四十年廃炉のルールは形骸化しかねない。
 一九七八年十一月に運転を開始した東海第二原発は、東日本大震災で停止し、そのまま定期検査入りしている。現状から再稼働させる場合、原電は四十年の約一年前に当たる二〇一七年八月二十八日~十一月二十八日の三カ月間に「四十年超え」の運転延長を規制委に申請する必要がある。
 
 現在、規制委が実施している東海第二原発の新規制基準への適合審査は、高浜原発などが優先されたため遅れているが、原子力規制庁は「審査の間に四十年を超えることは、行政の不作為(として問題)になる」として、結論を運転延長の手続きに間に合わせる姿勢をみせる。適合審査と運転延長審査の両方に合格すれば、再稼働の法的なハードルはほぼ取り払われる。
 一方で、県が一五年に決定した広域避難計画では、避難対象の住民は国内最多の九十六万人。うち半数以上の五十六万人は、近隣の五県に受け入れてもらう方針だ。拡散する放射性物質に、流出する大勢の避難者。首都圏に立地する唯一の原発として、過酷事故が起きた際の社会的影響は大きい。
 参院議員は、国会での質問や政治活動を通じ、世論や政策に影響を与えることができる。だが、今回、立候補している六人のうち、法定の選挙ビラに原発政策を記しているのは「再稼働を許さず廃炉に 東海第二原発」「原発廃炉」とうたった新人二人のみ。ほかの四候補は、本紙など報道機関のアンケートに考え方を回答しているものの、街頭演説でも積極的には触れていない。
 「どれも大事な政策だが、チラシにすべては載せられない」「消費増税の先送りを受け、社会保障の財源を心配する声も増えた」。各陣営の幹部たちは説明する。ある陣営の幹部は「候補は『将来は廃炉』の考え。だが、私の親戚にも原発関連施設に勤めている人がいる。選挙戦で前面に出すメリットはあまりない」と心情を吐露する。
 
 六月十六日。水戸地裁であった東海第二原発運転差し止め訴訟の口頭弁論。傍聴に訪れた千葉県柏市の男性(67)は「国にはいろいろ課題があるけれど、福島県にはまだ苦しんでいる人がいる」。茨城町の男性(67)は「町は東海第二原発から三十キロ圏内にあるので大きな問題。参院選の候補者にも、もっと議論をしてほしい」と訴えた。